ニチイ学館と日本マイクロソフトが医療機関の経営、診療、地域連携などを支援するサービスを共同開発・販売する。第一弾としてKinectを活用した手術室向け画像操作システムを提供開始。
ニチイ学館と日本マイクロソフトは10月1日、医療分野における業務提携契約の締結を発表した。ニチイ学館の人材サービスと日本マイクロソフトのITインフラを活用した医業環境支援サービスを共同開発・提供する。
日本マイクロソフト 代表取締役社長 樋口泰行氏は、海外では医療・健康情報管理サービス「Microsoft HealthVault」を展開し、国内では医療情報化推進協議会「Connected Health A* Round Table」を立ち上げるなど、同社が医療分野のIT化を積極的に支援していると説明。また、自社の汎用ソフトウェア製品群を活用することで「プラットフォーム標準化やコスト削減に貢献できる」と語った(関連記事:汎用的なデータ連携基盤で地域医療連携の実現を目指す日本マイクロソフト)。
ニチイ学館 代表取締役社長 齋藤正俊氏は、医療機関が抱える課題として「経営悪化」「医療提供者の不足」「地域医療連携の必要性の高まり」の3つを挙げ、その解決にはIT活用が重要だと説明。しかし、実際には「IT導入のためのノウハウ・人材が得られない」ことがその導入を阻害しているという。その上で「ニチイ学館の人材力と日本マイクロソフトのIT技術を融合することで、医療現場の課題を解決できる医療環境支援サービスを提供する」と語った。
今後、両社は「経営支援」「診療支援」「地域連携」の3分野の新サービスを順次提供していく。経営支援サービスでは、医療機関の経営データを可視化するデータ集計・分析システムを開発・提供し、分析結果に基づいた業務プロセスの適正化などを支援する。そのプラットフォームに「Microsoft Windows Azure」「Microsoft Office 365」「Microsoft SQL Server」などを採用。また、診療支援サービスとして医師や看護師の業務負担およびコミュニケーション活性化サービスの開発・提供を行う。同サービスでは「Kinect for Windows」「Microsoft SharePoint」「Microsoft Lync」「Windows Phone」をベースとする。地域連携サービスでは、医療機関、介護施設、利用者宅などの多拠点の情報連携システムの構築、地域連携コーディネーターの育成支援などを実施する。
ニチイ学館は同日、診療支援サービスの第一弾として手術室向け非接触型画像操作システム「Opect」の提供を開始した。Opectは、日本マイクロソフトの音声認識/モーションセンサー技術のKinect for Windowsを活用し、端末に触れることなくジェスチャーで操作できる画像閲覧システム。Kinectセンサーに向かって手をかざしたり、手を振ることで画像送りや拡大、縮小といった操作が可能。CTやMRIなどのDICOM画像や術中の組織検査などのビットマップ形式(PNG、JPG、BMP)に対応する。東京女子医科大学病院が2012年4月から導入している。
ニチイ学館 医療関連事業統括本部 取締役統括本部長 木原 佳代子氏は「外科手術では患者画像を参照する機会が多い。執刀医が滅菌手袋を外さずに画像操作することで、術中のストレス軽減や業務の効率化、安全・衛生面の向上といったメリットがある」と説明する。また「Opectは、滅菌を伴う全ての手技、検査などに適用可能」で、特に脳外科や整形外科などの外科系、手術件数が多い大規模病院などがターゲットになるという。Opectの提供価格は、49万8000円(税込金額、以下同)。
ニチイ学館は経営支援サービスとして、医療機関向けグループウェア「メディクラウド」を12月下旬に提供予定であるとも発表。メディクラウドは、Microsoft Office 365とWindows Azuruを基盤とするクラウドサービス。
同社によると、メールや院内掲示板、文書管理、スケジュール管理機能などの標準機能に加えて、医薬品検索や診療報酬チェック、eラーニング機能といった医療機関特有の機能を拡充する予定という。主に中小規模の医療機関や介護施設、在宅診療所などが対象になる。メディクラウドの提供価格は、初期費用が31万5000円、システム管理費用が月額1万500円(2012年10月時点の予定価格)。
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