Column
機密情報を暗号化する――電子メール、Webサイト、アプリケーション
企業にとって機密情報をいかにしてセキュアに伝送するかは深刻な問題の1つだ。メールやブラウザなどで、どのような選択肢があるか、検討していこう。
セキュリティプロフェッショナルが直面している深刻な問題の1つに、機密情報をいかにしてセキュアに伝送するかという問題がある。組織がセキュアな伝送について考える場合、話題は大概、暗号化技術や暗号化された電子メールとなる。本稿の狙いは、各種の規制や法的必要条件を満たすために利用できるセキュアなデータ伝送方法の選択肢を開拓することだ。
暗号化技術は今日では手ごろな価格で入手できるようになっている。多くのベンダーが暗号化のための各種のハードウェアおよびソフトウェアを手ごろな価格で提供しているほか、アウトソーシングという選択肢もある。ここでは、各選択肢の詳細を検討する。
セキュリティプロフェッショナル、特に医療機関のセキュリティプロフェッショナルが直面している深刻な問題の1つに、機密情報や専有情報、保護されるべき医療情報(PHI:protected health information)をいかにしてセキュアに伝送するかという問題がある。組織がセキュアな伝送について考える場合、話題は大概、暗号化技術や暗号化された電子メールとなる。本稿では電子メールのセキュリティについて取り上げるが、最大の狙いは各種の規制や法的必要条件を満たすために利用できるセキュアなデータ伝送方法の選択肢を開拓することだ。
米国で1996年に施行されたHIPAA(Health Insurance Portability and Accountability Act)のセキュリティ規則では、セキュアな伝送と暗号化の利用が参照されている。このセキュリティ規則では暗号化の使用は義務付けられてはいないが、暗号化技術は「規則に対応するため」の実装仕様として含まれている。つまり、HIPAAの対象となる医療機関には次の3つの選択肢が与えられている。同規則にあるとおりにその仕様を実装するか、その仕様と同等の代替選択肢を実装するか、あるいはその仕様をなぜ適用できないかについて文書で理由を説明した上で実装しないかのいずれかだ。
だが、暗号化技術は今日では手ごろな価格で入手できるようになっているため、医療機関にとって、PHIを伝送する際に何ら暗号化技術を使わないという選択肢を正当化するのは難しいはずだ。多くのベンダーが暗号化のための各種のハードウェアおよびソフトウェアを手ごろな価格で提供しているほか、アウトソーシングという選択肢もある。以下で各選択肢の詳細を検討する。
電子メールの暗号化
電子メールメッセージを暗号化し、電子メール添付ファイルなどのプライベートデータを安全に送信できる使い勝手の良い製品が、多くのベンダーから提供されている。受け取り手も、同じ暗号化方法を使って返信できる。こうした製品の多くはWebベースだ。通常、受け取り手にはリンクが送信され、受け取り手はそのリンクをクリックし、セキュアな電子メールサーバにログオンする。そうしたサーバは、その組織が自身で所有しているか、適切なベンダーにアウトソースしているかのどちらかだ。受け取り手はこうしてセキュアな方法で電子メールや添付ファイルに目を通し、必要に応じて添付ファイルを付けてセキュアな返信メッセージを送信できる。
個人間や組織間でセキュアなメッセージを伝送するための非Webベースの技術もある。その中で最も一般的なのは公開鍵インフラ(PKI)だ。PKIでは、暗号化されたファイルのアンロックに使うための鍵の交換が必要となる。例えば、ボブがスーにセキュアなメールを送りたい場合、暗号化されたメッセージをスーが開けるよう、ボブはスーに自分の公開鍵のコピーを渡す。ボブはメッセージやファイルの暗号化に使用した秘密鍵を自分で保持する。この秘密鍵は、送信者が本人であることの証明にも利用され、そうした場合には特にデジタル署名とともに用いられる。デジタル署名とは、個々の送信者に一義的に付与される小さな電子ファイルで、その送信者が本人であることを証明する。デジタル署名は米国の多くの州において、オリジナルの署名と同じ法的効力を持ち、契約書やそのほかの法的書類に利用できる。
PKIは扱いが厄介で、鍵の管理や運用も難しいため、今のところまだ大規模には導入されていない。だが、既に小規模な導入では成功しており、健康保健機関や医療情報センターといった組織間で大きなファイルの送信に使われているケースも多い。
PKIと組み合わせて大きなデータファイルの暗号化や認証に使用されることの多いセキュアなデータ伝送方法の1つに、ファイル転送プロトコル(FTP)がある。だが、FTPは個人間の伝送には使われない。この技術は利用しやすいため、情報センターを介した請求取引や電子送金通知書のやり取りなど、大量のデータを伝送する組織に適している。
Webサイトの暗号化
