いよいよ始まった電力の使用制限。事業活動に多大な影響を与えかねない状況の中、サーバ仮想化と電力の見える化による省電力対策が注目を集めている。
2011年7月、東京電力と東北電力管内における電力使用制限令がついに発動された。第1次石油危機以来37年ぶりの措置となるこの制限令では、大企業などの電力大口需要家に対して、夏季ピーク時の電力使用量を対前年同期比で15%削減することを義務付けている。政府は中小企業や家庭にも自主的な節電を要請するなど、東日本のみならず日本全体での省電力を呼び掛けている。
しかし、こうした電力使用制限は一過性のものではなく、2012年以降も続く可能性が高いという見方もある。中長期的な電力不足の問題が懸念される中、多くの企業や自治体のITシステムには「真に実効性がある省電力施策」が求められている。
そこで注目したいのが、IT環境の中で最も数多く利用されている「x86系サーバの省電力化」を進めるという日本アイ・ビー・エム(以下、日本IBM)の提案だ。同社は既存サーバの設定や構成変更、低消費電力型サーバへの移行でもかなりの省電力効果が見込めるとし、最も費用対効果が高い方法として「ヴイエムウェアの仮想化技術を活用したサーバ統合とその電力管理」を挙げている。
またサーバ仮想化の現状について、同社は「採用企業は増えてはいるが、仮想化本来のメリットを享受していないケースが多い」と分析している。仮想化の対象が一部のサーバに限られている場合、その低い統合率によってIT環境の管理が煩雑になる企業も存在するというのだ。
そうした課題の解決策として、日本IBMは「最新アーキテクチャとVMware vSphereを活用するサーバ統合によって、50〜80%の省電力効果が期待できる」と説明する。また「サーバやシステム全体の消費電力量の可視化や電力抑制機能の活用などで、さらに20%程度の消費電力量の改善が可能」という。
日本IBM x事業部 事業開発 アドバイザリーITスペシャリスト 岡田寛子氏は「IBMが長年培ってきた汎用機でのノウハウをx86サーバの開発に転用した技術『Enterprise X-Architecture』が、サーバ仮想化の統合率を改善する鍵」と説明する。同社は2010年、その第5世代となるeX5を発表している。
eX5搭載サーバは、ハイエンド向けサーバ「IBM System x3850 X5」(以下、x3850 X5)と、ブレードサーバ「IBM BladeCenter HX5」、ミッドレンジ向けサーバ「IBM System x3690 X5」が用意されている。
eX5の最大の強みは、同社独自のメモリ拡張ユニット「MAX5」(Memory Access for eX5)だ。32個のメモリスロットを備えるMAX5を接続することで、最大96個のメモリスロットを利用できる(64個のメモリスロットを搭載したx3850 X5の場合)。これは、仮想化を最大化する上で非常に重要な役割を担っている。
仮想化によってx86サーバの集約率を高め、CPUの利用効率を上げようとする際、メモリ容量の拡張性がボトルネックとなる。MAX5でメモリを拡張することでそのボトルネックを解消し、より多くの仮想マシンを1台の物理マシン上に統合する。結果的に、サーバ台数の削減による消費電力の抑制につながるわけだ。
また、多数の仮想マシンを集約することについて、仮想サーバ自体の安定性や耐障害性を気にする管理者もいるだろう。日本IBMとヴイエムウェアが連携したサーバ統合では、世界25万社の実績を持つVMware製品の高い可用性、堅牢性はもちろんのこと、「IBM System x」の事前障害予知(PFA)機能を引き継いだeX5がディスクやメモリ、プロセッサ、ファン、電源などの重要なコンポーネントの故障を事前に検知し、安定した運用の継続を支援する。さらに「Memory ProteXion」技術を併用することで、例えば2つのDRAMが完全に故障した状態でも稼働できるなど、システムの突然死リスクを抑制したサーバの集約を可能にしている。
岡田氏は「サーバの統合率を高めてより消費電力を削減するには、電力の使用状況を正しく把握し、その使用量を制限する効率的な管理が求められる」と話す。それを実現するのが、プラットフォーム管理ソフトウェア「IBM Systems Director」(以下、Systems Director)だ。
