名古屋市立大学病院では現在、電子カルテシステムを中心としたHISと部門システムとの高度な連携を進めている。ここで重要な役割を果たしている要素とは何か?
医療の世界は今日、多くの課題に直面している。病院経営の圧迫に医師不足、医療技術の高度化、患者ニーズの多様化、少子高齢化、地域医療連携……。こうしたさまざまな課題を克服するための手段として、今ITに大きな期待が集まっている。
だが実態はといえば、多くの病院では、プロセスやデータ活用の全体最適化はもちろん、システム間の連携が実現されているとはとても言い難い。医事会計システムから発展した電子カルテを代表とする病院情報システム(HIS)の歴史がまだ浅いのに加え、独立して使用され発展していった各部門システムが数多く存在しているのが、その理由だ。
名古屋市立大学病院も、かつてはこうした状況に置かれていた医療機関の1つだった。同院は早くから医療IT化の取り組みを始めており、2004年には電子カルテシステムを中心としたHISの稼働を開始した。ただし、院内の各部門で稼働している個別システムと電子カルテシステムとの連携は、思うように運ばなかったという。結果として、診療情報が依然として各システムに分散してしまっており、「各部門の診療情報を一元化して自在に参照できるようにする」という、同院が当初掲げた目標の達成は困難な状況だった。
そこで同院が導入したのが、インターシステムズジャパンが提供するシステム統合プラットフォーム製品「InterSystems Ensemble」だった。同製品は、システム連携やデータ連携の基盤機能を提供するSOAベースの製品だ。
通常、各院内システムを連携させるためには、連携インタフェースを個別に開発することになる。この方法では、連携対象のシステム数が増えれば増えるほど、開発/保守コストも増えていく。また全体のシステム構成が極めて複雑化してしまうため、運用リスクも高くなってしまう。
そこで同院では、HISと周辺システムとの連携基盤としてInterSystems Ensembleの導入を決断。全てのシステムの連携をInterSystems Ensembleを介して行うシンプルなハブ&スポーク型構成とすることで、極めて低コストなシステム連携を実現した(図)。
現在同院は、各部門システムをその更新時期に合わせて随時連携基盤に追加している。その際も一から連携インタフェースを開発する必要がなくなったため、コストを抑えた院内システム統合を実現している。また、システム連携の管理ポイントがInterSystems Ensembleに集約されたことにより、システム管理の効率性向上も期待できるという。
同院では今後も、InterSystems Ensembleを中心にシステムの連携と診療情報の集約を進め、より高度で利便性の高い医療ITの実現を目指すという。本稿で紹介したのは、本事例のほんの一部だ。同院担当者によるInterSystems Ensemble導入/活用事例に関する詳細なインタビューは、以下の資料に掲載されている。本稿を読んで興味を持たれたら、ぜひそちらも参照されたい。
医療の世界におけるIT利活用の進展を阻む最も高いハードルが、システム連携の困難さだ。名古屋市立大学病院では、この困難な課題をどう解決したのか? 同院担当者に聞いた。
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