機密データを収集したり、そうしたデータを顧客や外部組織とやり取りしたりする際にWebを使用している組織には、Webサイトのセキュリティ対策が必要となる。一般的に使われているのは、Webサイトを介して伝送されるデータを暗号化するSecure Socket Layer(SSL)だ。ブラウザを開くと、Webサイトの右下に開いた状態または閉じた状態の錠前が表示される。この鍵前が閉じていれば、そのWebサイトを介して伝送されるデータは安全だという意味で、通常はSSLによりセキュリティが確保されている。そのため、ハッカーによるアクセスを心配することなく、Webサイトを介したプライベートデータの伝送や収集を行える。リスクのまったくないセキュリティ対策などないが、SSLとセキュアなWebサイトを使用してデータを伝送すれば、データが不正に傍受されるリスクを大幅に軽減できる。内部にWebアナリスト/プログラマーを配備するなり、あるいは魅力的でセキュアなWebプレゼンスを構築するための専門知識を備えたベンダーに協力してもらうなりすれば、セキュアなWebサイトは構築できる。
アプリケーションの暗号化
組織によっては、電子カルテなどのデータをアプリケーション間で伝送するケースもある。そうしたデータが組織の外部を通過するのであれば、そうしたデータ伝送についてはインターネット経由で送信するメッセージと同様ととらえるのが賢明だ。つまり、傍受される危険があり、適切な保護手段を講じておかなければ不正利用される可能性もあるということだ。アプリケーション間で機密データを伝送する場合には、アプリケーションの暗号化機能を調べ、前もって暗号化ソリューションを実装しておくことが優れたセキュリティ対策と言える。こうした技術は、そのアプリケーションの開発ベンダーから入手できるほか、アプリケーションの機能性を備え、なおかつデータ伝送時にデータを保護するようカスタマイズされた製品を使うという選択肢もある。
リモートユーザー通信
リモートユーザーの存在は、企業にさらなるセキュリティリスクをもたらす。リモートユーザーは自宅と会社の間で通信することが多いからだ。これはつまり、リモートユーザーにはセキュアなデータ伝送要件を留意させるだけでなく、機密情報へのリモートアクセスに関連した、そのほかのセキュリティリスクにも留意させる必要がある。リモートユーザーによる通信のセキュリティを確保するには、仮想専用ネットワーク(VPN)をインストールするといい。VPNはユーザーとやり取りするデータをすべて暗号化する。VPN技術は市場で簡単に入手できる。リモートユーザーを抱える組織は、この技術を導入するのが望ましい。VPNが構築されておらず、モデムも使用されていない場合(通常、モデムは企業のネットワークにアクセスする効率的な方法ではない)、インターネット経由でやり取りされるデータはすべて傍受と不正使用の危険にさらされている。
ノートPCとPDA
ノートPCなどのポータブルデバイスは紛失や盗難の危険性が高い。そのため、こうしたデバイスを機密情報の伝送に使用している組織は、デバイスに保存されたデータを暗号化するのが賢明だ。そうしておけば、万が一、ポータブルデバイスが紛失・盗難にあった場合でも、データの不適切な開示から組織を保護できる。ポータブルデバイス向けの暗号化プログラムは、小規模組織にとっても比較的手ごろな価格で提供されている。
無線ネットワーク
無線通信をめぐる脅威は高まる一方だ。セキュリティ対策が不十分な無線ネットワークは重大な脆弱性ポイントとなり、企業をハッカーによる容易なアクセスにさらす。そこでますます重要性を増しているのが、ネットワークへのアクセス権限を与えられていない人物によるアクセスを阻止することだ。また、機密情報の不適切な開示を防止するには、無線デバイス間でやり取りされるデータをすべて暗号化することが重要となる。ノートPCを無線ネットワークに接続して利用するパターンが一般化し、特に病院の緊急治療室などでは、ノートPCを使って医療情報や健康保険情報などが収集されている。こうしたノートPCは組織の無線サーバと通信し、保険申請やカルテなどのデータを更新している。こうしたデータは通常、機密情報であり、暗号化による追加のセキュリティ保護レイヤーを必要とする。
本稿筆者のクリス・アプガー氏は、現在Apgar & Associatesの社長で、かつてはオレゴン州およびワシントン州南西地域のProvidence Health PlansにおいてHIPAA準拠担当責任者を務めたこともあるCISSPの資格保有者。データセキュリティ、プライバシー、トランザクション/コードセット、規制、HIPAAなどの分野で全国的に知られた専門家でもある同氏は、セキュリティ、プライバシー、HIPAA、グローバルで詳細なビジネスプロセスのレビュー、情報システムプロジェクト開発、ロビイスト活動などを専門とする独立系コンサルティング企業を運営している。
(この記事は2006年1月17日に掲載されたものを翻訳しました。)
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