IFRSにかかわる組織から毎月、公表される各種文書。ムービングターゲットと言われ、変化を続けているIFRSの姿を捉えるにはこれらの文書から最新情報を得る必要がある。今月は収益認識の再公開草案が実務に及ぼす影響についての考察などを取り上げる。
IFRS Watch第10回は、2011年12月中に公表されたIFRS
関連情報より注目すべきものをピックアップしている。今回は、収益認識の再公開草案が実務に及ぼす影響についての考察や、IFRS第9号の強制発効日の延期などの最新情報をお届けする。
【これまでの記事】
ASBJ:企業会計基準委員会
FASB:米国財務会計基準審議会
IASB:国際会計基準審議会
IFRS:国際財務報告基準
MoU:IFRSと米国の会計基準との間の差異に関するコンバージェンス合意
SEC:米国証券取引委員会
KPMG International Standards GroupのパートナーであるBrian O'Donovanが、2011年11月に公表された「顧客との契約から生じる収益」の再公開草案が与える影響について考察した。以下はその概略である。
全ての会社が懸念する事項の1つは、現在の実務と比較して公開草案が収益金額または収益認識時期に影響を与えるかどうかである。例えば、会社が複合要素契約あるいは変動対価を特徴とする契約、あるいは長期契約を締結した場合には、影響を与えるかもしれない。
通信業の会社は、変更に直面する可能性がある。単一の契約の下で、顧客にスマートフォンおよび2年のデータプランを販売する場合、スマートフォンとデータプランで取引金額を配分する必要があるかもしれない。これは、収益認識の認識時期を変更することになり、公開草案を適用するために、システムが必要なデータを収集し追跡することができるかどうか考える必要があるだろう。
一方、建設業の会社では多くの場合、建設工事が進むにつれて時間の経過により収益を認識し続けることになるだろう。
公開草案のうち、ほとんど全ての会社に影響するものがある。この1つの例は、顧客の信用リスクへの新しいアプローチである。公開草案は、収益を総額で表示しさらに、顧客の信用リスクの影響を収益の控除項目として表示することを提案している。これにより、企業が財務諸表で顧客の信用リスクの影響を表示することの重要性および透明性が増加するだろう。
また、年度の財務諸表と中間財務報告での開示の増加が提案されている。会社は、システムとプロセスが重要な情報を収集できるかどうか、もう一度評価する必要があり、開示の増加は、投資者そして競合他社にも重要な情報を追加で提供することになる。
過去の記事でも取り上げていたIFRS第9号の強制発効日の延期の提案についてIASBは、以下のように決定した(参考記事:2011年11月:最新の公開草案に日本がコメント)。
IASBは、IFRS第9号「金融商品」の強制発効日を2013年1月1日以降開始する事業年度から2015年1月1日以降開始する事業年度へと延期する修正を公表した。この延期により、プロジェクトの全てのフェーズの強制発効日を統一できることとなる。
また、この修正には、IFRS第9号の適用による比較財務諸表の修正再表示の免除規定も折り込まれている。この免除規定は、従来2012年より前にIFRS第9号を適用することを選択した企業についてのみ認められていた。その代わり、IFRS第9号の適用開始が金融商品の分類と測定に与える影響について投資者の理解を補助する情報の追加的な開示が要求されることとなる。
この修正案においても早期適用については、引き続き認められている。
IASBは、2011年12月20日、パブリックコメントを求めるためにIFRS第10号「連結財務諸表」に関する修正案を公表した。この修正案の目的は、どのような際に企業が遡及的にIFRS第10号を適用することが必要となるかを確認することにより、経過措置ガイダンスを明確化することである。この提案は、本来の意図よりも経過措置が負担となると考えていた人々の懸念を低減するものとなる。この修正案の発効日は、IFRS第10号をあわせ2013年1月1日以降開始する事業年度とすることが提案されている。コメント募集期限は、2012年3月21日である。
なお、具体的な提案の要旨は、以下の2点である。
ASBJは2011年11月14日に公開された草案「顧客との契約から生じる収益」について、日本の視点から改善を求めるべき点について、市場関係者から意見を募集している。添付資料として、収益認識のわが国における実務と公開草案との主な違いについても、掲載されている。
現行の基準によると、全ての支配している会社を連結するのが原則であり、ベンチャーキャピタル企業に代表される投資企業が支配している企業についても、同様の定めがなされている。それについて見直すべきとのコメントが多く寄せられたことから、公開草案「投資企業」が発表されている。今般、ASBJは公開草案「投資企業」に対するコメントを発表した。
同コメントによると、支配している企業であっても、キャピタルゲインの獲得を主目的とする企業を連結対象外とする基本的な考え方に賛同している。ただし、公開草案で提示されている投資企業の判定方法については、原則の定め方が十分でないとの意見を表明している。
東京理科大学理学部卒業。東京北斗監査法人(現仰星監査法人)に入所。現在は、法定監査や株式上場支援、IFRS対応支援、国際的な監査業務に従事している。共著として「図解と設例で学ぶ これならわかる連結会計」、部分執筆書に「会社経理実務辞典」(いずれも日本実業出版社)がある。
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