Systems Directorは、物理・仮想を問わずさまざまなシステム環境を一元的に管理するモジュールを標準搭載している。また、より高度なシステム管理機能を提供する各種プラグインを提供している。その中で、サーバの消費電力を統合的にモニタリングして制御するのが「IBM Systems Director Active Energy Manager」(以下、AEM)だ。
AEMは、対象機器の消費電力や温度などの情報をリアルタイムに計測して収集する。Webブラウザにその情報を表示し、システム状態の監視や分析などを実施できる。AEMは、IBM System xや「IBM BladeCenter」「IBM Power Systems」などとが持つ内部センサーと連携して情報を収集する。また、他社製サーバなどセンサーを持たない機器では、電力配分装置「iPDU」(Intelligent Power Distribution Unit)を介することで消費電力を電源プラグ単位で確認する。
さらにAEMでは、CPUのクロック信号を制御することで、設定した上限値以下まで消費電力を制限する「Power Capping」機能をオプションで利用できる。これはサーバ環境全体で計画的な消費電力を設定・管理する際に有効な機能だ。
さらに、岡田氏は「VMwareの仮想プラットフォームを組み合わせることで、より高度な電力やパフォーマンスの管理が可能だ」と強調する。eX5搭載サーバとVMwareの統合管理プラットフォーム「VMware vCenter Server」(以下、vCenter Server)、vCenter Server用AEMプラグイン「IBM Systems Director Active Energy Manager for vCenter Server」を連携することで、データセンターにおける仮想サーバの統合率を高めながら、統合的な電力管理を可能にするというのだ。
具体的には、vCenter Server上でAEMプラグインを実行し、サーバの消費電力や室温などの状況を評価し、vCenter ServerではCPUの使用率データなどをSystems Directorに提供する。Systems DirectorとvCenter Serverのどちらのコンソール画面でも詳細な情報を表示する。管理者が普段慣れ親しんでいる画面上でリアルタイムに情報を監視しながら、さまざまなポリシーや構成変更などを設定できる点が特徴である。
また、分散資源スケジューラー「VMware Distributed Resource Scheduler」(以下、DRS)を利用すると、VMware ESXのワークロードをリアルタイムに収集しながら、その状況に合わせて自動的にライブマイグレーション「vMotion」を実行できる。さらに、電源管理機能である「VMware Distributed Power Management」(以下、DPM)を有効にすることで、DRSクラスタ内のリソースを継続的に監視でき、ワークロードの統合や未使用サーバのパワーオフなども実行可能だ。
これらの機能を利用することで、仮想マシンの統合率を上げて物理サーバを集約し、全体的な電力消費量を削減できる。例えば、深夜や週末など余裕のある時間帯はDRSで自動的にvMotionを実行して仮想マシンを集約し、DPMによって仮想マシンが稼働しない物理マシンの電源をシャットダウンする。その後、ワークロードの負荷状況に応じて物理マシンの電源を投入し、vMotionで仮想マシンを最適に配置させてサービスを継続する。
岡田氏は「ヴイエムウェアの仮想化は仮想化技術の開発で長い実績を持ち、顧客企業の信頼が高い点もメリットの1つ。また、vMotionやVMware HA(冗長構成)、DRS、DPMといった管理機能が充実しており、AEMと連携することでそれらの機能をさらに有効活用できる」とそのメリットを挙げている。
2011年3月の東日本大震災は、多くの企業に災害復旧対策や事業継続の重要性をあらためて気付かせた。eX5によるサーバ統合では、仮想化の可搬性のメリットを生かしたディザスタリカバリ(災害復旧)サイトを遠隔地に構築することも可能だ。
企業は今後、節電や災害復旧、事業継続などの対策を中長期的に実施していかなければならない。日本IBMとヴイエムウェアの両社が連携したサーバ統合ソリューションは、そうした企業を力強くサポートするといえる。このソリューションが提供する価値を享受し、日本経済復活の先駆けとなる企業が増えることを期待したい。
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