レガシーシステムを捨てられない大企業のためのDX支援サービスとは設計から参画するフルマネージドサービス

止められないシステムを誰が俊敏に置き換えるのか? 企業ITのDXを語るとき、まず課題になるのがレガシーの扱いだ。それぞれがサイロ化せず一貫性のある環境でマルチクラウド/クラウドネイティブのトレンドに追従する方法はあるか。

2019年12月17日 10時00分 公開
[ITmedia]

 経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」には、日本企業のIT戦略の遅れに対する強い警告が示されている。いわく、旧来型のITから脱却し、俊敏なIT戦略を実行できる環境を手に入れなければ、2025年以降も生き延びる企業にはなれないそうだ。

 だが日本の企業ITが抱える重厚長大でモノリシックな基幹システムや集約して積み重ねられたプライベートクラウドのソフトウェアスタック群を誰が俊敏にするのだろうか。マルチクラウドでクラウドネイティブなシステム構築と運用をどうしたら併存させられるだろうか。

 実はこの領域で、DXにも経験が豊富な独立系システムインテグレーター(SIer)が興味深いサービスを展開し、実績を上げつつあるという。

 業務の根幹を担うメインフレームなどのレガシーを抱える企業が、あと数年で旧来型のITから脱却し、俊敏なIT戦略を実行できる環境を手に入れる方法はあるのか。この課題に伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC)は独自のサービスを展開し、実績を上げつつある。複雑な企業ITが抱える課題の技術的な障壁を取り除きながら、レガシーとクラウドネイティブが共存できる環境をサービスとして提供する。

 レッドハットが主催するイベント「Red Hat Forum Tokyo 2019」において、CTCの一万田 真久氏(フィナンシャルサービス本部FS営業第3部 部長代行)が「コンテナで実現するManaged Multi-Cloud Services(MMCS)」と題したセッションでその詳細と最新企業事例を披露した。本稿ではその内容を紹介する。

新旧アプリが交差する現代の企業IT、主体的に乗りこなす道具としてのコンテナ

 企業ITは、この数十年の間に大きく変化した。メインフレームからオープンシステム、仮想化基盤、「Amazon Web Services」(AWS)、「Microsoft Azure」(Azure)などのクラウド。そして現在は複数のクラウドを横断するマルチクラウドが注目を集める。

 「複数のクラウドサービスが競争する状況にあり、今後は特定のクラウドに対応するだけでは競争力を維持できない。複数のクラウドの条件や内容、アプリケーションの状態に合わせて主体的かつ横断的に利用する、マルチクラウドを実現する手段を持つことが重要だ」(一万田氏)

CTC 一万田 真久氏

 技術トレンドは変遷するが、企業の中にはメインフレームも仮想化基盤も「捨てられないシステム」として現役で稼働する状況がある。このため企業IT基盤の必須要件として「どんなに新しい技術が出てきても古い技術との連携が必要」と一万田氏は強調する。

 他方、複数のクラウドを戦略的に利用するにはアプリケーションの可搬性(ポータビリティー)が重要だ。また企業IT全体の戦略を考えるならば既存のレガシーシステムとどう併存させるかが問題となる。一万田氏によると、この2つの課題を解消するのがコンテナ技術だ。

 一万田氏はコンテナ技術を採用するメリットに、コスト、可用性、サービス品質の向上を挙げる。コンテナ技術はリソースをプログラマブルに調達、拡張できる特徴を持つ。そのため、アプリケーション実行基盤以下のコンピュータリソースのセットアップなどの工数をかけずに動的に処理能力を増強できる。また各コンテナの状態監視や障害ノードの待避、復旧などは自動化されており、人手に頼らずに安定稼働させる仕組みを備える。こうした仕組みを持つことから、例えば緊急のセキュリティアップデートが必要な場合などでも、システムを稼働させたまま一部分ずつ段階的に更新するローリングアップグレードで運用できる。アップグレードイメージはレジストリで管理できるため、一貫性を維持しやすく、メンテナンスにかかる工数も削減できる。中でも「Kubernetes」はコンテナ基盤のデファクトスタンダードとも言えるプロダクトだ。

商用Kubernetesディストリビューションならではの強みと弱点

 俊敏性の高いIT戦略の実現を目指す企業の多くは、クラウドネイティブ化を目的にコンテナアプリケーション基盤を採用する動きが盛んだ。だがオープンソースソフトウェアのコンテナアプリケーション基盤(「Vanilla Kubernetes」)を企業が業務で利用するには、相応の技術力が必要になる。万が一の障害やトラブルが発生するリスクがあるようではいくら俊敏性や可用性で利点があるとしても採用しにくい。

 「Kubernetesエンジニアの雇用には膨大な人件費がかかる。一般企業が全て自社に高度なエンジニアを抱えるのは現実的ではない」(一万田氏)

