x86サーバ単体の統合的な管理を提供するDell EMC PowerEdge iDRAC(アイドラック)サーバの優劣は管理機能が決める

サーバの使い勝手を左右するのは、性能だけではない。今後のサーバを導入する指針としては、単なるスペックではなく、どれだけ管理性能が優れているかが重要な要素になる。

2017年01月30日 10時00分 公開
[ITmedia]

 多くのサーバベンダーからサーバが販売されている。現在では、CPUにIntel製品を使い、メモリのスペックも変わらない。大きく変わるのは、ストレージの容量や種類(HDDやSSD)やネットワークのスピードなどとなっている。しかし、同じようなストレージやネットワークを用意すれば、メーカー間の差はほとんどないと思われている。

 サーバの使い勝手を左右するのは性能だけではない。最も重要になるのは管理機能だ。Dell EMCのインテル® Xeon® プロセッサーを搭載したPowerEdgeサーバは、サーバをローレベルから管理するためのiDRAC(Integrated Remote Access Controller: アイドラック)が用意されている。今後のサーバを導入する指針としては、単なるスペックではなく、どれだけ管理性能が優れているかが重要な要素になる。

iDRACとは何か?

 iDRACは、言ってしまえば、サーバの中に入っているもう一つの管理用システムだ。サーバのプロセッサといわれているIntel社のプロセッサとは独立して存在しており、電源さえ入っていれば、iDRACが常に動作しているため、管理者は電源オフ状態でも簡単にサーバの管理が行える。

iDRACは、サーバの電源がオフになっていてもアクセスできる管理システム。仮想コンソールもHTML5化されているため、ブラウザで管理できる

 もちろん、iDRACは管理用のネットワークを別に持っているため、そのネットワークを経由して、離れた場所にあるクライアントPCから、サーバを管理できる。サーバルームに入って、状態を監視しなくても、リモートでサーバ監視ができることは大きなメリットだ。

 リモートコントロールでは、サーバの画面がブラウザに表示されるため、クライアントPCからBIOS設定の変更など、サーバを前にして設定しなければならなかった項目もリモートから設定できる。

 また、iDRACではHTML5を使って仮想コンソールを表示するため、他社の管理システムのように専用のクライアントソフト、セキュリティ的に問題になっているJavaなどを使わなくてもいい。セキュリティ的に信頼の高い管理システムが構築できる。

iDRACの仮想コンソールはHTML5化されている。このため、セキュリティ上問題になるJava VMや専用クライアントソフトなどをインストールしなくても、ブラウザを使うことができる

 もちろん、データセンタなどで、管理を行うために、管理用にサーバルームに持ち込んだノートPCにUSBケーブルを接続することでダイレクトに操作できるようになっている。

 便利なのは、仮想メディアだろう。OSのブートなどでは、CD/DVDやUSBメモリなどからブートする。しかし、リモートで管理している場合は、サーバルームに入って、いちいちCD/DVDメディアを入れて、インストールを行うのは面倒だ。

 iDRACでは、CD/DVDのISOファイルを仮想メディアとして、リモートのクライアントPCからマウントすることができる。これを利用すれば、クライアントPCからリモートでOSのインストールなどを行うことができる。

 また、iDRACでは、DHCPで指定されたファイルサーバからリモートでOSのインストールを行うこともできる(一連のセットアップ、インストール作業をスクリプトにより自動化可能)。

 iDRAC(最新版はiDRAC8、13世代のPowerEdgeサーバに搭載)は、個々のPowerEdgeサーバ情報を確認したり、電源の状態、消費電力の表示、内部温度の表示、CPUやメモリ、IOなどの負荷をグラフで表示することができる。

 さらに、5000項目を超えるシステムパラメータをiDRACでは監視して、障害に関してのレポートを作成する。無償で提供しているOpen Manage Essentials(管理ソフトウェア)を経由すれば、自動的にデル プロサポートに障害情報を送付する。この機能を利用すれば、管理者がサーバのハードウェア トラブルの原因を見つけてから、サポートに連絡するのではなく、障害が起こったら、すぐにデル プロサポートに通知が行き、障害の内容をチェックして、ハードウェアトラブルならば、すぐに交換部品を持って、障害を治すことができる。もちろん、各種の障害データがiDRACから取得できるため、短時間で障害を治すことが可能だ。

 iDRACでは、PowerEdgeサーバが内蔵するストレージコントローラー(PERC)と連携しているため、iDRACのメニュー上でストレージのRAID設定やブートドライブの設定などが行え、トータルなサーバ管理が簡単に行える。

 実際、新しいPowerEdgeサーバの電源やネットワークなどのハードウェア設定を行い、新しくOSのインストールを行うまで、既存のセットアップ テンプレートがあれば5分ほどでできる。今まで、サーバを導入して、サーバ設定のセットアップ、OSのインストール、アプリケーションのインストールなどに数日かかっていたことを考えれば、非常に短期間で新しいサーバを運用できるようになる。

