導入事例:「ゼロトラスト」活用法をユーザーに聞く

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懐疑論者にゼロトラストの意義を納得させる方法

 ゼロトラストは、境界ベースのセキュリティ対策の負荷が増大する中で、それに対処する必要性を表現する用語として調査会社Forrester Researchが2010年に提唱した。ゼロトラストへの関心は高まりつつある。Forresterのアナリスト、ポール・マッケイ、チェース・カニンガム、エンザ・ラノンポロの3氏がまとめた報告書「How To Implement Zero Trust Security In Europe」(欧州でゼロトラストを実装する方法)によると、欧州の企業インフラに関する意思決定権者を対象に実施した調査では、パブリッククラウドを積極利用しているという回答が54%を占め、2016年の19%から急増していた。(続きはページの末尾にあります)

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ゼロトラストとは

誰を信用するか

 ウォルシュ、グランネルズの両氏によると、ゼロトラストをデフォルトとするセキュリティ対策においてはネットワークの内側も外側も何も信用しない。そのためリスクを許容できるレベルに抑えるためのコントロールが必須になる。これは深層防御と呼ばれる。

 両氏は言う。「ゼロトラストでは、『信じよ、だが検証せよ』としてきた従来のモデルが変化する。従来のモデルではネットワーク内の機器や資産は許可される可能性が高く、社内限定のリソースに安全にアクセスできるとしながらもそれを検証していた。それが『決して信じるな、常に検証せよ』に変化した。会社のリソースにアクセスする端末は全て認証を通過してセキュリティポリシーのチェックを受けなければならず、アクセスはコントロールされて必要な範囲に限定される」

 ゼロトラストでは、ITセキュリティがコントロールを取り戻すことができると両氏は解説する。

 「ゼロトラストへのシフトは、情報セキュリティ部門がエコシステムの新しい境界の多くでコントロールを取り戻す場になる。セキュリティはアドレスおよびロケーション層からデータ中心モデルへとシフトする。ゼロトラストネットワークセグメンテーションではトラフィックも可視化され、『誰が、何を、いつ、どこで、なぜ、どうした』を把握できるようになる。これはアクセス、セキュリティ、モニター、コンプライアンスを管理するために重要だ」

 Forresterの報告書を執筆したマッケイ、カニンガム、ラノンポロの3氏によると、非セキュリティ幹部はゼロトラストを単なるネットワークセキュリティアーキテクチャにすぎないと考える。Forresterの調査では、欧州でこれまでゼロトラストの採用を加速させているのはネットワークセキュリティの意思決定権者だったことが分かった。CISO(最高情報セキュリティ責任者)以上の幹部とはほとんど相談していなかった。

 Forresterによると、ゼロトラストモデルの採用に関しては、コストが一つの懸念材料になっていることが分かった。Forresterが構築した中核的なゼロトラストモデルは、IDなどの基本的なセキュリティコントロールと導入済みのコントロール基盤を使った攻撃表面の削減から着手することにより、ゼロトラストの原則に向けた段階的な進化に重点を置く。

 Forresterアナリストのマッケイ、カニンガム、ラノンポロの3氏はCISOに対し、既存のセキュリティシステムから着手し、段階的なアプローチで組織を横断するゼロトラストを導入するよう促している。「そうした分野をマスターすれば、セキュリティ監視の範囲を強化して可視性を高め、手作業のセキュリティタスクを自動化し、ゼロトラストの成熟度を高めるといった新しい分野に投資できるようになる。ゼロトラストが新しいセキュリティ製品をたくさん購入するための新たな口実ではないことを実証できれば、CISOに対する役員会の信頼も一層高まる」

 ゼロトラストの進展に関する報告書によると、実際に事実上のゼロトラストネットワークアクセスを提供するソフトウェア定義型境界技術で現在のセキュアアクセスインフラを拡張している組織は4分の1に上る。

ゼロトラストアーキテクチャの要素

 ゼロトラストは一般的に、以下のコントロール要素を組み合わせて組織のリソースにアクセスする端末とユーザー、信用レベルを管理する。

  • 統合型エンドポイント管理

 全エンドポイントにコンプライアンスを強制して管理する。会社保有の端末かBYOD(私物端末の業務利用)か、取引先が提供した端末かは問わない。これにより、自分の端末の状況(例えばOSが古くなっているなど)のセキュリティ脅威を把握できる。

  • シングルサインオン

 1回のサインオンで完全に検証された認証情報をシステムからシステムへと受け渡す。ゼロトラスト環境における使いやすいユーザーエクスペリエンスでは、単一のユーザーIDとユーザーの認証情報を検証する単一のエントリーポイント、組織のシステムを出入りするログが重視される。

  • 多要素認証

 信用された端末、ハードウェアセキュリティキー、生体認証、行動分析、位置情報、時間ベースの制限といった全てを組み合わせ、ユーザーの身元を確認するために複数要素で構成される「プロファイル」を構築できる。全ユーザーの検証が必須になれば、単一要素に依存するという選択肢はなくなる。

出典:Fieldfisherのジェームズ・ウォルシュ氏、ロブ・グランネルズ氏