Office 365をひも解く【第1回】
Officeスイートだけじゃない! Office 365のサービス内容
ついに正式サービスを開始したOffice 365。連載の第1回では、Office 365で提供されるサービス内容をまとめる。
米Microsoftが「Microsoft Office 365」(以下、Office 365)を2010年10月に発表してから半年以上経過した。2011年4月にはβテストが開始され、ついに同年6月28日に正式サービスが開始された。さまざまなITベンダーがクラウドコンピューティング環境でサービス提供を開始し、その利用も決して珍しいことではなくなった昨今、Microsoftが満を持して登場させたOffice 365は、どのような位置付けのサービスなのだろうか。そして利用者となる私たちはどのようなメリットを享受できるのだろうか。
本連載ではOffice 365をひも解きながら、ビジネスの現場でどのような活用を検討できるか、今から取り組むことができる事柄などを検証していく。
Office 365で提供されるサービス
Office 365と聞くと、やはりこれまで日本マイクロソフトが提供してきたデスクトップアプリケーションスイート「Microsoft Office」(以下、Officeスイート)をすぐに頭に思い浮かべることだろう。しかし、実際には少し異なる。
日本マイクロソフトはOffice 365を「最も優れたコミュニケーション&コラボレーション製品のクラウドバージョンと最新版のデスクトップスイートの組み合わせを、全ての規模の企業に提供するサービス」と定義している。
このことから、これまでのOfficeスイートは「最新版のデスクトップスイート」であって、Office 365は「コミュニケーション&コラボレーション製品のクラウドバージョン」とOfficeスイートを合わせて提供する、と考えることができる。Webブラウザを介して必要な機能を活用するだけではなく、生産性向上につながる部品(機能の一部)をクライアントアプリケーションとして展開し、インフラストラクチャとなる認証などのサービスを自社内のオンプレミス環境と協調動作させることで、その管理性を高めている。
Office 365では以下のサービス(製品ともいえる)を提供する。
- Office Professional Plus
- Exchange Online
- SharePoint Online
- Lync Online
まずはOffice 365の要素となる、個々のサービスの概略を見ていくことにしよう。
Office Professional Plus
Office Professional Plusは、最新バージョンのOfficeスイートをクラウドで利用することができる。ほぼあらゆるデバイスで、ドキュメント、電子メールおよび予定表にアクセス可能だ。Office Professional Plusに新規に追加された「Office Web Apps」は、Word、Excel、PowerPoint、およびOneNoteをWebブラウザで使用できる。
Webブラウザで直接ドキュメントを参照・編集できるだけでなく、もちろんローカルPC上でのドキュメントの参照・編集も可能だ。オンライン/オフラインを問わず(時には意識することなく)必要な情報にアクセスし、またその情報を活用するために使用に慣れたインタフェースであるOfficeスイートをそのまま利用できる。
Exchange Online
これまでExchange Serverで提供されていた機能のクラウド版がExchange Onlineだ。1ユーザーにつき25Gバイトまでのメールボックス(容量可変)を用意でき、ウイルス対策やスパム対策も自動的に行われ、企業におけるメッセージインフラとして活用できる。もちろん予定表や連絡先、仕事の共有といったExchange Serverをインフラとしたコラボレーション環境もこれまで同様に使用可能だ。
これらの機能はクラウドサービスとしてデータセンター内で管理されるが、ユーザーはOutlookクライアントに加えて、Outlook Web App(Webブラウザベースのクライアント)やBlackBerry、iPhone、Windows Phoneといったモバイルデバイスからもアクセスできる。「いつでも、どこでも、必要な情報へ」という言葉を表す1つのフロントエンドと考えることもできるだろう。なお、これらのメッセージインフラでは、個人用電子メールのアーカイブ機能やコンプライアンス対策機能も付加されており、情報セキュリティへの考慮もなされている。
SharePoint Online
同名のサーバ製品SharePoint Serverのクラウド版がSharePoint Onlineだ。情報共有のためのインフラとして活用されることが想定されている。中心となる機能は、ユーザー間での情報共有を支えるチームサイトだ。部署やワークグループでドキュメント、タスクリストおよびスケジュールを共有したり、ユーザー間で同期を維持できるため、プロジェクト管理の一端を担うことも可能だろう。
また、ユーザー個人がドキュメントを保管する個人用のサイトを構築することもできる。SharePoint Serverの機能が搭載されているためOfficeスイートとの親和性も高く、デスクトップ環境でも容易に作業できる。さらには、自社内の情報共有だけではなく、他社ユーザーとも活用できるよう設計されており、組織内外の情報共有を支える基盤とすることも可能だろう。
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Lync Online
