昨今、「変化に強い柔軟なシステムアーキテクチャ」が叫ばれている。しかしそのアーキテクチャは、経営者やエンドユーザーにとって本当に役立つものなのか。そもそも、変化に強いアーキテクチャを実現できないのはなぜか。企業システムを取り巻くニーズと現実の姿から、真に「変化に強いアーキテクチャ」とは何かを考察する。
【専門分野:IT戦略、IT投資】
1977年シャープ株式会社に入社。本社IT部門に在籍、販売、生産、購買など数々のプロジェクトを担当、また10年強の新人教育、標準化・共通システム化を担当。さらに、システム企画担当として、ホスト撤廃プロジェクト、マスター統合、帳票出力基盤の構築等に携わる。事業所IT部門在籍時には2000年対応、ホスト統合、運用自動化、電子帳票システムの導入を担当。2007年4月、ウイングアーク テクノロジーズ 株式会社に入社。現在、エバンジェリストとして活躍中。経営・エンドユーザー・IT部門の「三方一両“得”」になるIT基盤構想を提唱し、「出力HUB化構想」を推進している。
ここ数年、企業システムの理想形として「ビジネス変化に迅速に対応できる柔軟なIT基盤」「変更・修正が容易なシステムアーキテクチャ」などという形容が増えている。確かに、ビジネスプロセスを積み木のように組み立てたり、容易に入れ替えたりすることができれば、企業システムにまつわる技術課題の大部分が解決できるかもしれない。そのために必要なミドルウェアやアプリケーションサーバなども多数提供されている。
だが、エンドユーザーの立場からすると、ミドルウェアの上でビジネスプロセスを自由に組み立てたり、組み替えたりすることが果たして「いいシステム」なのだろうか? また、「システムに実装されたビジネスプロセスの連携を容易にしたい」と経営者が切望するだろうか?
本稿では、「企業内のすべての人々のニーズを満たし、開発負荷もコストも下げる」夢のようなITアーキテクチャの設計について、実例を基に考察していく。