従業員が主体的に学び、さまざまな場面で力を発揮できるようにするための取り組みとして「継続的な学習」は有用だ。支援のために企業は何をすべきか。
従業員が「この会社には成長の機会がない」と感じていると、場合によっては退職に至る懸念がある。企業が従業員に継続的な学習機会を提供することは、エンゲージメント(組織との信頼関係)や業務に対するモチベーション、スキルの向上につながり、離職のリスク低減にもなる。
中編となる本稿は、継続的な学習機会を社内に普及させる12個のヒントのうち、4〜8つ目を紹介する。
継続的な学習機会を普及させる土壌を作る上で重要なポイントの一つが、職位が高い従業員や勤続年数が長い従業員に配慮することだ。
そのような従業員向けに研修予算を確保し受講を促すことで、継続的なスキル向上を奨励する。習得済みのスキルや知識を再確認するための「リフレッシャーコース」、管理職向けのコース、一対一のトレーニングなどのカリキュラムは、企業が期待する役割やスキルセットを維持してもらうのに役立つ。
スキルを向上させる機会を新人にもベテラン従業員にも提供することで、従業員同士の信頼関係を構築し、定着率を高められる可能性がある。
「学習管理システム」(LMS:Learning Management System)や「学習体験プラットフォーム」(LXP:Learning Experience Platform)など、従業員の学習機会を管理するソフトウェアは数多く存在する。
LMSを使えば、従業員はさまざまなeラーニングの研修内容を各自の都合に合わせて受講できる。管理者にとっては、LMSの管理画面から従業員の受講履歴や成績を参照して、研修への取り組み具合や進捗(しんちょく)を把握でき、学習と業務改善への意欲が高い従業員を見つけられるというメリットがある。
継続的な学習機会が重要な取り組みであることを社内に浸透させる上で、経営陣、とりわけCEOによる支援は欠かせない。
従業員は経営陣に対して研修から何を学んだかを伝える。経営陣は従業員の学びのために予算を確保していることを従業員に伝える。このやりとりを通じて、継続的な学習機会が重要であると両者が理解するのだ。
そこに人事部門や人材開発部門、さまざまな部門リーダーからの支援を組み合わせることで、「継続的な専門能力の開発」(CPD:Continuing Professional Development)を実施する環境作りに自社が取り組んでいるという印象を強めることができる。
研修を経て学んだ知識を従業員同士で共有しやすい環境を整えることも重要な取り組みだ。例えば、誰かがカンファレンスやイベントに参加したら、そこで得た情報を次の会議で共有してもらうようにする。
LMSの中には、記事、動画、Webサイトなどのコンテンツを共有したり、自身が受講した研修内容に関する話題を投稿したりできるものがある。このような機能を活用して情報交換を促すのもよい。
全従業員向けに研修を実施する場合、経歴に関係なく共通して関心を持ってもらえそうなテーマに的を絞ることが大切だ。例えば、自社が販売する製品やサービス、コミュニケーションスキル、パフォーマンス管理、財務入門といったテーマは幅広い従業員から関心を集め、有意義な時間を提供できる可能性がある。
後編は、継続的な学習機会を拡大する12個のヒントのうち、9〜12個目を紹介する。
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