「Appleに脆弱性を報告しても放置される」問題は本当になくなったのか?「Appleセキュリティバウンティ」は改善したのか【第2回】

セキュリティ研究者の間で、「Appleセキュリティバウンティ」におけるAppleの応対が改善したという意見がある一方、懸念点も指摘されている。何が問題なのか。

2022年05月17日 08時15分 公開
[Alexander CulafiTechTarget]

関連キーワード

Apple | 脆弱性


 Appleのバグ報奨金・脆弱(ぜいじゃく)性報告プログラム「Apple Security Bounty」(ASB:Appleセキュリティバウンティ)における同社の応対の改善を、複数のセキュリティ研究者が好意的に感じている。ミニブログ「Twitter」で「08Tc3wBB」と名乗る匿名の研究者も、「Appleの応対にはこのところ、全体的に改善がみられる」と語る。

 「素っ気ない自動応答メッセージと、それ以降は何カ月もの沈黙が続くだけだった」。ASBが一般の研究者から報告を受け付けるようになる前の2016、2017年におけるAppleの反応を、08Tc3wBB氏はそう振り返る。

 2020年に入るとその状況に変化が表れた。Appleは最初の返信後すぐに、追加のメールを送るようになった。その変化を08Tc3wBB氏は、米TechTargetへのメールにこう記した。

 メールは「Apple Product Security Teamの担当者があなたの報告を受け取りました」という内容で、その担当者の名前も添えられています。これは自動返信botに応対されるよりも、ずっと感じがいいものです。以後はこの状態が続いています。私はコミュニケーションに関して、Appleが改善を果たしたと受け止めています

会員登録(無料)が必要です

Appleは脆弱性ごとに態度を変える?

 研究者のサウラブ・サンクワール氏も同様に、「Appleのコミュニケーションはある程度改善された」と評価する。一方で自身の経験から、同社のコミュニケーションの質は「脆弱性の種類に左右される」とみている。これは単に「脆弱性の重大さ」だけでなく、「脆弱性が存在する同社製品の種類」にもよるという。

 もし「iPad」「MacBook」といったApple製品に関連する脆弱性であれば、重大な脆弱性であってもなくても、「恐らく48時間以内に返答がある」とサンクワール氏は述べる。一方で同社傘下企業のWebサイトに関連する脆弱性の場合は、Appleの担当者が返答するまで「2カ月は待たされる可能性がある」と同氏は言う。

 サンクワール氏は、Appleの子会社Claris InternationalのWebサイトに関する脆弱性を例に挙げる。同氏はこの脆弱性を2021年5月にAppleに報告した。2022年2月にAppleから功績認定に関する問い合わせがあり、2022年4月現在いまだに報奨金の支払いを待っている状況だ。

 「iOS」「macOS」専門のセキュリティ研究者であるボイチェフ・レグラ氏も、Appleの応対には脆弱性ごとに多少のばらつきがあることを指摘する。「重要度の高い脆弱性の方が、重要度の低い脆弱性よりもAppleの応対が早い」というのがレグラ氏の見解だ。Appleが「素晴らしいコミュニケーション」(同氏)を取りながらすぐに修正した脆弱性もあれば、適切なコミュニケーションがなく、修正が一向に進まない脆弱性もあったという。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

製品資料 パロアルトネットワークス株式会社

セキュリティ運用を最適化し、SOCの負担を軽減する「SOAR」とは?

サイバー攻撃が巧妙化し、セキュリティチームとSOCは常に厳戒態勢を取り続けている。さらにデジタルフットプリントの拡大に伴い、セキュリティデータが絶え間なく往来する事態が生じている。このような状況に対応するには、SOARが有効だ。

製品資料 パロアルトネットワークス株式会社

現在のSOCが抱える課題を解決、AI主導のセキュリティ運用基盤の実力とは?

最新のサイバー攻撃に即座に対応するためには、SOCを従来の在り方から変革することが重要になる。しかし、何をすればよいのか分からないという組織も多い。そこで本資料では、現在のSOCが抱えている5つの課題とその解決策を紹介する。

市場調査・トレンド パロアルトネットワークス株式会社

セキュリティの自動化はどこから始める? SecOpsチームを楽にする正しい進め方

高度化するサイバー脅威に効率的に対処するには、セキュリティの自動化が欠かせない。だが自動化の効果を高めるには、使用ツールの確認、ワークフローの分析などを行った上で、正しいステップを踏む必要がある。その進め方を解説する。

製品レビュー ゼットスケーラー株式会社

AIで脆弱性対策はどう変わる? セキュリティ運用や意思決定に与える影響力とは

脆弱性対策は作業量や難易度を予測しづらく、限られたリソースで対応するのが難しい。さらに、単体の深刻度評価のみとなる一般的なセキュリティ監査ツールでは、包括的な分析は容易ではない。これらの課題を、AIはどう解決するのか。

製品レビュー AvePoint Japan株式会社

Microsoft 365ユーザー必見:情報漏えいの危険性が高い5つのヒヤリハットとは?

情報漏えいを防ぐためには、重大なインシデントになる前のヒヤリハットをいかに防ぐかが重要になる。そこで本資料では、Microsoft 365を利用している組織に向けて、情報漏えいの危険性が高い5つのヒヤリハットを紹介する。

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

ITmedia マーケティング新着記事

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news026.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...

news130.jpg

Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...