 PowerEdge 13世代では、サーバのフロントベゼルにスマートフォンなどで使われているNFCが用意されている。このため、スマートフォンに無償で提供しているOpenManage Mobileをインストールしていれば、サーバにかざすだけで、そのサーバの情報やエラーログを確認できる。もちろん、基本的な設定をスマートフォンで行うこともできる。

iDRACでは、スマートフォンのNFCを使って、サーバにかざすだけで情報やエラーログが取得できる。また、エージェントフリーでサーバのリソースをモニタリングできる

 iDRACでは、次世代の管理システムRedfishに対応しているため膨大な数のサーバを運用するデータセンタにおいても、管理や運用の自動化が行えることが評価されている。もちろん、既存のIPMIやWSMANにも対応している。さらに、自動化するためのスクリプト言語としては、Python、PowerShell、RACADMなどが利用できるため、多くの開発者が自動化を行える。

iDRACは、次世代の管理APIのRedfishにも対応している。数万台ものサーバを運用するデータセンタでも効率的に管理・運用ができる

 iDRACは、PowerEdgeサーバの前面に付いているUSBポートにサーバの設定を記述したXMLファイルを搭載したUSBメモリを差し込めば、自動的に設定ファイルを読み込んで自動的に設定を行うことができる(iDRAC Direct)。もちろん、同じUSBメモリを対応している複数のサーバに差し込めば、複数台のサーバセットアップもUSBメモリを差しだけで行える。

 数十台のサーバの設定を行うのは、USBメモリでできるが、さすがに数千台のサーバの設定をUSBメモリで行うのは無理がある。そこでDell EMCでは、ネットワークを経由して設定関係のファイルが保存されているファイルサーバにDHCP経由でアクセスするだけで、1000台を超えるサーバの設定を瞬時に行うことができる(Zero Touch自動コンフィギュレーション)。

 この機能を利用することで、システムボード交換時にも、設定を自動的に行ったり、ライセンスの設定なども行える。

iDRACでは、設定をできるようにiDRAC DirectやZero Touchなどの機能が用意されている
システムボード交換時にも、各種設定をリストアして、再設定が簡単に行える。サーバ廃棄時にもデータを完全に消去することができる

 サーバの管理で大きな問題になるのが、サーバのファームウェア(BIOS)、管理システムのiDRAC、ストレージコントローラーのPERCなどのファームウェアのアップデートをどのようにしていくかだ。多くの企業では、サーバの導入時からこれらのファームウェアのアップデートをほとんど行っていない。

 最近では、頻繁に新しい機能が提供されたり、バグの修正、セキュリティを高めるための修正が行われている。このため、これらのファームウェアもキチンとアップデートしていく必要がある。

 1台のサーバならば、Dell EMCのサポートサイトからファーウェアをダウンロードしてきて、手動でアップデートすればいい。しかし、サーバのモデルが異なっていたりすると、アップデートするファームウェアの種類が異なっていて、手動で行うのはトラブルの元になる。

 そこでiDRACでは、iDRAC Automatic Server Updateという機能を用意している。この機能を使用すれば、ファイルサーバに用意されたセントラル リポジトリに各種のファームウェアを追加すれば、設定されたスケジュールに従って、各サーバのiDRACが自動的にファームウェアをダウンロードして、アップデートしてくれる。最初にセントラル リポジトリに構築に手間がかかるが、構築後は数百台、数千台のサーバのファームウェア アップデートをスムーズに行える。

iDRACのファーウェアアップデートを使えば、複数のPowerEdgeで適切なタイミングでファームウェアのアップデートが行える。また、障害検知の自動化を使えば、トラブル情報をデルプロサポートに通知することもできる

LifeCycle ControllerでファームウェアのアップデートからOSのインストールまでをサポート

 iDRACに搭載されているLifeCycle Controllerは、ファームウェアのアップデート、ストレージの設定、OSのインストールなど、サーバのセットアップに関わる一連の作業を専用のGUIを使って、ステップバイステップで行うことができる。

 iDRACを使えば、同じことができるが、非常に手順が面倒だ。この点LifeCycle Controllerを利用すれば、一貫した流れでセットアップ作業が行える。

 セットアップ作業では、ファームウェアのアップデートファイル、インストールするOS、OSが使用するドライバなど、さまざまなソフトウェアが必要になる。これらのソフトウェアをDVDやUSBメモリなどに用意しておくと、非常に煩雑だ。

 そこでLifeCycle Controllerでは、システムにフラッシュメモリを組み込み、必要なソフトウェアを管理する。これにより、IT管理者は物理メディアを持って、各サーバにインストールしていくといった作業は必要なくなる。全ては、LifeCycle Controllerが持つフラッシュメモリからインストールが行える。

 また、LifeCycle Controllerにインストールされるソフトウェアはリポジトリとして社内のサーバやDell EMCのFTPサーバなどを参照することができるため、常に最新のリポジトリを利用することが可能になっている。

