2010年はどのような年だったのでしょう。今月の月刊IFRSフォーラムでは2010年のニュース記事、解説記事のランキングをお送りします。ニュース記事では公認会計士の資格制度、IFRS任意適用に関する記事などが広く読まれました。解説記事では特定の会計基準が注目を集めました。
今回は2010年もあとわずか。今回の月刊IFRSフォーラムでは、2010年に掲載したニュース記事の年間ランキングで、今年の会計・監査業界を振り返ってみたいと思います。2010年はIFRSを任意適用し、初めて報告する企業が現れるなど、後年から見ると歴史的な年だったといえるでしょう。公認会計士のキャリアについても揺れ続けた年でした。
年間ニュース記事ランキング(2010年1月から11月末までのニュース記事のページビューを集計)の第1位は公認会計士の今後についての記事でした。
1位:最短で2014年試験から、「財務会計士」は競争力を持つか
公認会計士資格試験に合格しても監査法人に就職できず、会計士になれないという就職難民問題の解消を目的に、金融庁は2009年末に「公認会計士制度に関する懇談会」を立ち上げました。有識者らが半年以上、試験制度の見直しを中心に話し合いました。しかし、それぞれの思惑が入り交じり、議論は迷走しました。
7月末に資格試験の受験要件に実務経験を追加する、公認会計士になるまでの途中段階で資格を与えて一般企業などへの就職をしやすくするなどを柱とする新しい資格制度についての中間報告を出しました。この中間報告については反対する意見が多数寄せられているといい、金融庁は今後の対応に苦慮しているようです。2011年の年初には新たな動きがあるとも見られていますが、日本公認会計士協会や産業界、教育界、そして受験者との意識の溝は依然として深く、意見の集約は難しそうです。
2位:米国公認会計士試験が日本国内で受験可能に、2011年春から
2位も会計士のキャリアについての記事でした。日本の会計士ではなく、米国公認会計士についてです。これまで米国内でしか受験ができなかった米国公認会計士資格試験が日本国内でも受験可能になることを伝える記事です。各国の公認会計士資格については覇権争いが始まっています。米国が上記のように日本を含む世界各国で受験を可能にし、英国の会計士資格も世界展開を強化しています。会計基準がIFRSで共通化される中で、会計士資格についてもグローバルな競争が始まっていると言ってよいでしょう。米国、英国など英語圏の会計士資格は世界展開でやはり有利といえ、日本での受験者数の推移が注目されます。
11月12日に発生した電子開示システム「EDINET」の障害についてです。3月決算の企業の多くは11月12日に第2四半期報告書を提出しようとしていました。金融庁ではその提出が集中したことで、通信の混雑が発生したとしています。ただ、あまりにも長時間にわたって障害が続いたことから、通信混雑以外の要因を指摘する声もあります。金融庁は通常、午後5時15分までのEDINET受付時間を当日の午後11時まで延長するなど異例の対応を取りました。また、提出書類の修正をしなくて済むように12日付けの書類を15日に提出することを認めました。
日本で初めてIFRSを任意適用した日本電波工業の決算発表を伝える記事です。日本電波工業は2002年3月から英文のアニュアルレポートにIFRSを適用するなど、IFRSの先進企業。初度適用を行っていないなど、これからIFRSを任意適用する企業とは多少事情が異なりますが、初の任意適用企業として日本の会計の歴史に名を残すでしょう。同社については、インタビュー記事(日本電波工業「IFRSを適用しない理由はない」)も掲載。また、有価証券報告書の提出後は、その解説記事(「日本電波工業の有価証券報告書を読む」)も載せました。2011年には住友商事もIFRSベースの有価証券報告書を公表する予定です。
5位:米国のIFRS適用は2015年以降に後ろ倒し、SECが声明文
米国のIFRS適用についての記事です。決めていた任意適用を撤回し、IFRSを適用するにしても2015年以降にするとの内容で、米国の姿勢が後退したとの指摘もありました。しかし、IFRSを適用するためにどのようなステップが必要かを明確にする作業を行うとしており、IFRSに向かう姿勢がより強固になったと指摘する声もあります。
また、IASB(国際会計基準審議会)と米国のFASB(財務会計基準審議会)は、IFRSと米国会計基準のコンバージェンス作業を進めています。当初は2011年6月までに予定していたすべての項目を終了させることを目指していましたが、一部の項目を2011年6月以降に延期すると2010年6月に発表しました(「IFRSと米国基準のコンバージェンス完了、2011年後半に延期」)。米国のSEC(証券取引委員会)はこのようなコンバージェンスの動きも見ながらIFRS適用を慎重に検討すると見られます。
以下は10位までの記事タイトルを紹介しましょう。
以下はIFRSフォーラムの解説記事の年間ランキングです。入門記事がやはり多く読まれていますが、その中で特定の基準に関連する記事も読まれていることが分かります。2011年には多くの企業でIFRS適用プロジェクトが本格化します。今後は特定の会計基準、またはプロジェクトの特定フェーズに関する記事も注目を集めるでしょう。
それではまた来月、お会いしましょう!
次世代生成AIで優位に立つのはMeta? Google? それともマスク氏のあの会社?
生成AI時代において、データは新たな金と言える。より人間らしい反応ができるようになる...
GoogleからTikTokへ 「検索」の主役が交代する日(無料eBook)
若年層はGoogle検索ではなくTikTokやInstagramを使って商品を探す傾向が強まっているとい...
B2B企業の市場開拓で検討すべきプロセスを定義 デジタルマーケティング研究機構がモデル公開
日本アドバタイザーズ協会 デジタルマーケティング研究機構は、B2B企業が新製品やサービ...