2006年のCIOの最優先事項は、戦略的ITによって競争上の優勢を確保することだ。それと同時に、CIOはセキュリティプロセスを次なるレベルに引き上げる必要が出てくるだろう。問題となるのは資金繰りだ……
2005年、CIOは導入済みの技術を最大限に活用し、最高のサービスを提供するために1年を費やした。では、今年CIOがすべきことは何なのだろう?
2006年のCIOの最優先事項は明らかだ。戦略的ITによって競争上の優勢を確保することだ。ITは配備するだけでは十分ではない。ITは鋭いビジネス力を必要としている。それと同時に、CIOはセキュリティプロセスを次なるレベルに引き上げる必要が出てくるだろう。
米調査会社ガートナーのグループ副社長マクドナルド氏は、「重要なのは、2006年には、ITはこれまでよりも対外的な側面にフォーカスしたものになるということだ」と語る。米調査会社フォレスターリサーチの副社長兼主任アナリスト、オルロフ氏は、2006年にはITスタッフは技術を顧客サービスとして見直さなければならないだろうと指摘する。そして「2006年には、CIOは単なる情報セキュリティではなく、エンタープライズリスク管理(ERM)に、より多くの関心を向けることになるだろう」という。
バイラムヘルスケアセンターズ、ミューザック、ハーバード大学大学院ではそうした計画だという。それぞれの各CIOに話を聞いた。
不毛にも思えるほどの時間をかけて徹底的なコスト削減を図ったと思ったら、今度はコンプライアンスのコストが生じ、その対応に多くの予算が割かれた。
そして、ようやくコストの締め付けが緩和された2005年、賢明なCIOたちは、既に導入済みの技術を最大限に活用し、最高のサービスを提供するために1年を費やした。では、今年CIOがすべきことは何なのだろう?
2006年のCIOの最優先事項は明らかだ。戦略的ITにより、競争上の優勢を確保することだ。ITは配備するだけでは十分ではない。ITは鋭いビジネス力を必要としている。それと同時に、CIOはセキュリティプロセスを次なるレベルに引き上げる必要が出てくるだろう。
当然ながら、問題となるのは資金繰りだ。
IT予算は成長フェーズに戻っているが、その成長率は昨年の平均が2.5〜3%と、ささやかなものだ。米調査会社ガートナーのグループ副社長マーク・マクドナルド氏は、「2006年には、CIOは大きな先行投資なしでビジネス成果を生み出さなければならない」と指摘している。
では、どのようにすればいいのだろう? マクドナルド氏によれば、顧客を集め、顧客との関係を保持、成長させるための能力を強化すべく、各種のプロセスや情報を活用すればいい。「重要なのは、2006年には、ITはこれまでよりも対外的な側面にフォーカスしたものになるということだ」と同氏。
米調査会社フォレスターリサーチの副社長兼主任アナリスト、ローリー・オルロフ氏は、2006年にはITスタッフは技術を顧客サービスとして見直さなければならないだろうと指摘している。「例えば、顧客への請求書作成の一元化といったことだ。米通信大手のベライゾンはこの取り組みを熱心に進めており、顧客は複数の請求書を処理するために16種類ものフリーダイヤルに電話しなくて済むようになっている」と同氏。
当然ながら、最良の計画の遂行に際しては、マクロ経済のトレンドに妨害されないことが必要だ。マクドナルド氏は障害の可能性として、以下の点を挙げている。エネルギー費の高騰、利率の高まり、テロ攻撃、そして鳥インフルエンザの脅威だ。だが、たとえ鳥インフルエンザの世界的流行が起きないにせよ、新たなビジネスニーズを背負ったCIOは2006年に新たな脅威に直面することになるだろう。それは、皆が攻撃側にばかり付いてしまったら、誰が防御側に立つのだろうという点だ。
「2006年には、CIOは単なる情報セキュリティではなく、エンタープライズリスク管理(ERM)に、より多くの関心を向けることになるだろう」とオルロフ氏。エンタープライズリスク管理には、情報セキュリティのほか、法令遵守、知的所有権をめぐる問題も含まれる。
バイラムヘルスケアセンターズのCIO、リチャード・エントラップ氏は、そうしたCIOの一例だ。同社は一般家庭向けに医薬品と医療サービスを提供している2億ドル規模の企業。エントラップ氏は昨年、大半の時間をHIPAA(Health Insurance Portability and Accountability Act:医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律)への遵守に費やしたという。同氏は現在、脆弱性管理企業プリベントシスの“極上の”リスク管理製品を検討している。この製品を導入すればセキュリティの問題を、より先を見越して解消できることになる。「これはルールベースのセキュリティだ。単にポートやIPといった技術面を扱うのではなく、ビジネスポリシーを考慮に入れ、それを英語で定義したり、必要なセキュリティをより高速に適用したりできる」と同氏。
エントラップ氏によれば、さらにエキサイティングなことに、同社はリアルタイムポータルのプロジェクトにも着手している。同社は現在、ビジネスデータを24時間ごとに更新している。「われわれは現在、リアルタイムポータルを構築中だ。これにより、マネジャーは製品ごと、支払い者ごと、販売担当者ごとに在庫の状況を確認できるようになる」とエントラップ氏。BIツールベンダー、コグノス傘下のデータビーコンのWebベースの分析ソフトを選択したという同氏は、「こうしたビジネスインテリジェンス(BI)ツールは信じがたいほどの機能を実行してくれる。なにしろ、まず状況を測定しないことには、管理などできない」と語っている。
環境音楽のディストリビューター、ミューザックのIT担当副社長デイブ・トンプソン氏もBIプロジェクトに着手している。同氏の部門では、従業員がアプリケーションや情報にアクセスできるよう、Microsoft SharePointを使ってワンストップのイントラネットポータルを構築中だ。「販売員はポータルにログオンして、経常売上高のデジタルダッシュボードにアクセスし、製品に関する情報を見つけたり、販売キャンペーンを確認したり、取引の競争的分析を確認したりなど、いろいろな作業を行える」とトンプソン氏は語っている。
またトンプソン氏は、資金を投じることで結果的にはコスト削減につなげたい考えだ。「25〜30台のサーバを半ラックに統合する予定だ。そうすれば、管理が容易になり、障害点も減らせる」と同氏。それにより、自分がCFOとビジネスを進める方法も変わるだろう、とトンプソン氏は語っている。「CFOにストレージアレイを1台追加するためにさらに15万ドル必要だと伝える代わりに、例えば、自分で4万ドルまで予算を下げられる。何が頻繁に使われ、何が全く使われていないのかをソフトウェアが教えてくれるからだ」と同氏。
ハーバード大学大学院経営学研究科のCIO、ジュディ・スタール氏によると、同校では2006年はCRMに注力する方針という。「あるプロジェクトでは、当校のすべての事業部門にCRMライクな機能性を提供するための企業情報システムを作成するほか、当校がパートナー関係にある組織についての情報を簡単に検索し、見つけられるようにする予定だ」と同氏は説明している。
「このプロジェクトを完全に実装し、正しく稼働させるまでには数年はかかるだろう。この種のシステムのメリットを当校の教員やスタッフに体験してもらえるよう、彼ら向けの具体的な配布物に注意を払う必要がある」と同氏は語っている。
(この記事は2005年12月22日に掲載されたものを翻訳しました。)
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