プロジェクト関係者に適切なタイミングで適切な情報を開示し、質疑応答に答える。この行動をあらかじめ決定したものをコミュニケーション計画と呼びます。どんなにプロジェクト参加者の資質が優れていようと、関係者間の信頼関係が揺らいでいては、そのプロジェクトは失敗します。今回はITシステム開発において関係者間の信頼感を醸成させるための、コミュニケーション計画の重要性を考えてみましょう。
一般にITシステムの開発にはプロジェクト・マネジメントが重要だと言われています。プロジェクト・マネジメントの基本はコスト、品質、納期ですが、その下には色々な詳細計画があります。例えば全体スケジュール計画の下にある範囲計画(スコープ計画)やリスク計画(リスクマネジメント)などです。余談ですが、これは何かまるで仏教の華厳経や浄土経など色々な教えのような気もします。無論、これらの基礎的な計画はITシステムの開発上、極めて重要なものです。その上で筆者は、コミュニュケーション計画を非常に重視しています。いわば日蓮宗が法華経を最も重視するような感覚で考えてください。
このコミュニュケーション計画というコンセプトは長い間、ITシステムの開発には適用されていませんでした。しかし近年、方法論の標準化の流れの中で、建設業などで一般的に活用されているPMBOK(Project Management Body of Knowledge)が採用され、脚光を浴びてきました。
またドイツの哲学者ハーバーマスは、21世紀の人間関係は「コミュニケーション合理性」(お互いが納得できる自己開示と議論)の上に成り立つと言っています。
Itmedia系のIT専門誌『ITセレクト』2006年8月号は、電子政府構築計画の失敗事例として、日本政府による一種の政府内パッケージ型ソフトとして各府省で横断的に共通活用する予定の「人事給与システム」を取り上げています。
分かりやすく言えば「人事給与システム」は政府のERPパッケージの一部を構成すると言うことでしょうか。
本システムは人事院などが中心となりITシステムを開発しています。それを多くの政府組織が導入してそれぞれ別々に活用する計画になっています。
さて本誌の指摘が正しいとすれば、政府の「人事給与システム」は基本的な品質管理やコスト管理が全くできていないということになります。
しかし、本誌の指摘内容に基づく筆者の見立てでは、明らかにユーザーにあたる政府各府省と開発を担当した人事院などの開発担当府省の間でまともなコミュニケーションが成立していないように見受けられます。
もしこの懸念が正しければ、問題は「コミュニケーション計画無視の落とし穴」ということではないでしょうか。
各府省に対してまともなヒアリングがなされていない、質疑応答が適切に行われていない。適切なタイミングで関連情報の開示が行われていない。受け入れテスト計画などが開示されていないなど色々な指摘がなされています。
その結果、関連組織の間に拭い難い不信感が漂っています。
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