企業のIT投資が横ばいの中、急成長するERPがある。何がエンドユーザーを引きつけるのか。プリセールスの現場を担う営業担当者が本音を話した。
長引く経済不況の影響を受け、企業ではITコストの削減が大きな課題となっている。これに伴い、多くのERPパッケージベンダーが販売拡大に向けて苦戦を強いられているのが現状だ。こうした市場背景の中、好調に売り上げを伸ばしているのが日本マイクロソフトのERPパッケージ「Microsoft Dynamics AX」(以下、Dynamics AX)である。
Dynamics AXは、会計管理からサプライチェーン管理、生産管理、人事管理、プロジェクト会計などまで、基本的な業務領域を包括的にカバー。また、基本的な業務機能に加え、業種別ソリューションも用意しており、顧客のニーズにきめ細かく対応することも可能だ。さらに柔軟なカスタマイズやグローバル展開にも対応しているため、最近では、グローバル展開する大手企業からの引き合いも増えつつあるという。
Dynamics AX急成長の秘密は何なのか? 販売パートナーの中でもトップクラスの実績を持つ4社に、プリセールスの現場から本音を語ってもらった。
――厳しい経済環境が続き、各社ERP製品の売り上げが伸び悩む中で、日本マイクロソフトのERPパッケージ「Microsoft Dynamics AX」(以下、Dynamics AX)は、2010年度、売り上げベースで対前年度比210%という大幅成長を達成しました。プリセールスの現場ではDynamics AXの引き合いはどう変化していますか。
氏名 | 企業名 | 所属 |
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嘉部 誠氏 | 横河ソリューションズ株式会社 | 情報エンジニアリング第1事業部 営業部1Gr シニアコンサルタント |
山下善秀氏 | 日本電気株式会社 | 第一製造業ソリューション事業部 電機・ハイテクソリューショングループ マネージャー |
山足善文氏 | シャープシステムプロダクト株式会社 | ビジネスシステム事業統轄部 第五営業部 課長 |
松本一宏氏 | テクトラジャパン | セールスマネージャー |
【司会】川崎嘉久氏 | 日本マイクロソフト株式会社 | Dynamicsビジネス本部 ERPソリューション推進部 部長 |
嘉部氏 横河ソリューションズへのDynamics AXの引き合い案件は、自社営業によるバーティカルインダストリー(プロセス製造業)案件と日本マイクロソフトからのグローバル案件がほぼ半分ずつとなっています。Dynamics AXは、発売当初から販売を手掛けてきましたが、特に2010年は売り上げ、件数ともに大きく拡大し、社内リソースを急きょ補充して導入プロジェクトを推進しています。弊社は製造業のお客さまへの導入実績が一番豊富ですが、製造業のお客さまの中には国内拠点への導入後に海外拠点へ導入することも既に予定に入れている企業もあり、グローバル展開に最適なERPとしてDynamics AXの評価は非常に高いと思います。
山下氏 NECでは、顧客ニーズに応じて最適なERPパッケージを提案しています。2010年は、Dynamics AXの引き合い案件から大規模なシステム構築商談を獲得した実績を挙げています。2011年に入ってからも、Dynamics AXの知名度向上や日本マイクロソフトから引き継いだ引き合い案件の拡大などにより、Dynamics AXの商談はさらに増加しています。特に大手製造業を中心に、コンプライアンス強化に向けて海外各地の販売拠点に個別導入されている業務システムを統合したいというニーズが高まっています。この案件に対してグローバル対応で実績を持つDynamics AXを積極提案するという商談パターンが確立しつつあります。
山足氏 2007年からDynamics AXの販売を手掛けていますが、販売当初は知名度が低かったため、「体験セミナー」を通じていかにこのプロダクトが優れているかをアピールすることに重点を置いていました。現在は、知名度の拡大に伴ってセミナー参加者は年々増加しています。最近ではメインターゲットである中堅企業だけでなく、大手企業からも注目を集めるようになってきたと感じています。
松本氏 テクトラジャパンは、リテールと製造業をターゲットに、グローバル市場でDynamics AXを積極提案しています。日本市場では特にリテール向けの販売に注力しており、ここ数年で国内企業のグローバル化の進展とともに市場ニーズが高まってきています。例えば、国内企業が海外企業を買収し、ガバナンス統制のために各海外拠点の業務システムを統合するといったケースでDynamics AXの引き合いが増加しています。
――Dynamics AXの商談活動を進めるに当たって、他社ERPパッケージと比較してDynamics AXの優位性や差別化ポイントはどこにありますか。