 LifeCycle Controllerが使用するリポジトリは、Dell EMCのFTPサーバ(プロキシーアクセス可能)以外にも、イントラネット内部に自社が運用しているFTPサーバを指定することができる。これ以外にも、CIFSやNFS、HTTP、ローカルなど、さまざまなアクセス方法が用意されている。LifeCycle Controllerを利用する企業のネットワーク環境などに合わせた運用が可能になっている。ファイアウォールから特定のポートを空けておく必要などはない。

 新しい更新があれば、iDRACで設定したアップデートのタイミングに従って、各アップデートが行われる。

 LifeCycle Controllerでは、Red Hat Linux、Windows Serverなど、インストールするOSのバージョン情報が用意されている。IT管理者は、インストールするOSを指定すれば、自動的に最新ドライバなどがダウンロードされて、OSのインストールが行われる。これにより、OSのインストール後に最新のドライバがインストールされる。

 また、LifeCycle Controllerでは、サーバプロファイルをバックアップしたり、リストアする機能を持っている。この機能を利用することで、システムボード交換などが起こったサーバに対して、導入企業が使用している設定などを簡単にセットアップすることができる。

 LifeCycle Controllerでは、サーバのハードウェア診断を行う機能も用意されている。この機能を利用すれば、OSよりもローレベルでのハードウェアのトラブルなどの診断が簡単に行える。単に診断を行うだけなく、レポートも自動的に作成されるため、このレポートを使用すれば、テクニカルサポートとの意思疎通が非常にしやすくなる。

LifeCycle Controllerの画面。このGUIから、ファームウェアのアップデート、OSのインストール、ストレージの設定など、初期導入の作業全てが、ステップバイステップで行える

iDRACのエディション

 iDRACには、Basic、Express、Enterpriseの3エディションが用意されている。Basicは、無償で提供されているが、管理機能としては最低限の機能しかない。Expressは中小規模の企業をターゲットにしている。Enterpriseは、多数のサーバを運用する企業向け。

 コスト的には、数万円の差になっているため、中小企業であってもiDRACはEnterpriseを選択してほしい。Enterpriseでは、iDRACが持つ仮想コンソール機能をサポートしていたり、ファームウェアのAutoUpdate、スケジュールアップデートに対応しているためだ。

 新たに購入するサーバのコストを考えれば、数万円を節約するよりも、運用の手間とコストを低減する方がTotal Cost Ownership(TCO)では大きなメリットがある。

 Dell EMCでは、BasicやExpressからEnterpriseへのアップグレードに関しては、追加ライセンスを購入すれば行えると説明している。しかし、社内に複数のエディションのiDRACが存在するよりも、最初からEnterpriseに統一していた方が便利だろう。

 iDRACのEnterpriseは、サーバの管理・運用をできるだけ人の手をかけずに自動化するということに力点が置かれているため、実際にサーバを運用・管理していく上では、IT管理者の大きな武器となるだろう。数十台、数百台のサーバに新しいファームウェアをインストールするだけでも、IT管理者が人力で行っていると時間もかかるし、ミスも起こりやすい。やはり、自動化することで、短時間でアップデートを終了し、サーバの稼働時間を高めることもできる。IT管理者としては、ある意味ローレベルな作業に手を取られるようにも、より戦略的なITシステムの設計といった仕事に移行できるだろう。

iDRACの各エディションにおける機能表の一部。無償のBASICでも多くの機能はサポートされているが、多数のサーバの管理を自動化する機能、仮想コンソールなどの機能はEnterpriseにしかない。

中小企業にとってiDRACは

 IT管理部門がしっかりしていない中小企業にとって、サーバ管理は重荷でしかない。こういったこともあり、パブリック クラウドに注目が集まっている。しかし、社内の財務システムなどの基幹システムをパブリック クラウドで運用するには、まだまだ問題もあるし、企業自身も踏み切れない。

 こういったことを考えれば、どうしても社内で運用するサーバは残っていく。パブリック クラウドの登場により、社内運用のオンプレミスサーバの数は少なくなっていくだろう。こういったことは、大企業だけでなく、中小企業にまで波及している。

 ただ、社内で管理・運用するオンプレミスサーバの数が減ったとしても、各サーバにかかる手間や時間が逆にかかるようになっては本末転倒だ。やはり、オンプレミスサーバ自体の管理・運用も手間をかけずに自動化していくことが重要だろう。

 このような目的には、iDRACはぴったりだ。iDRACは、Dell EMCが数多くの顧客からの要望を受け入れて開発した同社ならではサーバ管理・運用システムだ。ほとんどのサーバベンダーでは、CPUやメモリ、ストレージなどが標準的な部品を使用しているため、差がないといわれているが、管理・運用システムのiDRACを持っているかいないかで、最も大きな差が出るだろう。

 中小企業にとってもiDRACを十分に利用することが、サーバの管理・運用コストを下げる大きな要因となる。また、トラブルが起こったとしても、iDRACと連携したデル・プロサポートを利用することで、システムの停止時間を最小限に抑え、運用の効率を最大限に上げることができるだろう。


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