ITにおける脆弱(ぜいじゃく)性とは、ソフトウェアに含まれる、セキュリティ侵害の起点になり得る欠陥を指す。侵入者は脆弱性をサイバー攻撃経路として悪用することで、標的のシステムで悪意のあるプログラム(マルウェア)の実行や、メモリへのアクセスができるようになる。(続きはページの末尾にあります)
重大なバグは発生したら、IT部門に問い合わせが殺到する。それでも冷静に動いて適切に情報発信するための手法がある。緊急時におけるコミュニケーションのノウハウを紹介する。
攻撃者は脆弱性を
といった、さまざまなサイバー攻撃手法に悪用する。脆弱性が発覚してから、その脆弱性が解消されるまでの期間を狙うサイバー攻撃を「ゼロデイ攻撃」と呼ぶ。
脆弱性対策は、ハードウェアやソフトウェアの攻撃経路になり得る欠陥を特定し、分析、対処する手法で構成される。脆弱性対策は、一般的には以下のプロセスを踏む。
攻撃者は、組織のITシステムの脆弱性を常に探している。悪用可能な脆弱性を発見すると、システムへの侵入や企業データへのアクセス、業務運営の妨害を試みる。さまざまなシステムやアプリケーションを保有する大規模な組織では、一つの脆弱性が組織全体への攻撃のきっかけとなる可能性がある。
医療機関や金融機関は、法律や条例で脆弱性対策が求められる場合がある。HIPAA(医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律)、金融機関の情報管理やプライバシー保護の要件を定めるGLBA(グラム・リーチ・ブライリー法)、クレジットカード業界のセキュリティ基準のPCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard)といった法律や業界規制は、脆弱性対策の実践を義務付けている。国際標準化機構が策定した情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際規格「ISO/IEC 27001」も、脆弱性対策を要求している。
上述のように脆弱性対策は単一のタスクではなく、ITセキュリティチームが継続的に実施する複数のステップからなるプロセスだ。未適用のパッチや設定ミス、保護されていない機密データなどの問題を調査する脆弱性診断に加えて、実際に攻撃が起こった時のリスクを測定するために、システムの脆弱性を意図的に悪用して検証するペネトレーションテストも含まれる。
脆弱性スキャンとペネトレーションテストの結果を用いて、潜在的な脅威を評価するため脆弱性評価を実施する。特定された脆弱性に関する情報は脅威インテリジェンスソフトウェアに取り込まれ、攻撃を受けた場合の影響の大きさや脆弱性の悪用の可能性に基づいてスコア化される。例えばシステムでリモートコードの実行を可能にする未適用のパッチは、高リスクと判断される可能性が高い。
セキュリティチームは、脆弱性の性質に合わせてさまざまな対策を講じ、検出された問題の優先順位付けと修復を実行する。組織のセキュリティチームは、脆弱性が発見されたシステムを担当するIT運用チームに対して、修復を依頼する。IT運用チームが修正パッチを適用した後に、セキュリティチームは脆弱性が適切に修正されたことを確認するためのスキャンを実行する。
脆弱性対策のプロセス全体を通じて、脆弱性の発見や修復の状況は追跡できるようにする。こうすることで組織のセキュリティリーダーと経営幹部は、セキュリティリスクの低減とコンプライアンスのための取り組みをリアルタイムで把握できる。
脆弱性対策のプロセスは、必ずしも順調に進むとは限らない。組織が対策を実施するときに直面する一般的な課題を以下に挙げる。