2012年02月29日 20時00分 UPDATE
特集/連載

【IFRS】原則主義における訴訟問題を指摘する意見もIFRS強制適用の是非、範囲が焦点に――金融庁企業会計審議会

経団連によるIFRSについてのアンケート結果が紹介。IFRS適用については「連結財務諸表に絞るべき」との回答が多かった。

[垣内郁栄,TechTargetジャパン]

 IFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)の適用を議論する金融庁の企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議が2月29日に開催された。今回は日本経済団体連合会が会員企業を対象に行ったIFRSについてのアンケート結果が紹介された。IFRS適用については「連結財務諸表に絞るべき」との回答が多かった。一方、任意適用や強制適用などの適用方法については意見が分かれているようだ。

 アンケートは2011年10月に実施。会員企業43社と31団体が答えた(回答率77%)。IFRS適用では単体財務諸表、連結財務諸表の両方を対象にする考えもあるが、アンケートでは「連結財務諸表に絞るべきとの意見が多かった」(委員の新日本製鐵 代表取締役副社長 谷口進一氏)。単体にIFRSを適用する場合、税法や会社法との調整が必要で、影響が大きくなるというのが理由だ。製造業における原価計算への影響(退職給付会計における数理計算上の差異の取り扱いなど)を心配する声もあった。また「かなり多くの企業から」(同氏)、金融商品取引法上の単体開示の廃止を含めた開示制度全般の見直しを求める声があったという。

 2012年中にIFRSの適用方法や適用時期などの方向性を決めるべきとの声も企業から上がった。アンケートに答えた企業の多くは何らかのIFRS対応プロジェクトを進めていて、その動向を早期に判断する必要がある。また、日本のIASB(国際会計基準審議会)に対する影響力を保持、強化する観点からも早期の判断が必要というのが主な理由だ。

 意見が割れたのは適用方法だ。現行の任意適用の継続、強制適用を行うとしても対象企業を限定するなど幅広い意見があった。IASBに対する影響力保持に配慮し、適用会社が一定数になるように制度を設計すべきとの意見もあった。現行の任意適用の条件を緩和すべきという意見や、IFRSの基準や解釈に問題があるとして強制適用の判断はすべきではないという回答もあった。

 また、日本基準で進んでいるコンバージェンスについては、基準ごとに対応を検討すべきとの意見が多かった。ただ、現在得ているEUの同等性評価への影響を検討すべきとの回答があった。IFRSの原則主義については、「減価償却をはじめ、基準の解釈をめぐり混乱が生じる懸念がある」として、「監査人は、企業の会計方針や判断を尊重しつつ、適切に対応すべきである」との声が聞かれたという。また、監査人に対して、必要に応じてガイドラインなどを作成することを求める意見もあった。個別の基準については、利益概念、開発費の資産計上、のれんの非償却などが指摘された。多くはASBJ(企業会計基準委員会)や経団連がIASBのアジェンダ協議で提出したコメントに含まれる。

 委員で経団連の企業会計委員会 委員長の廣瀬博氏(住友化学工業 取締役副会長)は「何らかの方向性を示すために行った調査ではなく、意見を客観的に整理したもの。確かに一部には連結と単体の関係など少し方向性が絞られたものもあるが、適用の在り方など多くの幅広い意見が出されている。このような幅広い意見は、(経団連の)意見が割れているのではない。今後経団連としての意見形成に向けて議論を深めていくための整理であり、中間的な位置付けと考えている」と話した。

 委員の鈴木行生氏(日本ベル投資研究所 代表取締役)は「TOPIX(東証株価指数)のどのくらいがIFRS適用企業によってカバーされるかが、(IASBに対する)存在感で大事」と指摘。「上位100社でTOPIXの時価総額の5割、200社で3分の2、300社で4分の3を占める。東京マーケットの時価総額の半分を超える企業がIFRSを採用することが大事ではないか」と話した。

 また、佐藤行弘氏(三菱電機 常任顧問)は「私自身は、IFRSは現行の任意適用の継続が自然で、最も合理的だと思っている」と話した上で、米国のIFRS適用の判断が延期されていることから、「その間に日本は任意適用企業を増やす努力をすればいいのではないか」と述べた。

ガイドラインは必要か

 29日の審議会ではIFRSの原則主義についても議論された。委員からは何らかのガイドラインが必要との指摘が相次いだ。委員の八木和則氏(横河電機 顧問)は、IFRSの原則主義について「デメリットは統制が効かないこと」と指摘。その上で「もしIFRS適用の範囲を広げるなら、この弱点を補完するためにIFRSの範囲内で国内独自のガイドラインを作るしかない。ガイドラインに強制力がなくても作れば実質的な強制力を持つ」と話した。

 また、山崎彰三氏(日本公認会計士協会会長)は「原則主義と細則主義は対立した概念ではない」とした上で、「新しい基準を採用すれば、企業や監査人、設定主体で十分な議論をして、解釈を考えないといけない。経団連と日本会計士協会で作っている議論の場もある。議論を積み重ねることでいろいろな懸念が払拭される」と述べた。

 IASBはIFRSの公式の解釈を行う機関として「IFRS解釈指針委員会」(IFRS IC)を設置している。「IFRS適用に関し、(IASB)は各国特有の問題に関してのみガイダンスを作成することを認めており、それ以外の問題に関して国ごとのガイダンスを作成することは認めていない」(金融庁)。

 一方、委員の黒川行治氏(慶應義塾大学教授)は「日債銀や長銀の裁判事例では、会計基準のどの細則が生きているかが争点になった。裁判官が何をもって基準やルールを考えているかが争点になる。その意味で、IFRSを裁判上どう考えるのか。そのことを考えると空恐ろしいし、想像ができない。裁判の状況も含めて考えていく必要がある」と述べた。

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