嘉部氏 競合の相手によっても差別化ポイントは変わってきます。大規模ERPパッケージと比較した場合は、やはり導入コストの安さが大きな差別化ポイントになります。例えば、国内で多くのシェアを持つ海外大手ERPパッケージと比べると、導入コストは億(円)の単位で変わってきます。ランニングコストについても、バージョンアップのコストや日々の運用に必要なリソースを考えると、Dynamics AXとは大きな差が出てくるはずです。一方、国産ERPパッケージとの競合では導入コストは同等の勝負になりますが、統合性や操作性、カスタマイズ性に優れている点でDynamics AXが高い評価を得ています。これらの点は、運用コストにかかわってくるため、TCO削減につながることも大きなメリットになっています。
山下氏 NECではグローバル展開する企業を中心にDynamics AXを提案しているため、競合となるのは海外製ERPパッケージがほとんどです。そして、その際の差別化ポイントとなるのが、ライセンス価格の安さと開発基盤の柔軟性です。例えば、海外製ERPパッケージでは、受注入力画面の一部を変更するために、画面を全て作り直さなければならないケースがあります。Dynamics AXでは、充実した統合開発環境によって、ちょっとしたコードの修正であれば簡単に追加開発できるので、メンテナンスコストを大幅に削減できます。
山足氏 私の場合、海外大手ERPパッケージとDynamics AXでは、プリセールスのやり方が全く異なっています。海外大手ERPパッケージは、データが重すぎて顧客先でデモ画面を見せることが難しいので、プレゼンテーション資料による提案に頼らざるを得ません。その一方で、Dynamics AXであれば、顧客先で実際に動いているデモ画面を見せながら、優れた操作性やカスタマイズ性をアピールできます。また、Dynamics AXは、簡単な改善点であればリアルタイムに修正対応し、その場で結果を見せることができます。これによって、自分たちでも容易にカスタマイズが行えることを顧客に実感してもらえます。これは大きなメリットです。
もう1つ、Dynamics AXの差別化ポイントとして挙げておきたいのが、「ビジネスインテリジェンス(BI)」機能を標準で備えている点です。通常、ERPパッケージでは、BIシステムを導入するために別途、多大な工数とコストが必要となります。Dynamics AXは、単なるERPの基本機能だけでなく、BI機能まで含めてソリューションを提案できます。これはDynamics AXならではの大きな強みです。
松本氏 グローバル展開を目指す国内企業にとって、海外拠点にDynamics AXを導入することによるコストメリットは大きな差別化ポイントになります。特に本社で大規模ERPパッケージを利用している場合、同じシステムを小規模の海外拠点に導入するのはコストが掛かり過ぎるといえます。Dynamics AXであれば、コストを抑えながら言語が異なる海外拠点の業務システムを統合管理することが可能です。
また、Dynamics AXはMicrosoft製品との親和性が高く、使い慣れた「Microsoft Office」のインタフェースをベースにしているので、導入の際にエンドユーザーが一から操作方法を学ぶ必要がありません。さらにユーザーの操作画面をロールごとに使いやすく変更することもできます。こうした優れたユーザビリティを備えている点も、Dynamics AXの魅力の1つだと考えています。
――Dynamics AXの販売拡大に向けた今後の取り組みを教えてください。
嘉部氏 Dynamics AXの引き合いは、2011年以降もさらに増加していくことが見込まれているので、社内リソースの確保が急務の課題です。また、特定業種に特化した商談の受注拡大に向けて、日本の商習慣に対応した機能をさらに充実させていきたいと考えています。
山下氏 Dynamics AXの商談増加に対応するべく、2010年からDynamics AX向けのSE部隊を立ち上げ、社内リソースの強化に取り組んでいます。2011年は、この社内リソースを有効活用するためにも、Dynamics AXの商談を1件でも多く受注につなげていきたいですね。
山足氏 海外大手ERPパッケージを活用してきた大手企業が、ITコスト削減の要求が強まる中で、Dynamics AXの機能やコストメリットを評価し、リプレースを検討する動きも出始めています。そのような企業では、機能が盛りだくさんすぎて全ての機能を使いこなせていないようです。そこで、Dynamics AXと比較して、十分足りるということであれば、リプレースをした方が大きなコスト削減効果を得ることができるというわけです。こうした動きが、今後、大規模な商談成約へとつながっていくものと期待しています。
松本氏 テクトラジャパンでは今後、Dynamics AX単体の販売だけでなく、業種別ソリューション「Dynamics AX for リテール」との連携によって、リテールにかかわる業務をエンド・ツー・エンドでカバーする統合ソリューションの提案も積極的に進めていきます。これにより、国内リテール市場におけるDynamics AXのニーズをさらに開拓していきたいと考えています。
提供:日本マイクロソフト株式会社
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