運用管理の負荷増と情シスのスキル低下が背景
【市場動向】“ハード/ソフト統合システム”に、ユーザー企業の期待大
システム導入・運用管理を効率化できるとして、ハードウェアとソフトウェアを統合した垂直統合型製品が注目を集めている。IDCジャパンの福冨里志氏の話を基に、その市場動向とユーザーの期待を俯瞰した。
相次いでリリースされた垂直統合型製品に、市場の関心も高まる
単一ベンダーがハードウェアとソフトウェアを組み合わせて提供する垂直統合型製品が注目を集めている。2010年10月に発表された「OracleExadata」をはじめ、Hewlett-Packardの「HP AppSystem」、IBMの「IBM PureSystems」など、外資系ベンダーが続々と製品をリリース。2011年11月には富士通が「Fujitsu DI Blocks」を、2012年10月には日立製作所が「Hitachi Unified Compute Platform」を発表するなど、国産ベンダーもこれに続いている。
これらは従来、個別に製品をそろえて構築していた仮想環境やそのシステム基盤を、コストを抑えながらスピーディに導入できる点が特徴。また、これまではハードウェア、ソフトウェアの各製品分野で最良と判断した製品を組み合わせてシステムを構築する「ベスト・オブ・ブリード」のスタイルが主流だったが、システム構成の複雑化による運用管理負荷の増大が多くの企業で課題となっている。その点、単一のベンダー製品によるシンプルな構成とすることで、運用管理の負荷・コストを低減できる点もメリットとされている。
IDCジャパンでは垂直統合型製品の構成要素を、サーバ、ストレージ、ネットワークといった「ハードウェアとその管理ツール」「仮想化プラットフォーム」「オペレーティングシステム」「データベース」「アプリケーション」の5つのレイヤーに分類。
これを基に、製品タイプを、「ハードウェアとその管理ツールを組み合わせた検証済みシステム型(統合レイヤー1)」「ハードウェアから、仮想環境のオペレーティングシステムまで組み合わせたIaaS型(統合レイヤー1~3)」「ハードウェアからデータベースなどのミドルウェアやアプリケーション層まで組み合わせたPaaS型」(統合レイヤー1~5)の大きく3つに分け、各製品動向をウォッチしている。
| 製品タイプ | 製品名 |
|---|---|
| ハードウェアとその管理ツールを組み合わせた検証済みシステム型 | 「NetApp FlexPod」「VCE Vblock」など |
| ハードウェアから仮想環境、オペレーティングシステムまで組み合わせたIaaS型 | 「Cisco UCS」「IBM PureFlex System」「Dell vStart」「Fujitsu DI Blocks」「HP CloudSystem/VirtualSystem」など |
| ハードウェアからデータベースなどのミドルウェアやアプリケーション層までを組み合わせたPaaS型 | 「Oracle Exadata」「Oracle Exalogic」「IBM PureApplication System」「HP AppSystem」など |
| 垂直統合型製品のタイプと主要製品 | |
IDCジャパン サーバリサーチマネージャーの福冨里志氏は、「コスト削減やリソースの有効活用を狙い、2008年ごろから多くの企業がサーバ仮想化に取り組んできた。そろそろ仮想環境の更新需要が高まるタイミングである他、昨今はハイパーバイザー管理ツールの発展を受けてIaaSも浸透しつつある。プライベートクラウド環境の構築に向けて、今後、市場の盛り上がりが予想される」と解説する。
実際、IDCジャパンが337社を対象に行った「国内サーバー市場 ユーザー動向調査 2012」でも、「垂直統合型製品に含まれるシステム構成要素の最適な範囲」として、多くのユーザーが「ハードウェアとその管理ツール」(13.9%)、「ハードウェアからデータベースまで含んだ製品」(12.2%)、「ハードウェアから仮想環境のオペレーティングシステムまで含んだ製品」(11.9%)、「アプリケーション層まで含んだ製品」(20.5%)を挙げた。「垂直統合型製品の採用はあり得ない」と答えたユーザーは7.1%にとどまり、製品に対する需要が大きいことを裏付けた。
既存製品の寄せ集めではない――各製品とも独自の強みを訴求
