不正対応基準創設の他に、公認会計士が会計不正の兆候を見つけた場合の対応や、監査計画の策定を検討する。
金融庁は7月25日に開催した企業会計審議会の監査部会で、企業の会計不正に対応する会計監査の手続きなどをまとめた「不正対応基準」(仮称)を新たに設ける方針を示した。これまで2回開かれた監査部会の議論から会計不正につながるリスクを抽出。これらのリスクに対応するための監査手続きや監査法人の体制などをまとめる方針だ(監査部会のこれまでの議論:「『期待ギャップ』をどう解消――会計不正で監査基準見直しへ」、「会計不正調査に監査人の限界、監査基準見直しで審議」)。
不正対応基準は2014年3月期からの適用を目指す。既存の監査基準などとは別に運用する方針。同日の監査部会では「現行の基準と、不正対応基準との関係を検討しないといけない」(日本経済団体連合会 経済基盤本部 副本部長 井上隆氏)などの声が上がった。
不正対応基準にどこまで含めるかは今後検討するが、監査部会では金融庁が「主な検討項目」として不正対応基準創設の他に、公認会計士が会計不正の兆候を見つけた場合の対応や、監査計画の策定について列挙した。
主な検討項目は以下の通り。
例えば監査計画の実施ではSPCの利用など、代表的な会計不正リスクを基準上に列挙し、そのリスクに対応した監査計画の作成を求める方針。抜き打ちの監査手続きや、往査先、監査実施時期の変更など「実効性のある監査計画の策定」(金融庁)を求める。
また、会計不正の兆候が発見された場合は、残高確認状の内容の見直し(担保設定状況の記載の徹底など)や、会計不正の内容に応じた監査手続きの実施(売り上げの前倒し計上が想定される場合の実地棚卸手続きの実施など)を検討する。チェックリストだけではなく、「職業的懐疑心のより積極的な発揮」などの項目も検討する。
会計不正のリスクが高い場合の監査法人の体制についても今後検討する。不正が疑われる企業の監査を受任する場合の手続きや受託審査について議論する方針。監査チームによるモニタリング、情報収集体制の強化、フォレンジックチームの活用、監査法人内における適切な審査の実施(実効性のある本部審査ルールの整備)などについても今後テーマとする。
オリンパスの会計不正事件では監査法人の引き継ぎでリスク情報が共有されなかったことが問題視された。会計士の守秘義務など複数の要素が絡む問題だが、監査部会では今後、実効性ある引き継ぎの徹底や監査法人交代時の開示の強化などについて議論する。「監査人の守秘義務解除の要件の明確化」についても検討するという。
監査部会の議論では企業の監査役と監査人の連携強化についても議論になった。「全てのリスクが監査人に行かないよう監査役との連携がポイントになる。そのためには監査役のレベルアップも重要だ」(横河電機 顧問 八木和則氏)。
東京大学准教授の田中亘氏は、「監査人に義務を課す話が多くなると思われるが、あまり義務を課して責任を追求するのでは、なり手がいなくなる。努力に報いたり、不正の警告を出した監査人に余計なリスクを負わせないのも重要だ」と話した。
監査部会は9月に再開予定。今回の議論をベースに不正対応基準の詳細を検討する。
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