プライベートクラウドインフラでゼロダウンタイムを目指すBMW自社開発を選んだ理由は?

自社開発のプライベートクラウドでゼロダウンタイムの実現を目指すBMW。彼らはなぜ自社開発に踏み切ったのか?

2013年10月25日 08時00分 公開
[Archana Venkatraman,Computer Weekly]
Computer Weekly

 ドイツ自動車メーカーのBMWは、2年にわたる実装、テスト、検証を経て、2013年11月にプライベートクラウドインフラの運用を開始する予定だ。

 「ちょうどクラウドコンピューティングに弾みがつき始めた2011年ごろ、BMWのITチームは社内のITを刷新して、レジリエンス(回復力)と可用性を高めることを検討していた。それが、クラウド導入に取り組むきっかけになった」と、BMWのITインフラ担当副社長のマリオ・ミュラー氏は、クラウド導入の背景を説明する。

 「将来のインフラではゼロダウンタイムを実現したかった」(ミュラー氏)

Computer Weekly日本語版 2013年10月23日号無料ダウンロード

本記事は、プレミアムコンテンツ「Computer Weekly日本語版 2013年10月23日号」(PDF)掲載記事の抄訳版です。本記事の全文は、同プレミアムコンテンツで読むことができます。

なお、同コンテンツのEPUB版およびKindle(MOBI)版も提供しています。


 BMWが現在運用している従来型のインフラは、2012年の時点で99.96%という高い可用性を実現する堅牢を誇っているが、100%の可用性とゼロダウンタイムをエンジニアやスタッフに提供することを目指すITチームにとって、それでは不十分だった。

 「さまざまな保守や修正プログラムの適用を行う必要がある。つまり、現在のインフラでは計画的なダウンタイムが頻繁に発生する」というミュラー氏は、Open Data Center Alliance(ODCA)の会長でもある。自動化やアジリティといったクラウドの特徴を生かせば、ダウンタイムを最小限に抑えられる。

構築中のプライベートクラウドインフラ

 BMWのITチームは、ODCAが策定したベストプラクティスのガイドラインに基づき、BMWのメインのエンタープライズデータセンターで運用する独自のプライベートクラウドインフラを設計、構築している。

 「プライベートクラウド戦略の策定時点では、われわれの全ての要件を満たすソリューションが市場に存在しなかった」とミュラー氏は語る。

 しかし、独自にクラウドインフラを開発することにした理由はそれだけではない。それは、「ベンダーロックインを回避し、アプリケーションやワークロードを自由に移動できるように相互運用性を確保したかった」(ミュラー氏)ためでもある。現在、ITベンダーが提供している多くのクラウドプラットフォームで、相互運用性を確立するのは容易ではない。「従って、プライベートクラウドは基本的に独自の実装になっている」

 BMWのプライベートクラウドは、オープンソースを基盤としている。データセンターインフラの50%がSUSE LinuxとXenServerを基盤にしているためだが、VMwareやMicrosoftの仮想化プラットフォームも使用している。

 BWMのITインフラは、約1000個のWebアプリケーションをサポートし、4700個のアプリケーションサーバインスタンスと8400個のWebサーバインスタンスに対応できる。また、デスクトップPCとノートPCは9000台、スマートフォンは9300台、携帯電話は48000台までサポートする。さらに、約1900のデータベースインスタンスと、テスト、開発、運用に使われる300のSAPシステムもこのITインフラを利用している。

展開の準備ができたBMWのクラウドサービス

 約2年間のテストおよび検証を経て、2013年11月に運用を開始できる状態になった。

 「クラウドの動作を完全に把握し、実際の運用環境で使い始める前に、クラウドに慣れておきたかった。運用開始後に問題が生じると業務に影響するため、それは避けたい」とミュラー氏は説明する。最初は、Webアプリケーション、プロセッサワークロード、数個のセットアップアプリケーションと幾つかのSAPアプリケーションにプライベートクラウドを使う予定だ。

 最終的にはミッションクリティカルなアプリケーションもクラウドで運用し、クラウドの可用性とレジリエンスの高いインフラを活用したいと考えている。「最初は小さな範囲で始めるが、より重要なアプリをクラウドに移行し、より多くのメリットを引き出したい」

 BMWのクラウド戦略には、IaaS(Infrastructure as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、PaaSデータベース、PaaS Web、PaaS SAP、CSaaS(Corporate Software as a service)が含まれる。

長期的なクラウドビジョン

 プライベートクラウドの運用を開始したら、ミュラー氏とそのチームはBMWの全てのITアプリケーションの開発に取り掛かる予定だ。「これは時間のかかるプロセスになるだろう。クラウドでITの大半を運用するようになるまで、3年かかると思われる」

続きはComputer Weekly日本語版 2013年10月23日号にて

本記事は抄訳版です。全文は、以下でダウンロード(無料)できます。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

隴�スー騾ケツ€郢晏ク厥。郢ァ�、郢晏現�ス郢晢スシ郢昜サ」�ス

製品資料 株式会社AIT

国際間の映像データ配信や拠点間での動画共有も高速で、ファイル転送の注目手法

大容量データの送受信には、通信遅延や帯域制限の課題がある。本資料では、高速で安全なデータ送信を実現できるファイル転送プラットフォームを紹介する。導入時に気になるポイントとともに、料金プランも分かりやすく解説している。

製品資料 発注ナビ株式会社

リードが商談化できない? SaaS導入のベンダー側と企業側の悩みを一掃する方法

SaaSの利用が拡大する中、ベンダー側と企業側の両方がさまざまな課題を抱えている。ベンダー側は商談につながるリードが獲得しにくいと感じており、企業側は製品の選定に困難さを感じているという。双方の課題を一掃する方法とは?

製品資料 NTTドコモビジネス株式会社

多様なデータを一元管理、次世代のコンテンツ管理基盤とは?

従来のファイルサーバで対応できない多様なデータを、効率的に管理・共有できる「全てのコンテンツ保管庫」として、クラウド型コンテンツ管理基盤にVPN接続機能を組み合わせたサービスが注目されている。その特徴をマンガ形式で紹介する。

製品資料 株式会社マヒト

3分で分かる、「名刺発注業務」を効率化するポイント

従業員の自己紹介に加えて、企業間の関係構築においても重要な役割を担う名刺だが、その発注業務は意外と手間がかかる。名刺の作成から注文まで、ミスを発生させずに効率化するにはどうすればよいのか。本資料では、その解決策を紹介する。

製品資料 株式会社MONO-X

IBM i の資産を生かし、着実にDXへとつなげるモダナイゼーションの進め方

IBM i 基幹システムを運用する企業でモダナイゼーションが喫緊の課題となる中、推進の課題も多い。そこで、「クラウド」「ノーコード開発」「API」「AI」を主軸とするIBM i ユーザー向けモダナイゼーションサービスを紹介する。

アイティメディアからのお知らせ

From Informa TechTarget

「テレワークでネットが遅い」の帯域幅じゃない“真犯人”はこれだ

「テレワークでネットが遅い」の帯域幅じゃない“真犯人”はこれだ
ネットワークの問題は「帯域幅を増やせば解決する」と考えてはいないだろうか。こうした誤解をしているIT担当者は珍しくない。ネットワークを快適に利用するために、持つべき視点とは。

繧「繧ッ繧サ繧ケ繝ゥ繝ウ繧ュ繝ウ繧ー

2025/07/12 UPDATE

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...