ただ、「アプリケーション層まで含んだ製品」を望む声が最も多かったにもかかわらず、実際にユーザー企業が採用している、もしくは採用予定がある製品としては、「ハードウェアとその管理ツール」「ハードウェアからデータベースまでを統合した製品」が最も多かったという。福冨氏は、「アプリケーションまで含んだ製品の導入実績が少ないのは、組み合わされるアプリケーションの種類がまだ限られていることもあるが、カスタマイズの要望が生じやすい日本企業の特性も影響しているのでは」と解説する。
「欧米企業ではパッケージに業務を合わせる文化が根付いているが、日本企業の場合、アプリケーションまで含めた製品があっても『カスタマイズのためのコストや時間がかかるなら、個別に製品をそろえて組み合わせるベスト・オブ・ブリードとあまり変わらないのではないか』という議論になりやすい。その点、アプリケーションを除いたIaaS型、PaaS型の製品の方が日本市場では受け入れられやすいといえる」
一方で、垂直統合型製品に対して「単に既存製品を組み合わせただけなのでは」といった疑問を抱く向きも多い。この点で垂直統合型製品ならではの強みを求める傾向も強いが、これについては各ベンダーも認識しており、それぞれ特徴を打ち出している。
例えばOracle Exadataでは、データの高速転送が可能なInfiniBandを搭載した「Oracle Exadata Storage Server」を採用するなど、Oracle Exadata専用に強化したハードウェアを1つの強みとしている。一方、IBM PureApplication Systemでは、搭載したいアプリケーションに最適なシステム構成「パターン」を、専用Webサイトからダウンロード提供している。このパターンをIBMだけではなくパートナー企業からも提供し、「自社に適した構成を選びやすい」点を特徴としている。
国産ベンダーの場合、メインフレーム全盛の時代からユーザー企業のシステム運用を支援してきた実績を反映。例えば日立製作所のHitachi Unified Compute Platformでは、統合運用管理機能に国内トップシェアの「JP1」を採用。従来のシステム構築・運用経験で得た知見をテンプレート化し、ユーザーの要件に合わせて仮想マシンを迅速にデプロイできる機能を装備するなど、SIとしてのノウハウを製品の軸としている。
「Oracleはデータベースを核にハードウェアまで自社製品でそろえ、IBMはハードウェア、ミドルウェアを自社で用意した上で、パートナーを含めた広いマーケットでユーザーを囲い込もうとしている。国産ベンダーは既存のシステム構築・運用ニーズの中から、導入・運用の効率化を望むユーザーを実直に拾っていく構えだろう。それぞれ販売戦略は異なるが、どの製品もベスト・オブ・ブリード型の構築に比べて、導入までのリードタイム、コストは確実に削減できる。ベンダーロックインを懸念する声がある一方で、運用管理の効率化を狙い、シングルベンダー化を望む声も高まりつつある。情報システム部門のリソースも減らされている今、市場のニーズにしっかりと合致しているといえる」
運用効率化に対する強いニーズが導入を後押し
実際、多くの企業において運用管理コスト削減が最優先課題となる一方で、サービス提供の迅速化など“攻めのIT活用”も同時に求められている。だが、情報システム部門のスタッフが削減されたり、運用のアウトソーシング先をカットされたりしているケースが多い他、スタッフのスキルレベルの低下も問題になっている。
福冨氏は「アプリケーション層まで全てを含んだ製品が望まれる背景には、運用負荷低減に対する情報システム部門の強いニーズがある。今後は、統合運用管理機能やサービス提供の自動化機能、それに連携したシステムリソースの同的配分機能など、コスト、人員、スキルが限られている中でも効率良く運用できる機能群が一層重要性を増すだろう」と話す。
また、垂直統合型製品は、既存のアプリケーションを1つのシステム基盤に集約するためのインフラとなるもの。数千万円以上の製品が中心である他、システムの集約は段階的に進めるのが一般的である以上、「ベンダーには共通基盤に載せるべきシステムの取捨選択や、投資が生きる移行計画についてのアドバイスも求められるだろう」として、SIerとしての知見も製品の重要なポイントになることを示唆した。
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