2006年06月06日 09時25分 公開
特集/連載

公式ブログの功罪――求められる公開性Column

現在、マイクロソフトでは2000人以上の社員がブログを記している。企業に新たなオープンネスが根を下ろしつつあることの証と言えるだろう。

[TechTarget]

 2006年4月、米マイクロソフトのあるWebサイトに次のようなコメントが掲載された。「マイクロソフトは悪であり、Linuxは未来への道だ。マイクロソフトがこの素晴らしいコア技術を悪用し、彼らのろくでもないGUIと忌まわしいDirect X技術でLinuxを膨張させたとしても驚きではない」

 この新しいサイトには、こうした内容のコメントが多数掲載され、1週間あまりで400件ほどのコメントが書き込まれた。その大半はLinuxの熱心な支持者によるものだった。

 こうした批判コメントを歓迎する企業は、あまりないだろう。ましてや、それを公開するとなればなおさらだ。マイクロソフトがそうした批判的なコメントを公開したという事実は、現在、企業の間で新たなオープンネス(公開性)が根を下ろしつつあることの証と言えるだろう。この新たなオープンネスは、もはや論争や批判、過失から身を隠すわけにはいかないのだから、それを認め、議論を戦わせた方がいいとの考え方に基づいている。

 同社は従業員に対し、外部に情報を閉ざす代わりに、外に出て、顧客とかかわるよう通達した。同社はブログサイトを開設し、従業員に対話を奨励した。現在、マイクロソフトでは2000人以上の社員がブログを記しているが、その結果として同社が損害賠償を求められたケースはまだ1つもないという。

 2006年4月、米マイクロソフトのあるWebサイトに次のようなコメントが掲載された。「マイクロソフトは悪であり、Linuxは未来への道だ。マイクロソフトがこの素晴らしいコア技術を悪用し、彼らのろくでもないGUIと忌まわしいDirect X技術でLinuxを膨張させたとしても驚きではない」

 この新しいサイトには、こうした内容のコメントが多数掲載され、1週間あまりで400件ほどのコメントが書き込まれた。その大半はLinuxの熱心な支持者によるものだった。彼らは、マイクロソフトがオープンソース関連のブログとして新設したPort25.technet.comを訪れ、同社の各種製品や戦略を無遠慮な言葉で罵倒していった。

 こうした批判コメントを歓迎する企業は、あまりないだろう。ましてや、それを公開するとなればなおさらだ。マイクロソフトがそうした批判的なコメントを公開したという事実は、現在、企業の間で新たなオープンネス(公開性)が根を下ろしつつあることの証と言えるだろう。それは、標準やソースコードに関するオープンネスではなく、情報に関するオープンネスだ。この新たなオープンネスは、もはや論争や批判、過失から身を隠すわけにはいかないのだから、それを認め、議論を戦わせた方がいいとの考え方に基づいている。

 マイクロソフトはこうした新しい考え方の顕著な一例だ。同社は3年前、欧州と北米における政府当局との激烈な独禁法訴訟の痛手から立ち直ろうとしていた。訴訟に伴うマイナスイメージから、マイクロソフトはマスコミの格好のターゲットとなり、顧客の間でも、自分たちがマイクロソフトと取引したのは、そうせざるを得なかったからだと認める向きが増えていっていた。

 世間一般では、包囲網にかけられた独占企業は身を潜め、発言をできるだけ控えるべきとされている。1980年代のIBMのことを覚えている人には、私の言っている意味がお分かりだろう。IBMは当時、非常に厳しく情報を統制しており、かつては私もIBMのPR担当者と「announce」という言葉の定義をめぐり1時間も議論したことがある。

 マイクロソフトの取った行動はまさにその正反対だった。同社は従業員に対し、外部に情報を閉ざす代わりに、外に出て、顧客とかかわるよう通達した。同社はブログサイトを開設し、従業員に対話を奨励した。さらに同社は高名なブロガーであるロバート・スコーブル氏を雇い入れ、ユーザーコミュニティーにおける“マイクロソフトの顔”とした。Economist誌は昨年の人物紹介において、スコーブル氏を「チーフ・ヒューマナイジング・オフィサー」と評した。現在、マイクロソフトでは2000人以上の社員がブログを記しているが、その結果として同社が損害賠償を求められたケースはまだ1つもないという。

 もちろん、こうしたレベルまでオープンネスを高めているのはマイクロソフトだけではない。多くのIT企業はブログをサポートしており、その慣行は非技術系の業界にも浸透し始めている。だが、失うかもしれないものが非常に多かったという意味で、マイクロソフトの行動は特に注目に値する。もっとも、競合他社や政府当局はまだこの魅力的なターゲットを標的にはしていない。

 当然ながら、すべての企業がこうしたオープンな世界に適しているわけではない。厳しい階層制のある企業や、法的な機密情報を大量に抱える企業などの場合、いわゆる「ソーシャルメディア」については慎重に振舞うべきだ。ソーシャルメディアとは、ブログ、ポッドキャストなど、ユーザーが発行するコンテンツのことだ。専門家によれば、実際、ブログの世界では、マーケティングトークや情報操作が益よりもむしろ害となるケースもある。

 だが、自社の従業員の才覚と創造性を披露したい企業は、この新しいツールを「十分に活用されずにいる社員の才能を公開するための方法」ととらえるべきだ。

 ソーシャルメディアはITマネジャーにとって、自社に新たな価値を創設するためのチャンスとなり得る。ブログは基本的には、パーソナルパブリッシングプラットフォームであり、効率的な運営にはコンテンツ管理スキルが必要となる。発行が簡単であることが必要なだけでなく、企業は多様な配信サービスや検索エンジンサービスを介してコンテンツを促進し、人目にさらす必要がある。また、自社が法的責任や世間の嘲笑にさらされないようにするために考慮すべき手続き上の問題や政策上の問題も山積みだ。

 だが、経営陣に対して謙虚で快活で受容的であるよう説得できれば、努力の成果を望めるはずだ。あなたは、マーケティングのヒーローになれるかもしれない。マイクロソフトのブログ運営者らも、4月第1週にPort25フォーラムに掲載された容赦ないコメントに対し、根気よく、前向きに対応したところ、その後、対話の内容はより積極的で建設的なものへと変わっていった。考えてみれば、マイクロソフトにとって、これほど多数のアドバイスを、これほど少ないコストで、これほどの短期間に集められる手段がほかにあるだろうか?

本稿筆者のポール・ギリン氏は独立系のマーケティングコンサルタントで、TechTargetの初代編集長。Webサイトはwww.gillin.com。

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