これまで仮想会議ソリューションとして提供していた「Office Live Meeting」は、Office 365ではLync Onlineとしてクラウドで提供される。インスタントメッセージング(IM)機能やプレゼンス情報の共有サービスはもちろん、オンライン会議におけるデスクトップ共有やPC間の音声・ビデオ通話も可能だ。
また、Lync OnlineはOutlookとも連動し、1クリックで会議を自動で作成して、参加できるし、Exchangeの予定表とも統合可能。Lync Onlineの仮想会議ではこれまでおのおのの機能として存在していた会議開催通知を連動することが可能になるのだ。
Office 365プラットフォームの機能
ここまでOffice365で提供されるサービスを見てきたが、Office 365にはこのような「製品」としてはまとめることができない重要な機能が存在する。それが、クラウドサービスのためのインフラ機能だ。ここでは便宜上、「Office 365プラットフォーム」(Microsoftではこのような呼称は使用していない)と呼ぶことにして、これらの機能についても触れておこう。Office 365プラットフォームは、それぞれのクラウドサービスをシームレスに利用するための以下のような機能を備える。
ローカルActive Directoryでのシングルサインオン機能
クラウドサービスの利用において、利用する度に認証を求められるのでは決して便利とはいえない。マイクロソフトのクラウドサービスは、これまでは専用の認証クライアントをクライアントPCに常駐させることでこの問題に対処していた。毎回のパスワード入力を避けることができる有用なソリューションだが、運用方法によってはネットワークパスワードとの相違やパスワード更新のタイミングの相違などによって、利用面で煩雑さがあったことは否めない。
Office 365プラットフォームの機能として、今後はActive Directoryとのフェデレーションサービスを利用することができる。これまでも連携・同期機能は存在したが、さらに一歩進んだ機能を提供する。自社内に設置・管理された認証サービスとしてのActive DirectoryをOffice 365に統合し、ユーザー情報やパスワードを一元管理することができるのだ。
また、その資格情報やパスワードは日本マイクロソフトのデータセンターに保管されることなく、自社のActive Directory内で管理・運用することが可能だ。従って、ユーザーアカウントそのものはもちろん、パスワードの有効期限設定などのセキュリティ制御を自社の基準に則した形態に修正できる。ユーザーを複数のパスワードやアカウントの散在から解放し、管理者はTCOの削減や情報管理の一元化を図ることができる、Office 365プラットフォームの重要な機能といえるだろう。
データセンターの管理とSLA
クラウドサービスのため当然だが、システムそのものの管理はサービス提供者である日本マイクロソフトが行う。ファシリティも同様で、サービス運用しているデータセンターには地理的な冗長性が担保されている。そのため、何らかの非常事態においてもサービスが中断することなく提供されることが一定基準で保障されることになる。
自社で管理するサーバ環境の場合、適切なコストを掛けなければ一定水準のサービスレベルを保証することは困難だし、現実的には俗人的な管理下に置かれてしまうことも多いのではないだろうか。
Office 365はビジネスの基盤となるメッセージングや情報共有をつかさどるサービスの集合体であるため、情報が失われないことや必要なサポートが提供されることが重要になる。99.9%の稼働率と返金制度のあるSLA(Service Level Agreement)、24時間年中無休のIT管理者向けサポートにより、クラウドサービスを利用する必要最小限のコストで、情報インフラとしての最低限必要な環境を全て手に入れられると考えることもできるだろう。
Office 2010とOffice 365の違い
Office 365の全体的な構成について解説をしてきたが、日本マイクロソフトがデスクトップアプリケーションスイートとして提供しているOffice 2010とは根本的に異なることが分かるだろう。Office 365は企業活動におけるコラボレーションとメッセージングのインフラを提供している。Officeスイートはその一部分として、クライアントアプリケーション、そして、クライアントサービスとしてOffice 365に組み込まれている。
Office 365におけるクライアントアプリケーションのOfficeスイートは、オンラインサービスとの統合が図られ、SharePoint Onlineとの組み合わせによってドキュメントの作成・編集・共有といった作業をデスクトップPCとクラウド間でシームレスに行うことが可能だ。これらのOffice 365におけるOfficeスイートの機能拡張や利用方法の詳細については別掲する。
ブロッサム インフォメーション テクノロジー Office 365グループ
株式会社ブロッサム音楽事務所 IT事業推進部に所属する技術者集団。「ブロッサム インフォメーション テクノロジー」のブランドで活動を行っている。マイクロソフト製品を用いたソリューション展開やカスタムアプリケーション開発、システム保守までを幅広く手掛けている。クラウドサービスを利用したソリューションも手掛け始め、現在Office 365の展開に合わせたソリューションの実現や導入支援などを積極的に行っている。
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