 そこでAWSやAzure、「Google Cloud Platform」(GCP)といった主要クラウドサービスはPaaS(Platform as a Service)型でKubernetes基盤を提供している。一万田氏はこれを「パブリッククラウドを使用する戦略を明確に持つ企業には非常に有効」と評価する。ただし、安定性は高いものの大量の移行作業が必要でコストがかかる難点がある。

 そして第3の選択肢が商用Kubernetesディストリビューションの採用だ。中でもCTCは金融機関などでの採用実績もある「Red Hat OpenShift Container Platform」(以下、OpenShift)を推奨する。「開発思想がヘテロな環境を前提としており、アジリティーが高い。ユーザーインタフェースやテンプレート機能も優れている」(一万田氏)

 だがOpenShiftにもカバーし切れない領域がある。例えば自社単独で導入しようとすると、ライセンスコストに加えて学習や運用コストが発生する。また、OpenShiftを運用するインフラは別途整備しなければならない。レガシーを含むアプリケーション運用の効率化は実現しても、基盤インフラの整備や運用の負担は変わらないのだ。

コンテナ導入計画から運用まで丸ごとサービス化

 そこでOpenShift採用企業の負担を最小化し、安心を加えるのがCTCの「Managed Multi-Cloud Service」(MMCS)だ。

 通常、自社でOpenShiftを導入する場合はサブスクリプション型のライセンス購入が必要でセットアップなどの作業が必要となるが、MMCSを介せばマネージドサービス型で同じ機能を利用できる。このマネージドサービスにはインフラやシステムの維持・運用、あるいはセキュリティ関連の機能も含まれる。このため、ユーザー企業が「安心して」「負担少なく」OpenShiftを利用できるという。

1 「Managed Multi-Cloud Service」(MMCS)の特長 図中のOCPはOpenShift Container Platformを指す《クリックで拡大》

 OpenShiftの導入を検討する企業であれば、企業ITのクラウドネイティブ化やモダナイズ、あるいはデジタルトランスフォーメーション(DX)を目的としたシステム企画を検討していることだろう。だが、場合によってはIT基盤全般を見直して再設計する可能性もあるため、社内の人員だけで戦略や企画を作り上げるのは非常に困難だ。

 そこでMMCSは開発・構築を支援する「インプリメントサービス」、運用保守を担う「マネージドサービス」だけでなく、その手前の、「あるべき姿」の設計から支援する「コンサルティングサービス」もサービスメニューに加える。

2 MMCSのサービス概要《クリックで拡大》

 コンサルティングサービスは、現状のシステムの状況と要望をヒアリングし、コンテナ化に向けたマイグレーション難易度の調査や優先順位付けの指針も提示する。インプリメントサービスは、CTCの豊富な技術とノウハウと複数のチャネルを生かし、環境を整備する。そして、作ったシステムを管理・運用するところまで、サービスを提供している。

 CTCはAWSをはじめAzure、GCPといった主要なクラウドの開発パートナーとなっているので、どのクラウドでも対応可能だ。ネットワークの構築についても、CTCのデータセンター経由で複数の環境に接続する「CTC Cloud Connect」というサービスを提供しており、プライベートクラウドからマルチクラウドへの接続も可能だ。

3 レガシーを含む環境とマルチクラウドを、マネージドサービスで運営《クリックで拡大》

CTCのDCを介して「レガシーシステムを捨てないクラウドファースト」の実例も

 最後に一万田氏は、コンテナ導入の例として2社の状況を説明した。

 ある大手金融企業は、メインフレームを基幹システムとし、周辺の約300の業務システムを「Windows」および「Solaris」で運用。SaaS(Software as a Service)も活用してきたという。課題はインフラ老朽化への対応負荷が大きいこと、アプリケーション高度化の実現、イノベーションに取り組める環境の構築などだ。ただし、メインフレームを継続して運用するため、新システムもメインフレームとの連携が必須とされた。

 そこで「レガシーシステムを捨てないクラウドファースト」という方針を立て、OpenShiftを基盤に、メインフレームとの緊密な連動が必要な部分は自社データセンター内にCTCサービスの基盤を設け、DX対応や開発環境などはマルチクラウドで実行する計画を推進している。これによって自社の運用要員を合理化する計画だ。

 別の大手企業でもメインフレームが残っており、周辺業務システムはWindows、Solaris、Linuxで600件ほど存在する中、新規システムはAWSを採用する。今後、既存のシステムもAWSに移行させるという。今後もやはりメインフレームは中心に据える方針だというが、周辺システム600件中200件はAWSに移行する計画だという。

 一万田氏はこれらの事例を説明して「お客さまは変化するITトレンドに対応しながら、資産を所有するだけでなく、利用するモデルを模索している。CTCはその要望に応えていく」とまとめた。CTCの豊富なノウハウとスキルで、コンテナによる柔軟で俊敏なシステムへの移行を支援する姿勢が感じられた講演だった。


提供:伊藤忠テクノソリューションズ株式会社、レッドハット株式会社
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