待望の4G周波数帯の割当が決定。しかし、モバイル通信事業者の前途はいかに? 期待よりも不安が上?
2013年2月20日(英国時間)に英国のメディア・通信を監督する規制機関「情報通信庁」(Office of Communications、以下「Ofcom」)は英国内の第4世代移動通信システム(4G)周波数帯の競売結果を発表し、業界を驚かせた。Ofcomはこの競売を3月に実施する予定でいたが、度重なる遅れから、業界内では悲観的な見方がされていたのだ。
落札したのは英Vodafone、香港の3、スペインのO2、英BT、そして既に4Gを提供している英EEの5社。落札総額は約23億4000万ポンド。
落札結果の発表当日、BTの広報担当者はこの知らせはうれしい驚きだったが、新たにさまざまな疑問や将来への不安を抱えることにもなったと本誌Computer Weeklyにコメントしている。
本記事は、プレミアムコンテンツ「Computer Weekly日本語版 2013年4月17日号」(PDF:無償ダウンロード提供中)に掲載されている記事の抄訳版です。同PDFは、
■英情報通信庁の4G 周波数帯競売、その勝者と敗者
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といった記事で構成されています。
最大の焦点は「落札額」である。ジョージ・オズボーン英財務相は、2012年12月の秋季財政報告において政府の借入金債務が減少したことを発表し、議会は狐につままれたような状態になった。その後の調査で、この財務報告には、Ofcomによる4Gスペクトラム周波数帯の競売により調達が見込まれる35億ポンドが織り込まれていることが分かった。これはOfcomが承認していない推定額であり、この35億ポンドを除けば政府借入金は20億ポンド増になっていた。
Ofcomのエド・リチャーズCEOは、オズボーン財務相の発表で初めてこの落札予想額を知ったといい、Ofcomは関与していないあずかり知らないところだという。4G周波数帯の競売はOfcomの収益とは無関係であったかもしれないが、落札額が政府の期待よりも大幅に低かったことは確かだ。
トム・ワトソン下院議員(労働党)は、「ジョージ・オズボーン財務相が競売結果を読み間違えただけでなく、競売の実施が遅れたことで、既存の周波数帯のライセンス料を引き上げられなくしてしまった」と指摘する。「そうして、既存の周波数帯を箸にも棒にもかからないような料金でライセンスすることになった。このために、数千万ポンド相当の歳入が失われ、納税者に負担を強いることになる可能性がある」
では、各事業者の落札内容を見てみよう。最も困難な仕事が待ち受けているのはO2になりそうだ。O2の周波数配分は比較的少なく、5億5000万ポンドで800MHz帯の10MHz幅2枠を落札した。ただし、この割当枠にはカバレッジ(サービス提供エリア)義務が伴うため、2017年までにO2の4G網は英国の98%の屋内カバレッジを実現しなければならない。
7億9000万ポンドという最大の落札額で最も多く配分を受けたVodafoneは、今回の競売でカバレッジ義務がある枠が割り当てられたわけではないが、O2と同様に2012年に98%のカバレッジを公約している。
4Gの新たなプレーヤーとして最も興味深いのはBTだ。1億8600万ポンドという破格に思える金額で、このテレコム大手は首尾よく2.6GHz帯の15MHz幅を2枠と、2.6GHz帯の20MHz幅1枠を手に入れた。しかし、BTではこれらをモバイルネットワークに利用する計画はない。同社のイアン・リビングストンCEOは、獲得した周波数帯は「固定ブロードバンドと無線ブロードバンドを使う各種サービスの既存の提供戦略」を補完するものだと述べている。
いずれにしても事業者は多額の投資を行うことになる。業界の観点での疑問は「4Gを展開したところで、それに見合う収益が得られるか?」だ。
現在、英国で4Gサービスを唯一提供しているEEが発表した最新の財務報告は、芳しいものではなかった。4Gサービスの提供を開始したにも関わらず、収益は前年比2%減で、税引前利益は7.3%減の10億800万ポンドに落ち込んでいる。
EEは2012年の最終四半期に20万1000人の契約を獲得しているが、4Gプランの契約者数は明らかにしていない。それが、「高速な4Gモバイルサービスを契約する一般消費者は存在するか?」「このような多額の投資をして、それに見合う利益が出るか?」という懸念を生んでいる。
一部のアナリストは、EE以外の事業者が4Gサービスの提供を開始するのは夏前になるという。4G市場の最初のプレーヤーがユーザー獲得に苦戦している様子を見ると、今回落札した事業者がすぐさま4G事業に一斉に乗り出すという保証はない。
しかし少なくとも、英国でも4Gが全国に展開され、今までになく充実した通信環境を整える取り組みという意味では、ようやく進展があったのは確かだ。
Computer Weekly日本語版 4月17日号では、英国の4G周波数帯競売をめぐる洞察、ビッグデータをセキュリティ対策に応用する取り組み、ユーザーの行動を分析してサービスに生かすゲームサイトの事例、大プロジェクトを率いるリーダーのインタビューなど、他では読めない記事で構成されています。
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