金融庁の企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議が3月26日に開催された。IFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)を取り巻く世界情勢の確認に加えて、日本経済団体連合会(経団連)が日本企業の任意適用の状況などを説明した。
金融庁の企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議が3月26日に開催された。IFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)を取り巻く世界情勢の確認に加えて、日本経済団体連合会(経団連)が日本企業の任意適用の状況などを説明した。
2012年7月にまとめられたIFRSについての中間的論点整理は、IFRSの任意適用について「現行制度の下で、IFRS適用の実例を積み上げる」ことを提言している(参考記事:金融庁、IFRS審議のまとめを公表「任意適用の積み上げを」)。企画調整部会臨時委員で、経団連 企業会計委員会企画部会長の谷口進一氏(新日鉄住金 常任顧問)は任意適用企業を増やすためには、「企業の予見可能性を高められるような明確な時間軸(ロードマップ)をそろそろ示すことが重要。方向性が明確でないと企業は最終判断に踏み切れない」と指摘した。
これに対して金融庁は「ロードマップを早く示すべきという意見があることは認識しているが、国際情勢が変化していて難しい。まずは2012年の中間的論点整理で検討課題となっていることをやっていきたい」と回答した。
経団連によるとIFRSを任意適用し、財務諸表を開示している企業は8社。経団連の「IFRS実務対応検討会」への参加企業や、IFRS任意適用が報道などで伝えられている企業を合わせると合計で60社程度がIFRSの任意適用を検討しているとみられる。この60社の株式時価総額は約75兆円で、谷口氏によるとシンガポールの証券取引市場(時価総額65兆円)、ロシアの証券取引市場(同70兆円)を上回るという。谷口氏は日本の証券取引市場の時価総額上位50社のうち、約4割の企業がIFRS任意適用を既に行っている、または検討しているとも述べた。
谷口氏はまた、上記のIFRS実務対応検討会での議論からIFRSの任意適用を企業が進めるには、以下の4つの対応が必要と訴えた。
(1)については既にIFRSを任意適用した企業の中では、日本基準における実務をそのまま適用できるように工夫をしているケースが多いと指摘。IFRS対応で問題になるとされる有形固定資産の減価償却方法や耐用年数についても日本基準と同じ方法で乗り切っている場合があるという。経団連では各社のこのような実務上の対応をデータベース化することを検討している。各社の運用や基準の解釈で対応できないことも考えられ、「日本国内でタイムリーにガイダンスの作成を行うことが必要」と強調した。
(2)については開発費の資産計上や、のれんの非償却などIFRSには、「マネジメントとして受け入れがたい基準」があると指摘。その上で「引き続き、IASBに対して改善要求が必要」と谷口氏は述べた。日本の企業会計基準委員会(ASBJ)がメンバーに選ばれた会計基準アドバイザリー・フォーラム(参考記事:今後のIFRS開発に助言、国際的な会計基準フォーラムにASBJが参加)や、東京に設置されたIFRS財団のアジア・オセアニア・オフィス(参考記事:IFRS財団の東京オフィスが開所、日本のIFRS適用への影響は)の活用も検討する。
(3)は経団連がIFRSの議論が始まる前から主張してきた内容だ。特に求めているのが金融商品取引法上の単体開示の廃止または簡素化。IFRSを適用するとさらに開示作業が複雑になるとして、経団連はIFRS任意適用企業の有価証券報告書のページ数(連結財務諸表)がIFRS適用後に50%増加したなどの試算を公表した。
(4)は、現在4つあるIFRS任意適用要件の緩和を求める。谷口氏は「大企業は現行の要件でも対応可能だが、中小企業や新規上場企業では難しい」などと指摘し、「緩和の余地はないか?」と疑問を投げかけた。
企業会計審議会総会では3月13日に監査部会がとりまとめられた「不正リスク対応基準」が承認された(参考記事:監査法人の引き継ぎをより厳密に、不正リスク対応基準がまとまる)。
内閣府大臣政務官の島尻安伊子氏は「今後この基準を踏まえた監査が行われることで、会計不正事案の抑止につながることを期待している」とあいさつした。IFRSについては「さまざまな考え方がある」とした上で、「国際情勢を踏まえて、日本が国際的に孤立しないように留意をしつつ、日本にとって最適な対応を総合的に検討していきたい」と話した。
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