公認会計士や企業の経理・財務担当者も、いまや会計システムをはじめとするITシステムの知識が欠かせない。急速に進化するITシステムの理解に役立つ最新のIT用語をテーマ別に解説する。第1弾のテーマは「クラウドコンピューティング」。
ここ数年のIT業界の最大の流行語は「クラウドコンピューティング」だ。最初は一般ユーザーの環境で広がったクラウドコンピューティングだが、次第に企業が利用するITシステムでも活用されるようになってきた。クラウドコンピューティングはさまざまな意味合いで使われていて、複数の技術やサービスで成り立つ。今後、企業のITシステムでも大きな位置を占めるようになると見られるクラウドコンピューティングを理解するための最新IT用語を解説する。
1台のハードウェアで2つ以上の環境を実現させることができる技術。通常は1台のハードウェアで1つのOSしか稼働させられない。仮想化技術では仮想マシンモニター(VMM)と呼ばれる環境を1つのハードウェアの中で実現する。複数のソフトウェアを1台で動作させるためハードウェアの負担が大きい。
会計の視点→同一ハードウェアでシステム変更内容を低コストで検証することで、内部統制の側面からも有用と考えられる。
インターネット接続を前提にシステムに必要なハードウェア、ソフトウェアなどをサービスとして利用する概念。利用するサービスやデータ量などに基づいて課金されることが特徴。外部業者のサービスを利用するパブリッククラウドと企業集団内の環境を共同利用するプライベートクラウドがある。
会計の視点→会計ソフトの機能がクラウドで提供される流れも生まれている。
インターネット上にある複数のハードウェアを結びつけ、ユーザーからはあたかも1つのコンピュータとして稼働しているように見える仕組みを提供する技術。複数のコンピュータの処理能力を結集するため、比較的少ない投資でユーザーが求める処理性能を必要な時に、必要なだけ提供できる。
複数の会社、事業所などがそれぞれ実施している人事、経理などの業務を、別会社や子会社などで集中的に実施し、経営の効率化と経営管理強化を図るサービス。ノウハウの蓄積や専門スキルを持つ要員の適正配置で生産性の向上などが見込まれる。クラウドを利用すれば利用するシステム環境の統一も可能。
会計の視点→主に人的リソースの集中化と専門化のトレンドにより多くの大企業で定着しつつある。
ほとんどの機能をサーバ側で集中的に実行し、クライアント側の環境を最小限にした運用方法。または、そのような環境を実行できるマシン。シン(少ない)環境によってユーザー側の機能を最小限にすることで、リソース管理を集中的・効率的にできることから企業ユーザーにも注目される。
データセンターなどのIT資源を、顧客ごとに個別に割り当てる運用方法。かつてはASPとも呼ばれ、サーバ機器・データベース・ネットワークなどの資源を顧客ごとに手配・運用する。資源が顧客別に切り分けられているためトラブルに対して強いが、一方で高コストになるデメリットがある。
コンピュータを設置するため建設された専用施設。一般的に耐震性や空調、防火、セキュリティなどを配慮して設計されていて、災害対策やセキュリティ対策としても有効である。クラウドコンピューティングでは自社のデータがどのような環境で管理されているのかも重要な検討要素となる。
会計の視点→堅牢なセキュリティが担保されていれば、会計データの保全にも有効である。
一般的にクラウドコンピューティングと同義で使われる、インターネット上に保管されるサービスやデータ群の総称。リソースを集中して多くのユーザーに均質なサービスを提供できることから次世代サービスとして注目。データが外部保管されるセキュリティリスクが企業ユーザー普及への課題。
クラウドコンピューティングのうち、サービスやデータの運用を企業内部で行う仕組み。セキュリティリスクへの対応方法の1つで、ユーザーごとのカスタマイズにも対応可能。パブリッククラウドの欠点を克服するモデルとして期待されているが、コストメリットの面での課題も抱える。
プログラムや処理を複数のコンピュータで並列的に行う方法。スタンドアロンなコンピュータでの処理に比べて多数のマシンを使うため、一般的に障害には強く、オープン環境の要件を満たせば柔軟なマシン構成で実現できる。一方でネットワークの負荷も高くなるので運用面では要注意。
