V6プラットフォームはオープンソース型EV開発に適している――SIM-Drive 代表取締役社長 清水氏NEWS

ダッソー・システムズは、電気自動車開発事業を手掛けるSIM-Driveとの提携を発表。SIM-Driveだからこそ必要なオンラインコラボレーション環境を、V6で構築するという。

2011年09月12日 18時17分 公開
[原田美穂,TechTargetジャパン]

 ダッソー・システムズは2011年9月12日、大学発の電気自動車開発に関するベンチャー企業SIM-Driveとの長期提携契約の締結を発表した。

 SIM-Driveは、慶応義塾大学 環境情報学部教授で、電気自動車研究の第一人者である清水浩氏が代表を務めるベンチャー企業。同社は商用車生産・販売は行わず、広く参加企業を募って開発ノウハウを共有していく「オープンソース」型の電気自動車開発事業を展開している。@IT MONOist記事で紹介した通り、技術的には「インホイールモーター」と、「コンポーネントビルトイン式フレーム」を特徴とするプラットフォームを採用している(関連記事参照)。

 同社は、先行開発車事業、技術移転事業(先行開発車のノウハウや仕様を供与)、ターンキー事業(量産化支援)の3つの事業を軸としている。先行開発車事業は既に第2号がスタートしており、同日、第3号事業参加機関の募集も開始している。また、第1号については2014年にも量産化が見込まれている。

 「SIM-Driveの開発体制はオープンソース型であるため、参加機関全てに対して設計図面や評価情報などを共有する必要がある。このため、将来的には企業の枠組みを超えた情報共有が必要になる」(清水氏)ことが予想される。こうした同社ならではの事情もあり、V6プラットフォームが提供する「オンラインコラボレーション」機能を活用することに決定したという。

 「自動車業界ではもともとダッソー・システムズが提供する3次元CAD『CATIA』が多く使われていることから、参加機関に対しても大きな負担とならないと考える」(清水氏)

SIM-Drive 代表取締役社長 清水浩氏 SIM-Drive 代表取締役社長 清水 浩氏 「V6プラットフォームは30社を超える企業同士のコミュニケーションや、遠隔地とのやりとりに適している」

 清水研究室ではV4の時代からCATIAを使ってきたこともあり、SIM-Drive設立当初の2009年からV5プラットフォームをPLM基幹システムとして採用してきた。「先行開発車第2号事業から、徐々にV6への移行を進めている。V6にはV5にはないコラボレーション向けの機能が多数そろっていることがその理由」(清水氏)

 ここでのコラボレーション向け機能とは、ダッソー・システムズが得意とする、オープンなオンラインでの3次元図面を活用した共同作業のことを指す。


ダッソー・システムズ 代表取締役社長 末次朝彦氏 ダッソー・システムズ 代表取締役社長 末次朝彦氏 「ダッソー・システムズでは現在3次元図面をグローバル共通言語と見立てた『グローバルイノベーティブコラボレーション』をキーワードに製品開発を進めている。オープンソース型で複数企業と協力して開発を進めるSIM-Driveの方針はV6プラットフォームが提供するPLMビジョンにマッチしたもの」だという。

 下図に示すように、SIM-Driveの事業に参加する企業各社は、CATIAによる設計図面やそれを基に3次元シミュレーションソフトウェア「SIMLIA」を使った検証を行ったり、デジタルモックアップ検証ソフトウェア「DELMIA」によるDMU検証を行う。ライセンス自体は現段階ではSIM-Driveが提携しているため、同社内から参加する際にはSIM-Driveが持つライセンスで利用可能(参加企業が別途ライセンスを取得する必要はない)。外部からのレビュワーの接続は3次元ビュワー「3DLive」環境を活用する。量産化ステップでは、このネットワークにOEMメーカーや部品サプライヤも参加、ビュワーや、Webベースの3次元データ共有ツール「3DSWYM」などを介してデータアクセスを行う仕組みを構想している。

 「ダッソー・システムズが提供するPLMプラットフォーム(CATIAを中心としたV5~V6プラットフォーム)は、もともと自動車業界で広く使われているものでもあり、参加企業にとっても利点は大きい」(清水氏)

 両社では、まずは3年間の契約を締結、検証を進め、長期的な利用を目指していくとしている。また、当日は、SIM-Driveの先行開発車事業第3号の参加企業募集開始も発表された。

 「参加企業同士のオープンな議論の中でコンセプトを組み立てていくため、先行開発車事業第3号の詳細については今後決定する」(清水氏)という。

step1
step2
step3 開発から量産に至るまでのSIM-DriveにおけるV6プラットフォーム利用イメージ。実際には「現在V5から随時V6プラットフォームへの移行を進めているところ」(清水氏)であり、今後の事業進展に併せたコラボレーション環境の拡充を目指すとしている。ステップ3の量産体制では、OEMメーカーやサプライヤとの情報連携も視野に入れている

関連ホワイトペーパー

PLM | CAD


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

譁ー逹€繝帙Ρ繧、繝医�繝シ繝代�

製品資料 ServiceNow Japan合同会社

従業員満足度を高めて「優秀な人材」の定着率をアップさせる方法とは?

企業にとっては、いかに優秀な人材を確保するかが大きな課題となっている。そこで、AIとスキルインテリジェンスを活用することで従業員満足度を高め、定着率の向上、ビジネスの成長へとつなげていくための3つのステップを紹介する。

製品レビュー ServiceNow Japan合同会社

「迷路のような社内ポータル」から脱却、HR業務をセルフサービス化する秘訣

従業員にさまざまなサービスを提供するHR業務に、生成AIを導入する動きが加速している。生成AIは、HR業務が抱えている課題をどのように解決し、従業員エクスペリエンス(EX)の品質向上と組織全体の生産性向上に貢献するのだろうか。

事例 AJS株式会社

紙やExcelの運用から脱却し人事評価業務を効率化、事例に学ぶ人事制度の改善術

紙やExcelを用いた人事評価業務では、進捗管理やデータ集計に多大な労力がかかってしまう。そこで本資料では、評価ツールを導入することで、評価に関わるさまざまな作業を効率化することに成功した事例を紹介する。

市場調査・トレンド 株式会社マネーフォワード

「36協定」の締結/更新ガイド:基礎知識から手順、注意点まで社労士が解説

2019年4月から時間外労働の上限規制が労働基準法に規定され、特別条項付きの36協定を締結した場合でも厳守しなければならない、時間外労働の限度が定められた。本資料では、36協定における基礎知識から締結時の注意点まで詳しく解説する。

製品資料 株式会社マネーフォワード

社労士が解説、従業員の離職につながる「6つの原因」と防止メソッド

人手不足が深刻化する近年、新規採用や従業員教育にコストをかける企業が増えているが、その分離職時のダメージも大きく、事業継続に影響が出るリスクもある。そこで、主な離職要因となる6つの問題について、その原因や解決策を解説する。

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

繧「繧ッ繧サ繧ケ繝ゥ繝ウ繧ュ繝ウ繧ー

2025/05/08 UPDATE

ITmedia マーケティング新着記事

news025.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news014.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。