中堅企業でもITを導入して成功した事例は少なくない。だがその成功が環境改善に貢献するとしたら――。IBMが考える「スマート」な世界では中堅企業がビジネスチャンスをつかみ、ひいては世界的な問題を改善できるという。
九州、中国、関東地域で45店舗のディスカウントストアを展開するミスターマックス。同社は2009年8月、全店舗にIBMの自動発注システムを導入した。
同社では、1店舗当たり数万アイテムもの膨大な種類の商品を扱っている。新たに導入したシステムでは、それらの商品や売り場の情報を一元管理し、高精度な需要予測と自動発注を実現した。その結果、取引先から店舗までのトータル在庫を10%以上削減し、商品欠品率も50%の削減を達成した。
中堅企業におけるITの導入事例としては、大成功といってもいいだろう。しかしIBMでは、これを単なる業務改善の成功例としてではなく、「スマートな小売業」が実現された画期的な事例だとしている。
ところで、IBMが言う「スマートな」小売業とは、一体どういう意味なのだろうか? ミスターマックスの事例でいえば、全社的な業務効率化を実現した結果、在庫や欠品率の低下はもちろんのこと、顧客に対するサービスレベルが向上したり、商品価格がリーズナブルになったことも、ビジネスの「スマート化」の成果なのだという。さらに言えば、無駄な発注や在庫が減ってトラック輸送が減ることも、渋滞の緩和や地球温暖化防止に貢献するという意味で、地球全体のスマート化につながるのだという。
「地球温暖化」「都市問題」などという大きなスケールの話になると、これがITによる業務効率化とどう結び付くのか、正直ピンと来ない方がほとんどだろう。「環境問題や都市問題といった話は、政府や大企業が考えること。中堅企業には関係ない」。こう考えるのが普通だ。しかしIBMによれば、ビジネスを「スマート化」することは、中堅企業が今後市場で勝ち残り、さらにビジネスを発展させていくためには極めて重要なのだという。
一体、IBMが提唱する中堅企業のスマート化、そして地球のスマート化とは、どのようなコンセプトなのだろうか? そしてそれは、中堅企業の経営やIT戦略に、具体的にどのような影響を及ぼすのだろうか? 以降で詳しく見ていくことにしよう。
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