PART1ではROIがどの分野で実現されるのかについて述べたが、PART2では、投資からどのような利益を期待できるのか、そしてプロジェクト完了後にROIを測定する方法について詳しく説明する。
どのようなITプロジェクトでも経営陣から自動的にゴーサインがもらえるような時代は、もはや遠い過去のことである。今日では、ITプロジェクトに対して投資に見合う利益を上げることが求められている。どんなプロジェクトであれ、そのROI(投資対効果)がどこで実現されるのか、そしてその技術からどれだけのROIを期待できるのかを明確に示す必要があるのだ。
「SOAからROIを得る方法 PART1」では企業がWebサービスからROIを得られる主要な分野について説明した。PART2では、前回の内容を念頭に置いた上で、どのようなROIを実現できるのかを予測する方法、そしてプロジェクト完了後に実際のROIを算定する方法について説明する。
PART2では、果てしなく続き、企業の成長とともに規模が拡大するITプロジェクトの価値を重役たちに理解してもらうために、SOAへの投資で得られる利益を測定する方法についてアドバイスする。
もちろん、実際に配備する前にプロジェクトのROIを正確に知る方法は存在しない。これは一種のジレンマである。投資対効果を証明することができなければ、プロジェクトの予算を獲得できないかもしれないが、配備してから何カ月あるいは何年か経過しなければ投資対効果を測定することはできないのである。
おそらく最も良い方法は、他社がWebサービス/SOAプロジェクトでどのようなROIを得たのかを調べてみることであろう。
IBMグローバルサービシズでWebサービスとSOAを担当するマイケル・リーボー副社長は、「当社の顧客の多くは、非常に短期間で驚異的なROIを実現した」と話す。
同氏によると、キーポイントとなるのは、プロジェクトを慎重に選ぶことだという。特定のビジネスプロセスに焦点を合わせ、その問題を解決するというのが最善のアプローチである。「そうすれば、非常に大きなROIを期待することができる」と同氏は話す。
リーボー氏は具体的な社名を明らかにしなかったものの、2社の企業のWebサービス/SOAプロジェクトについて語ってくれた。
ある大手クレジットカード会社では、Webサービス/SOAプロジェクトを立ち上げ、その成果として、以前は30日以上掛かっていた請求書発行サイクルを30日以下に短縮することができた。同氏によると、このプロジェクトの投資利益は3カ月間で数億ドルに上ったという。
ある通信会社では、請求書発行システムが一元化されていないため、利用状況を追跡したり、使用量と請求金額を照合するのが難しいという問題を抱えていた。この会社は、多様なシステムを単一の統合システムにリンクするためのSOAプロジェクトを立ち上げた。その結果、最初の1年間で5億ドルのコスト削減を達成したという。
リーボー氏によると、IBM自身もWebサービス/SOAプロジェクトで成果を上げており、ROIを注意深く調べたところ、非常に大きな投資効果が実現されたことが分かったという。IBMは、ビジネスパートナーとのトランザクションのためのリンクを提供するコンフィギュレーションエンジンに、使いやすいWebサービスフロントエンドを追加するプロジェクトに5万ドルの資金を投じた。このエンジンは、トランザクションの際に注文をチェックした上で、取引を承認する。導入後最初の3カ月で、トランザクションエラーの割合が3%から1%に減少したという。また、このフロントエンドは非常に使いやすかったため、システムの利用率が注文全体の5%から90%へと上昇した。その結果、5万ドルの投資に対して年間数百万ドルのコスト削減がもたらされた。
リーボー氏も認めるように、これらの数字は、並外れて優れたROIの部類に属するものであることは確かだ。また、企業は注意深くプロジェクトを選ぶ必要があるという。「特定のビジネスプロセスを選び、それを改善することを目的としたプロジェクトが、最も直接的かつ明確な形で最大のROIをもたらす」と同氏は強調する。このことを前提とすれば、一般的には、Webサービス/ROIプロジェクトから20~30%のコスト削減を期待することができ、投資回収期間は1年以内だという。
「数カ月でプロジェクトを立ち上げることができ、ビジネス上のメリットの実現と投資の回収には1年もかからない。つまり、これは資金的に自立したモデルなのだ」(リーボー氏)
リーボー氏によると、資金的に自立したモデルであるので、事前にROIを証明するのは簡単なはずだという。しかし現実は往々にして、言うは易く行うは難しである。ザップシンクの上席アナリスト、ロン・シュメルツァー氏は、「非常に小さなプロジェクトでスタートし、そのROIを測定した上でプロジェクトを拡張すればいいのだ」とアドバイスする。
「最初の規模が小さければ小さいほど、ROIを測定しやすい」と同氏は主張する。「最も規模が小さく、粒度が細かいサービスからスタートし、そのROIを測定すればいい。例えば、データベースから適切な情報を引き出すといったことを目的とした小規模で単純なものであっても構わない。これほど単純なプロジェクトであっても、それなりのROIが得られるはずだからだ」
この場合、単純で測定可能なサービスを対象とすること。プロジェクトを立ち上げた後で、その成果を監視・測定し、ROIを算出する。さらに同氏は、例えば小規模なポータルなどのプロジェクトの場合、事前にROIを予測し、それを実際のROIと比較することを勧めている。これは将来的に、ROIを事前に予測するための練習にもなるという。
「最初のプロジェクトをベースにして、複数の小規模プロジェクトで同じことをすればいい」と同氏はアドバイスする。もちろん、最初のプロジェクトでROIが得られればの話である。ROIが得られなかった場合でも、単独の小規模なプロジェクトであるので、失うものは少ない。最初のプロジェクトでROIが得られた場合には、プロジェクトを増やしていき、さらにプロジェクトの大規模化を進めていくことにより、より大きな利益を生み出すことができる。
IBMのリーボー氏は、ROIの測定を推奨しながらも、「最初からROIだけに照準を合わせると、大きな利益を逃す恐れがある」と警告する。ROIプロジェクトを策定し、社内の指揮系統を通じて了解を取り付けるのには、長い時間がかかることがあるからだ。同氏によると、プロジェクトを何カ月も先延ばしするよりも、とにかくプロジェクトを進める方がはるかに時間の節約になるという。
では、WebサービスやSOAが大きな投資効果をもたらすのが分かっているのだが、社内の官僚機構の承認プロセスに時間を取られたくないという場合は、どうすればいいのだろうか。
「どんな企業でも、予算の一部は研究開発のためだけに割り当てられているはずだ。予算の80~85%が固定されていたとしても、たいていの企業では予算の10%は研究開発のために使える。研究開発予算という枠内であれば、通常は支出内容に関して経営陣の承認を求める必要がない。そのお金を使えばいいのだ。ROIは後から付いてくる」(同氏)
本稿筆者のプレストン・グララ氏はWebサービスの専門家で、「How the Internet Works」など20冊余りの著作がある。
(この記事は2005年4月26日に掲載されたものを翻訳しました。)
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