会計の視点→ まだ国内で会計システムとしての利用例は少ないが今後の展開に期待が持たれる。
データセンターなどのIT資源を、複数の顧客で共有する運用する方法。シングルテナントに比べてサーバ機器・データベース・ネットワークなどの調達・運用コストを軽減することができる反面、トラブルになったときの影響が大きい。SaaSの台頭とともに運用方法の主流となっている。
アプリケーション・サービス・プロバイダーの略。会計・給与・グループウェアなどのソフトウェアをインターネット経由で顧客にサービスとして提供する事業者。顧客はインターネットに接続されたパソコンからWebブラウザでASPの自社専用環境にアクセスしソフトウェアを利用する。
会計の視点→クラウドと異なり、ASP内に自社専用環境を準備するため固定的な運用費が発生するなど相対的に高コストとなる可能性がある。
Hardware as a Service/Infrastructure as a Serviceの略。グリッド技術を活用し、情報システムの構築、稼働に必要なマシン、ディスクストレージやネットワークなどの基盤をインターネット経由のサービスとして提供するものである。
会計の視点→「情報システム資産を持たない経営」の志向が高まるなか注目される考え方であるが、提供される環境に対するIT全般統制を含む堅牢性、安全性については留意することが必要。
Platform as a Serviceの略。アプリケーションを対象としたサービスであるSaaSに対し、PaaSはハード、OS、データベース、ミドルウェアなど、システム開発に必要な環境一式をネットワークを通じてサービスとして提供する。利用することでユーザーがアプリケーションを開発することも可能。
会計の視点→「情報システム資産を持たない経営」の志向が高まるなか注目される考え方であるが、提供される環境に対するIT全般統制を含む堅牢性、安全性については留意することが必要。
Software as a Serviceの略。インターネットを経由して、使いたいサービスを使いたいときに使えるようにするソフトウェア提供方法。一般的なパッケージソフトと比べ課金が定額で、最新機能を使える反面、データが外部に保管されるなどセキュリティリスクもある。
会計の視点→「情報システム資産を持たない経営」の志向が高まるなか注目される考え方であるが、提供される環境に対するIT全般統制を含む堅牢性、安全性については留意することが必要。
外部に委託した業務について、受託者の依頼によって委託先に対して実施される業務監査のこと。委託先業務の整備・運用状況の監査結果を報告する。発行された監査報告書は受託者だけでなく委託者に委託している他の会社も利用可能なため、受託者にとっては監査の負担軽減が期待できる。
サービス・レベル・アグリーメントの略。サービスの提供者が利用者に対して、サービスの水準を保証する合意・契約のこと。サービス水準はデータ転送量やサービス利用可能時間などで定量化される。サービスレベルを下回った場合は、利用量の減額や違約金などでユーザーに補償される。
会計の視点→外部委託業務においては契約で必ず明確にすべき内容である。
注文処理や在庫確認など業務と関連システムを一体化しサービスとして細分化し、定義する考え方。自社の業務プロセスと組み合わせることで、業務やシステムの変更に柔軟に対応できる。またクラウド技術を利用し社外のサービスも有効活用することで企業の枠を越えた効果的なシステム構築も可能。
会計の視点→業務処理をサービスとして効果的に細分化することで、システムに極力手を加えずにデータ連携を図れるためコストメリットあり。
Web application programming interfaceの略。インターネット上に公開されたコンピュータプログラムであり、システム開発時にこれを部品として活用することで、高機能なWebベースアプリケーションを、より短期間・低コストで開発できる。機能を一から開発手間を省くことができる。
会計の視点→新しいコードを極力書かずに、部品を組み合わせてシステム開発する考え方は主流となりつつある。
公認会計士、監修・執筆、クレタ・アソシエイツ
執筆、日本オラクル
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