タブレット導入を検討する洗足学園小学校は本格採用に先立ち、タブレット活用の可能性を探る取り組みを進めている。その一環として実施した特別授業の様子をレポートする。
1923年9月に関東圏を襲った未曾有の天災である関東大震災。そのわずか2カ月後の同年11月、「残る半生を人のためにささげたい」との前田若尾氏の思いから設立されたのが、現在、幼稚園から大学院までの総合学園として運営されている洗足学園(川崎市高津区)だ。
同学園の小学校である洗足学園小学校の開設は1949年。理念に掲げたのは、物事の本質を見抜く高い知性や、志に向かって挑戦する強い意志、他者への思いやりの心を備えた、次世代を担う「社会のリーダー」の育成だ。そのために同校では、いわゆる“縦割り活動”など、年齢の差を越え互いの考えや気持ちを理解するためのイベントを、四季折々に合わせて豊富に用意している。
そんな洗足学園小学校が今、授業での活用を計画しているのがタブレットだ。洗足学園小学校は他の小学校と同様、専用教室に設置した校内PCを授業に活用してきた。今後はそれに加え、より児童の授業に対する理解を促し、興味や意欲を引き出すツールとして、児童でも持ち運びが容易なタブレットを活用しようと考えている。
ただし、新たな“道具”の使い方は教員の悩みどころだ。そこで洗足学園小学校は、児童1人1台のタブレットを使った特別授業で活用法の見極めに取り組んだ。それはどのようなものなのか。早速、特別授業の様子をのぞいてみることにしよう。
教室には6つのグループに分けられた約30人分の机。各机の上にはタブレットが1台ずつ置かれている(写真1)。2時間目の終わりを知らせるチャイムとともに、特別授業を受けるため、小学5年生の児童が教室に続々とやってくる。我先にと足早に到着する児童、静かに立ち止まりながらも様子をうかがう児童、教室を見つつ話し合う児童……。その様子は興味津々という言葉がピタリと合う。
今回の特別授業のテーマは「将来のシゴトとエコ」。なぜ今、環境保護の必要性が強く叫ばれているのか。大人になった時に、その実現にどう貢献できるか――。将来の予測と現在の企業の取り組みを基にこうしたことを考え、環境に対する理解を深めようという内容だ。
もっとも、授業自体は堅苦しさとは無縁だ。冒頭では校外から派遣された講師役のスタッフが、近年の夏の猛暑を踏まえて、このまま温暖化が進んだ場合の2050年における最高気温などについて動画で解説。児童は手元のタブレットを使い、環境に関するクイズに答えながら、情報を共有したうえで環境の改善策を他の児童と共に考えていった(写真2)。
特別授業の内容は、児童がタブレットそのものやタブレットを使った授業により早く慣れることができるよう、巧みに計算されている。授業の合間に実施するクイズは、初めは画面をタップするだけの選択式クイズが中心で、徐々にスタイラスペンで画面に丸印を書いたり、文字を書き込んだりといった操作が必要なクイズに移る形だ(写真3)。サポートスタッフは、タブレットの使い方への質問に対応する。
授業の最後には、自分が希望する将来の仕事と、環境保護のための自分のアイデアをタブレットにスタイラスペンで書いて発表した(写真4)。「歯科医になり、ライトや設備を減らす」「獣医師になり、動物病院の電気を無駄にしない」「弁護士になり、タブレットの活用で無駄な紙を減らす」。児童は思い思いに、自分の考えをタブレットに書き出していった。
児童は今回の特別授業をどう感じたのだろうか。児童からは「自分の意見を他の人と共有できるのが楽しかった」との声が挙がった。今回の特別授業では各児童のタブレットと講師役スタッフ用ノートPCに、クイズの出題や解答の共有機能を備えた授業支援アプリケーションをプリインストール。児童がタブレットでクイズの回答を送信すると、他の児童のタブレットからもその回答が見られるようにした。またノートPCに接続したプロジェクターの大画面で、児童の回答をクラス全員で確認できるようにしていた(写真5)。
「おとなしくて、授業中になかなか発表しない人もいる。でも、いろいろと考えているのは私たちにも分かるし、そういう人ほどいい意見を持っていたりする。そうした声を文字を介して知ることができたのは、とても貴重な経験だった」と児童。今まではなかなか表に出ることがなかった“おとなしい児童”の意見をも引き出し、多様な意見を基に考えを深める――。タブレットは、それを自然な形で実現しているのだ。
教育現場の監督役の目には、タブレット1人1台環境を生かした特別授業はどう映ったのか。学校法人洗足学園の洗足学園小学校で教頭を務める向井民子氏は、実施前は「児童がタブレットに興奮して勝手に操作するなど、授業に影響が出るのではと危惧していました」と明かしつつ、「タブレットを使うときと使わないときのメリハリを付けることで、タブレットの強みを生かしながら、授業を円滑に進めることができると確信できました」と語る。
洗足学園小学校は今回の特別授業で実施したのと同様に、1人1台のタブレット環境の構築を目指している。今回の特別授業で1人1台環境を生かした実際の授業を見ることで、具体的な授業イメージが把握できたと向井氏は説明する。「より早く授業にタブレットを取り入れようという気持ちが、ますます強くなりました」(同氏)
日々、教壇に立つ教員の評価も良好だ。「仕事と環境との関係を紹介する動画教材は非常に分かりやすく、われわれの授業でもぜひ取り入れたい」と力説するのは、洗足学園の洗足学園小学校で教諭を務める小板英澄氏だ。同氏は特に、理科や算数といった授業での活用に注目する。「惑星の中身がどうなっているのか。立体物をいろんな角度から切ったときに、その断面はどのような形状になるのか。これらは文字だけでは理解を促しにくい。タブレットを使って動画や写真を見てもらうことで、より理解を容易にできるはずです」(同氏)
洗足学園小学校が今回実施した特別授業は、富士通が全国の小中学校を対象に無償で実施している「環境出前授業」だ。環境出前授業では、富士通のスタッフが教育機関へ出向き、タブレットを活用した環境学習授業を実践する。授業に必要なタブレットやノートPCといった機材も富士通が用意する。今回の環境出前授業では、講師役1人とノートPC操作役1人、サポート役3人の計5人のスタッフを派遣。クラス全員分のタブレット37台と、講師役のスタッフ用のノートPC2台を用意した。洗足学園小学校は、児童に環境への関心を高めてもらうことに加え、タブレット活用授業の可能性を試すべく、環境出前授業に申し込んだという。
国は現在、学校教育現場の電子化事業を進めており、2020年までに全国の小中学校で児童1人1台のタブレットによる学校教育の実現を目指している。教育機関でのタブレット活用は、さらに加速して広がっていくはずだ。とはいえ、教育機関にタブレット活用のノウハウが豊富にあるわけではない。導入してもどう活用すればよいのかが分からず、悩んでいる教育機関は少なくない。
富士通の環境出前授業は、こうした現状を打開する有力な解決策だといえる。環境出前授業では上述の通り、講師役や児童をサポートするスタッフを派遣するとともに、各種機材も用意する。現場の教員も参加することで、タブレットを授業で活用する具体的なイメージが湧きやすい。
富士通では、全国の小中学校を対象とした環境教育出前授業を積極的に推進している。タブレットを活用した授業で環境問題を楽しく学んでみてはどうだろうか? 申し込み方法は以下リンクより確認してもらいたい。
環境教育出前授業について(富士通)
提供:富士通株式会社
アイティメディア営業企画/制作:TechTargetジャパン編集部