銀行業界が今後生き残るためには、「CX」(顧客体験価値)の向上が不可欠だ。その理由は何で、銀行は具体的にどのような取り組みをすればいいのか。オーストラリアの銀行CommBankの事例を基に紹介する。
金融サービスのデジタル化に対する顧客の期待や、FinTech(金融とITの融合)企業の登場などを受けて、金融業界は変化している。このような時代に銀行が存続するためには、優れた「CX」(顧客体験価値)を提供することが必要不可欠だ。
オーストラリアの銀行Commonwealth Bank(CommBank)は、自行の業務にCXのてこ入れを実施している。同行で最高デジタル責任者(CDO)を務めるフレデリク・リンドストローム氏は、「これまで金融業界は、必ずしも顧客ファーストではなかった」と語る。
従来、金融商品は銀行でしか購入できなかったため、銀行は顧客への金融商品の提案方法についてあまり注意を払う必要がなかったという。「今や状況は大きく変わった。顧客のニーズに応える最適なタイミングと方法を徹底的に把握しなければならない」(リンドストローム氏)
「金融商品を提案する際に重要なのが、関連性や正確さを確保しつつ、顧客が簡単かつ直感的に商品の情報を得られるように商品を提案することだ」とリンドストローム氏は語る。CommBankはこれを適切に実施するため、顧客取引の元帳を更新するといった従来の仕事に加えて、データとそこから引き出した洞察を活用することを従業員に課している。
従来、銀行の主な仕事は元帳の更新、つまり顧客の口座に支払われた額を口座の残高に繰り入れることだった。一方で、顧客がどこでどのようにその金額を使ったか、以前も同じような購入をしたことがあるかなどについて、銀行はあまり気に留めていなかった。
「従来の銀行業務に加え、CXが差別化要因となっている。優れたCXを提供するためには、これまで銀行が見過ごしてきた顧客の取引データを活用すべきだ」(リンドストローム氏)
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