自社開発のプライベートクラウドでゼロダウンタイムの実現を目指すBMW。彼らはなぜ自社開発に踏み切ったのか?
ドイツ自動車メーカーのBMWは、2年にわたる実装、テスト、検証を経て、2013年11月にプライベートクラウドインフラの運用を開始する予定だ。
「ちょうどクラウドコンピューティングに弾みがつき始めた2011年ごろ、BMWのITチームは社内のITを刷新して、レジリエンス(回復力)と可用性を高めることを検討していた。それが、クラウド導入に取り組むきっかけになった」と、BMWのITインフラ担当副社長のマリオ・ミュラー氏は、クラウド導入の背景を説明する。
「将来のインフラではゼロダウンタイムを実現したかった」(ミュラー氏)
本記事は、プレミアムコンテンツ「Computer Weekly日本語版 2013年10月23日号」(PDF)掲載記事の抄訳版です。本記事の全文は、同プレミアムコンテンツで読むことができます。
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BMWが現在運用している従来型のインフラは、2012年の時点で99.96%という高い可用性を実現する堅牢を誇っているが、100%の可用性とゼロダウンタイムをエンジニアやスタッフに提供することを目指すITチームにとって、それでは不十分だった。
「さまざまな保守や修正プログラムの適用を行う必要がある。つまり、現在のインフラでは計画的なダウンタイムが頻繁に発生する」というミュラー氏は、Open Data Center Alliance(ODCA)の会長でもある。自動化やアジリティといったクラウドの特徴を生かせば、ダウンタイムを最小限に抑えられる。
BMWのITチームは、ODCAが策定したベストプラクティスのガイドラインに基づき、BMWのメインのエンタープライズデータセンターで運用する独自のプライベートクラウドインフラを設計、構築している。
「プライベートクラウド戦略の策定時点では、われわれの全ての要件を満たすソリューションが市場に存在しなかった」とミュラー氏は語る。
しかし、独自にクラウドインフラを開発することにした理由はそれだけではない。それは、「ベンダーロックインを回避し、アプリケーションやワークロードを自由に移動できるように相互運用性を確保したかった」(ミュラー氏)ためでもある。現在、ITベンダーが提供している多くのクラウドプラットフォームで、相互運用性を確立するのは容易ではない。「従って、プライベートクラウドは基本的に独自の実装になっている」
BMWのプライベートクラウドは、オープンソースを基盤としている。データセンターインフラの50%がSUSE LinuxとXenServerを基盤にしているためだが、VMwareやMicrosoftの仮想化プラットフォームも使用している。
BWMのITインフラは、約1000個のWebアプリケーションをサポートし、4700個のアプリケーションサーバインスタンスと8400個のWebサーバインスタンスに対応できる。また、デスクトップPCとノートPCは9000台、スマートフォンは9300台、携帯電話は48000台までサポートする。さらに、約1900のデータベースインスタンスと、テスト、開発、運用に使われる300のSAPシステムもこのITインフラを利用している。
約2年間のテストおよび検証を経て、2013年11月に運用を開始できる状態になった。
「クラウドの動作を完全に把握し、実際の運用環境で使い始める前に、クラウドに慣れておきたかった。運用開始後に問題が生じると業務に影響するため、それは避けたい」とミュラー氏は説明する。最初は、Webアプリケーション、プロセッサワークロード、数個のセットアップアプリケーションと幾つかのSAPアプリケーションにプライベートクラウドを使う予定だ。
最終的にはミッションクリティカルなアプリケーションもクラウドで運用し、クラウドの可用性とレジリエンスの高いインフラを活用したいと考えている。「最初は小さな範囲で始めるが、より重要なアプリをクラウドに移行し、より多くのメリットを引き出したい」
BMWのクラウド戦略には、IaaS(Infrastructure as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、PaaSデータベース、PaaS Web、PaaS SAP、CSaaS(Corporate Software as a service)が含まれる。
プライベートクラウドの運用を開始したら、ミュラー氏とそのチームはBMWの全てのITアプリケーションの開発に取り掛かる予定だ。「これは時間のかかるプロセスになるだろう。クラウドでITの大半を運用するようになるまで、3年かかると思われる」
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