PaaSにもオープンクラウド? 「TOSCA」まで押さえておこう見えてきたIBMのオープンクラウド戦略

ベンダーロックインの問題からなかなか導入が進まなかったPaaS。だが、TOSCAというPaaSの規格に準拠することによって、これまでは困難だったアプリケーションのクラウド間移行が容易となる。

2013年06月13日 00時00分 公開
[ITmedia]

 IaaS(Infrastructure as a Service)に比べPaaS(Platform as a Service)が普及しない要因の1つとして、クラウドで開発したアプリケーションの「移行の難しさ」が挙げられる。

 ――外部のクラウド事業者を活用し、販売促進のためのサイトとバックエンドのシステムを立ち上げる。迅速にスタートアップができてキャンペーンは成功し、その後順調に利用者を増やしているものの、立ち上げから3年たってみると思いの外システム全体のコストが増大。人気サイトではあるが、収益面から大きな成功とはいえない……こんなケースが増えている。

 コストを下げるには、クラウドを外部事業者からプライベートクラウドに移行して、自社システムの1つとして効率的に運用できればよいのだが、多くの場合、外部事業者のクラウドで開発したアプリケーションやデータをプライベート環境へ容易に移行するためのポータビリティ(移植性)がサポートされていない。そのため利用コストは増大しながらも外部事業者のクラウドを使い続けるか、あらためて一定のコストを掛けて自社運営のシステムを開発するかの選択を迫られる。

 このように、クラウドでのビジネス推進を成功させるには、そのビジネスやアプリケーションのライフサイクルに合わせて最適なプラットフォームが選べること、つまりパブリック/プライベートクラウド間でアプリケーションの移行の容易性を考慮することが最適な収益構造を構築する上で重要である。これは、SLAやデータの置き場所などの非機能要件がサービスライフサイクルの中で変化した場合も同様である。

 IBMは2013年3月に「オープンクラウド戦略」を発表した。オープンなアーキテクチャを採用することで、利用者にとっては高品質で低コストなクラウドサービスをベンダーロックインなしで利用することが可能となる。ソフトウェアやサービスを提供する事業者にとっても、開発したものを再利用できるエコシステムが構築されることになる。

 IaaSの分野と比べて、PaaSではオープンクラウドがまだあまり認知されていない。IBMのオープンクラウド戦略がPaaSにまで及ぶのはなぜだろうか。その標準化の動向を紹介していこう。

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