英大手製薬会社のAstraZenecaは急速な変化の中で、融通の利かない大規模なサービス契約に限界を感じ、新たなモデルを採用した。
英製薬会社のAstraZenecaは、IBMとの成果ベースの大規模な契約を解除し、複数のサプライヤーとの協力を促進するアウトソーシングモデルに切り替えた。
2000年代は、ITのアウトソーシングは規模が大きければ大きいほど良いと考えられていた。この大規模契約の時代には、英Bank of ScotlandがIBMと7億ポンドの契約を結び、英Prudentialは7億2200万ポンドの契約を英Capitaと締結し、世界的な大手製薬会社のAstraZenecaはIBMとの11億ドルの10年契約にサインした。
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しかし、このトレンドは完全な成功を収めたとはとてもいえない。Bank of Scotlandの契約は同行が英Halifaxと合併したことで消えている。AstraZenecaは2007年に7億3600万ポンドの契約でIBMとの関係を延長しているが、2011年には契約打ち切りを決め、IBMと激しく法定で争うことになった。
AstraZenecaとIBM間の契約が打ち切りになったのは、成果ベースでの契約条件が規定されていたことも原因の1つだ。成果ベースで契約条件を規定するのは、サプライヤー間の創意工夫を促すためと、顧客が技術的なソリューションに口出しせず、サプライヤーが事業目的に専念できるようにするためだ。このモデルは2000年代には流行していたものの、その当時の他のトレンドと同様に、時代にそぐわなくなってきた感がある。
「長年、成果ベースの条件を規定してアウトソーシングを利用してきたが、どのように成果が実現されるかが分からなくなっていた」とAstraZenecaのISプロキュアメントの責任者、サム・コヴェル氏は言う。その結果、AstraZenecaではサービスレベルの維持とサービスのコスト管理に悪戦苦闘するようになった。また、IT資産を最新の状態に保ち、適切にプロジェクトを遂行するのも難しくなったという。
「どんな方策があり、成果を上げるために弊社からどんな支援を提供できるかを把握することはほぼ不可能だった。それはプロバイダーに責任があるということではなく、物事は決してそれほど単純ではないということだ。弊社のアウトソーシングモデルは、ビジネスのニーズに対応しきれなくなっていた」
「大規模契約は、当時は画期的だと見なされ、どこででも使えるモデルだと考えられていた。問題は、特に弊社の場合はペースが急だったが、ビジネスが変化していたのに、契約の内容を変更することが非常に難しかったことだ」とコヴェル氏は振り返る。
大規模な取引では成果ベースの条件を使って管理するのが一般的だったが、当初の見通しを達成できずに終わったのはAstraZenecaだけではないと、アウトソーシング契約のあっせんを専門とする英コンサルティング企業のBurnt Oak Partnersのディレクター、ロバート・モーガン氏は話す。
「計画通りに進めるには、自分たちがどのような役割を果たすべきかを理解できるほど成熟している顧客はほとんどいない」とモーガン氏は言う。
モーガン氏によると、サプライヤーとの適切な窓口を設け、業界のガバナンスを導入するコストは、契約全体の価値の1割程度だろうと言う。
大規模な契約を結ぶ多くの企業は、短期間でコストが削減されると考えるらしい。
「成果ベースで条件を設定するのは、パートナーシップの下での投資、理解、連携が大前提だが、そのような形で契約が履行されることはほとんどない」(モーガン氏)
大規模な長期のITアウトソーシング契約は、サプライヤーが利益を得る仕組みのために、変更も難しくなるとAstraZenecaのコヴェル氏は指摘する。
コヴェル氏は、その理由を次のように説明する。「大規模なアウトソース契約では、サービスを刷新しようと最初の2、3年に多くの投資が行われ、最後の2、3年にサプライヤーは利益を出そうとする。ほとんどの大規模契約の期間が5年以上になることが多いのはそのためだ。最初の2年間は、規定された変更に向けて全てが進められていく。しかし、3、4年目になると、ビジネスに大きな変化があり、当初は目的にかなうと考えていたサービスを手直ししたいと考えるようになる。これはまさに、サプライヤー側の投資が完了し、利益が生まれるようになったタイミングに当たる」
2011年の春、AstraZenecaは、IBMが提供するサービスに代わる新しいITアウトソーシングモデルを考案した。
AstraZenecaが考案したアウトソーシングモデルとはいかなるものか? 緊急時の迅速な対応を実現する方法とは? 本記事の続きは「Computer Weekly日本語版 2013年5月15日号」で読むことができます。
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