非構造化データで「顧客理解」を深めるCiti その狙いと取り組みとは?銀行が考えるデータの生かし方【後編】

CX(顧客体験)の強化に取り組む金融機関Citigroupは、非構造化データの活用や自己学習機能を使った取り組みを進めている。同行の狙いと具体的な取り組みとは。

2023年11月28日 09時00分 公開
[Bill GoodwinTechTarget]

 金融機関において、顧客体験(CX:カスタマーエクスペリエンス)の向上を目的にパーソナライズ化したコミュニケーションを実施する取り組みが広がっている。Citigroup(以下、Citi)も、モバイルバンキングや電話応対、来店といったさまざまな接点において、顧客の興味や関心に合わせて最適化したサービスを提供できるように取り組んでいる。

 Citiのパーソナルバンキング事業部で分析、テクノロジー、イノベーション担当の責任者を務めるプロミティ・ダッタ氏は、顧客理解(顧客の要望や課題を把握すること)を目的として非構造化データを活用する重要性を説く。非構造化データには、メモやメールの文面、通話音声など、業務において日常的に生成されるものがあり、個々人の行動を理解するのに適している。

非構造化データから顧客の何が分かるのか?

 顧客体験を高めるには、顧客の感情を理解するための非構造化データの理解が欠かせない。「顧客がお金を払ってでも解決したいと考えている課題は何か、うまくいっていることは何かを理解する必要がある」とダッタ氏は語る。

 例えば、AI(人工知能)技術を使って顧客との通話記録の要約を自動作成することで、通話の主な目的を特定し、顧客が抱えている問題が解決したかどうかを確認できる。顧客が同じ問題で何度も電話をかけずに済むようにするためだ。「顧客が困っていることは何か。それを素早く解決できるようにすることが重要だ」とダッタ氏は語る。

 Citiは、顧客の声をリアルタイムに取り込み、同行とのやりとりをどのように感じているかを特定することも検討している。「顧客の声から把握したさまざまな問題を事前に解決することで、将来他の顧客が同じ問題に直面しないで済む」(ダッタ氏)

自己学習機能の活用

 AI技術を使った自己学習機能の利用も、Citiは視野に入れているという。自己学習機能の利用には、CRM(顧客関係管理)ベンダーPegasystemsが提供し、同行が顧客満足度の向上を目的に使用しているAI技術を搭載する意思決定ソフトウェア「Pega Customer Decision Hub」を使う。ただし、金融業界では、自己学習機能の利用は厳しく規制されている。

 ダッタ氏によると、Citiには独自のモデルリスク(モデルの誤用や不適切な使用に基づく意思決定を実施することで組織が損失を被るリスク)管理プラットフォームが存在しているという。そこにはあらかじめ設定した変数があり、顧客に起こっている事象や顧客の反応に基づいてウェイト(比重)を微調整することができる。変数の中には、顧客エンゲージメントの中で取得した顧客の発言から学習を続けるものもあると同氏は説明する。

レガシーシステムの刷新

 ダッタ氏がPega Customer Decision Hubの導入を指揮した際に課題として挙がったのが、Citiが蓄積してきたデータとの連携や従業員への説明だった。もう一つの課題が、導入に関わった部署の業務を最新の状態に保つことだったという。もう一度導入からやり直せるとしたら、他部門への情報提供をより積極的に実施したいと同氏は説明する。「関係者とのコミュニケーションを密にする方法を見つけ出すことで、導入における手順や課題について共有し合い、より多くの情報を得ることができる」(ダッタ氏)

 Customer Decision Hubの導入のような、レガシーシステムから最新のソフトウェアへの移行を計画している企業に向けて、ダッタ氏は「プロジェクトのあらゆる局面において、変更履歴の記録や変更箇所の特定、関係者への通知を実施できる変更管理の仕組みを導入することが大切だ」と話す。同氏はその作業を、従来型のガソリン車から自動運転機能付きの電気自動車(EV)に切り替えることに例える。「両方を同じように操作することはできない。だからこそ、変更管理の仕組みを利用することが重要になる」

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