2013年第1四半期のPC出荷台数激減をアナリストとベンダーが分析PCベンダーの生き残り策は?

経済的圧力、大規模なIT更新の見合わせ、タブレットの台頭により、PC業界は危機的な状況に陥っている。PCベンダーは生き残りを賭けた対策が求められている。

2013年06月13日 08時00分 公開
[Cliff Saran,Computer Weekly]
Computer Weekly

 2013年第1四半期のPC市場は、新規PCの出荷台数が前年同期から14%減と大きく後退した。

 米調査会社のIDCが発表した最新の世界の四半期PC出荷台数調査によると、全ての地域でWindows 8搭載PCの新モデルの出荷台数は大きく落ち込んだ。小型ノートPCの販売不振が、ローエンド市場に影響しているという。

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 欧州では、Windows 8およびタッチ操作対応PCは、徐々に売れている。法人市場の出荷台数は予想通り、経済的圧力と大規模なIT更新が見合わせられていることで停滞している。

 Computer Weeklyで以前報じたが、企業はかつてのように定期的にPCを入れ替えず、コンシューマー市場ではノートPCよりもタブレット端末が買われていることが原因で、大手PCメーカーは業績不振に陥っている。

 IDCのパーソナルコンピューティング担当リサーチディレクター、デビット・ダウド氏は、「PC業界は重大な局面を迎えている。PCに代わる端末の普及の影響を跳ね除け、コンシューマーに使われ続けるよう、戦略的な取捨選択が必要だ。ベンダーは、縮小する需要と迫り来る淘汰を前に、組織の構造や市場参入戦略はもとより、サプライチェーン、流通、製品ポートフォリオの見直しを余儀なくされるだろう」と述べている。

 IDCのリポートでは、米HPの企業向けPC出荷台数は、社内の組織再編の影響を受けたとされている。米Dellも、構造改革の取り組みの影響で、PC出荷台数は落ち込んでいる。

 IDCの集計と比べると小幅ながらも、調査会社の米Gartnerが発表したPC市場リポートでも全てのベンダーのPC出荷台数は大きく減少している。

 ただし、Gartnerの主席アナリスト、北川美佳子氏は、企業向けPCはコンシューマー市場と比べれば健闘しているとする。

 「PC出荷台数全体の約半分を占める法人PC市場は、依然としてPCの入れ替えが行われているために、成長が見られる。地域によってはPC入れ替えのピークは過ぎているが、全体的な法人PCの需要は、引き続き伸びている」(北川氏)

サービスとしてのPC

 米The 451 Groupのリサーチディレクター、アラン・ペルツ=シャープ氏は、ユーザーの選択肢が格段に広がったことが、ユーザーが何を購入するかに影響していると指摘する。

 「PCベンダーにとって現在の課題は、私物端末の業務利用(BYOD)の動きに対応しつつ、ユーザーが必要とする道具を提供できるかどうかだ」とペルツ=シャープ氏は語る。

 ハードウェアの入れ替えは従来、新しいOSやアプリケーションのシステム要件を満たすという理由で実施されてきたが、現在ほとんどのPCは大抵のPCアプリケーションに対応できる性能を備えている。

 ペルツ=シャープ氏によると、事実上Microsoft Officeをアップグレードせざるを得なかった時代と比べると、Google DocsやApache OpenOfficeを運用するなど、中堅・中小企業にとってのデスクトップアプリケーションの選択肢は格段に広がっている。

 一部の大手ハードウェアメーカーは、これを踏まえて対策に乗り出している。例えば、Dellはシンクライアント市場への参入を視野に、2012年にWyse Technologyを買収している。

 Dellのモバイル製品およびソリューション事業を指揮する副社長兼ゼネラルマネジャーのスティーブ・ララ氏は、本誌に明かしたところでは「Wyse事業は前年比で20%成長している。これは、数十万ドル規模の事業になる」と見込んでいる。

 シンクライアントコンピューティングは、依然としてPC事業と比べれば規模は小さい。しかし、ララ氏によると、「Wyseの売上1ドルにつき、4ドル分の売上がインフラストラクチャとサービスで発生」しているそうだ。

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DaaSへの大規模移行は見込みなし

 企業がシンクライアントコンピューティングに大挙して切り替えることはないだろうという見方は、ララ氏も同じだ。

 「現在までのところ、医療、金融、教育分野において規制へのコンプライアンスが目的で導入されるケースが主だ」

 Dellは、シンクライアントコンピューティングのハードルを下げようとしている。現在Dellでは、シンクライアントワークロード用に構成し直した仮想アプライアンス製品ファミリを販売している。従量課金制のサービスでエンドユーザーコンピューティング要件に対応したい企業向けに、スラウ(英国)、ダラス(米国)、北京(中国)にあるデータセンターを拠点に、クラウドデスクトップサービスを提供している。

 英Quocircaのアナリスト、クライブ・ロングボトム氏は、ベンダーはモバイル端末がPC市場を圧迫していることに気付き始めているとし、「ウォールストリートはDellをPCメーカーとしか見ないが、マイケル・デルはそこから脱却しようとしている」

 ロングボトム氏によると、中国Lenovoは、複数のフォームファクターを提供することでPC販売の落ち込みを食い止めようとしている。Gartnerの集計によると、Lenovoは上位5社のうち、売上が減少しなかった唯一の大手PCメーカーである。世界的には業績は横ばいだが、大胆な価格戦略が功を奏して、欧州では11%の成長を成し遂げている。

 PCベンダーは、デスクトップハードウェアに縛られるのではなく、ユーザーがどの端末からでもデータやアプリケーションを利用できる手段を提供する必要がある、とロングボトム氏は考える。ただし、このアプローチでは、エンドユーザーコンピューティング市場でのPCの存在感は薄まるだろう。

 「PCがアクセス端末になれば、有効なライフスパンは5〜10年になる可能性がある。これでは、どんなPCメーカーでも、何か刺激的なものを提供することは非常に難しくなるだろう」(ロングボトム氏)

 英Freeform Dynamicsのアナリスト、トニー・ロック氏は、DaaS(Desktop as a Service)のようなビジネスモデルへ移行する際の課題は、ほとんどの企業のIT部門ではまだ(クラウド利用による)PC調達を検討しておらず、「このような方法での調達には抵抗がある」と話す。

 米Microsoft、米IBM、HPなどの企業が融資を提供しても、ほとんどの企業は自社のデスクトップ環境を独自のものと見なし、そのような契約を避ける傾向にある。

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