IT部門を二分する「バイモーダルIT」はデメリットが多すぎるCTOインタビュー

ブックメーカーWilliam HillのCTO、ジョイ氏は最近はやりのバイモーダルITに賛成できないという。IT部門を2つに分けるとどのようなデメリットがあるのか。ジョイ氏が考えるIT部門とはどういうものか。

2016年02月23日 08時00分 公開
[Cliff SaranComputer Weekly]
Computer Weekly

 ブックメーカーの英William HillでCTO(最高技術責任者)を務めるフィンバー・ジョイ氏は、1990年代半ばから、いわゆるドットコム事業に携わっている。その時期にWeb革命が起こり、ソフトウェアが業務上重要な資産と位置付けられるようになった。

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 Webブラウザ「Netscape Navigator」をはじめ、今日も利用されているモダンなWebユーザーインタフェースが登場する前、人々はGopherなどのコマンドラインツールを使ってWeb上の文書にアクセスしたものだった。

 ティム・バーナーズ=リー氏がHTTPを標準化し、米Netscape Communicationsはこの方式をより広範なコミュニティーに普及させた。

 ジョイ氏は、1990年代半ばにNetscape Communicationsに入社した。おりしもWeb革命が始まったころだった。

 草創期からインターネットを利用していた者からすると、Webが現在のように進化するとはとても想像できなかったと、ジョイ氏は振り返る。

 Webがその後の社会を大きく変えたことについて、ジョイ氏はこんな感想を漏らす。「Web上でこんなにたくさんのことが実行されるとは、夢にも思わなかった。人々がインターネットを日常的に使いこなす時代が来るなんて、想像できなかった」

 ただし昨今の商用Webでは、創設当初からの原則であるこの公平性が失われたと同氏は憂慮する。「Webの運用を始めたばかりのころ、平等性を高める方向に進化させたいとわれわれは願っていた。ところが『Facebook』や『iTunes』は、“壁で囲った庭”(walled garden)を築いているように見える」

 大量のネットワークトラフィックが、「Twitter」やFacebookなどの特定のアプリに向かうのが現状だとジョイ氏は指摘する。「Webを皆が利用しているのは確かだ。ただしその空間は大物プレイヤーに牛耳られている」と同氏は付け加える。

 ジョイ氏には、ドットコム事業を有する企業と古くからある企業の両方で仕事をした経験がある。同氏は、その2つの業界におけるITに対するアプローチの違いを次のように説明する。「IT投資を回収するために、(昔は)大規模なシステムを一括購入して5年間は使い続けていた。しかしドットコム時代は、テクノロジーを絶えず入れ替えることが重要になる」

 時代はすっかり変わった。デジタル化時代を迎え、あらゆる企業でIT部門と経営陣は、自社におけるITの役割を見直すことを余儀なくされている。ジョイ氏が指摘した通り、IT部門のトップがコンプライアンス部門に連絡を取り、社外の人間が社内データを利用するアプリを書けるようにするためのインタフェースの作成について協議するなどということは、一昔前なら考えられなかった。

 「しかし今は、こういう部分が当社のサービス公開戦略のカギを握る」とジョイ氏は話す。実はつい最近、William Hillは同社のインフラ上でアプリを書く開発者を同社に招き、ハッカソンを開催した。

 ほとんどの業界に当てはまるが、William Hillも数年かけて社内ITインフラを構築してきた。しかしドットコム事業を進める企業には珍しく、同社には最新で最強のテクノロジーで社内システム全体を刷新するというぜいたくは許されなかった。

 William Hillは社内システムの一部をリプレースし、それと並行して新しいアプリケーションを開発している。それでも、バックエンドを支える一部のテクノロジーは維持し続けるだろうとジョイ氏は明かす。

 「ほんの数年前、社内システムの95%はレガシーなテクノロジーで占められていた」と同氏は指摘する。実現時期の具体的な予測は難しいものの、長期的には、社内システムの3分の2を自社で開発し、3分の1は市販のソフトウェア製品を購入して配備するのが望ましいと、同氏は考えている。

IT業務のバイモーダル化にブレーキをかける

 ジョイ氏はIT部門を二分し、従来のシステムズ・オブ・レコード(SoR:Systems of Records)を担当するチームと、企業と顧客の関係の価値を高めるとして最近提唱されている、いわゆるシステムズ・オブ・エンゲージメント(SoE:Systems of Engagement)を担当するチームを設ける考え方にはあまり賛同できないという。

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