BlackBerryへの不信から始まった英医療機関のモバイル化プロジェクトAndroidでは必要なセキュリティを確保できず

University College London HospitalのICT担当ディレクターに、モバイルテクノロジー導入の取り組みについて話を聞いた。

2013年11月22日 08時00分 公開
[Jennifer Scott,Computer Weekly]
Computer Weekly

 近年、英国の国民保健サービス(NHS:National Health Service)のITは、デリケートな話題になっている。National Programme for IT(NPfIT)の失敗で数十万ポンドの無駄が生じたことで、新たな計画に対して職員や利用者から賛否入り混じるさまざまな反応が寄せられている。

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 しかし、幾つかのリーダー格の組織はそれをものともせず、新しいテクノロジーが英国の医療にもたらす恩恵を享受し、市場にあるツールの導入に関しても革新的な姿勢を見せている。そのようなNHSトラスト(地域ごとに独立した保険サービス)の1つが、University College London Hospital(UCLH)だ。UCLHのICT担当ディレクター、ジェームズ・トーマス氏はUCLHのモバイル化を指揮し、この4年間で素晴らしい成果を上げている。

UCLHのモバイル化計画

 UCLHはアウトソースモデルを採用し、主に英Logicaの協力の下でロードマップを決めている。ただし、ユニファイドコミュニケーションに関しては、英Azzurri Communicationsをパートナーにしてモバイル計画を進めている。

 「18カ月ほど前までは、BlackBerryのみだった」とトーマス氏は振り返る。「しかし、BlackBerryの障害が2、3カ月の間に2件立て続けに発生した。常時稼働の急性期病院として、インフラへの影響が大きすぎる」

 しかし、新しいプラットフォームを検討するきっかけになったのは、過去の出来事だけではなかった。

 「あるGartnerのイベントで、スピーカーが出席者にBlackBerry Enterprise Serverを使用しているかどうか尋ねた。驚くに当たらないが、3分の2が手を挙げた」と、トーマス氏は語る。

 「しかし、将来も使うかどうかを尋ねたところ、手を挙げたのはわずか25%だった。これにはかなり驚いた。そのとき既にBlackBerryに対して懸念があったため、複数のプラットフォームをサポートすべきだと悟った」

 トーマス氏とそのチームは、他のモバイルプラットフォームを検討し始めた。その際、特に重視したのはセキュリティだ。これは、長いことBlackBerry一筋で来た理由でもある。

 「第一弾としてはAppleのiOSが良いと思われたため、 iPhoneおよびBlackBerryと同等のセキュリティを実現するためにMobileIronのモバイル端末管理(MDM)を導入した」

医療ITのトレンドに乗る

 この新しいMDMの導入によって選択肢が広がったのは、端末の種類だけではない。

 「同時に、膨大な数が提供されている医療関連のモバイルアプリケーションについても調査を始めた。MobileIronを導入したことで、私物端末の業務利用(BYOD)を検討し、モバイル端末にプロファイルを展開し、院内で使用および承認プロセスを実施できるモバイルアプリストアを構築する土台ができた」

 スマートフォンが第一弾だったが、すぐにタブレットも使いたいという声が職員から上がってきた。必要な端末は既に分かっていたので、どのアプリがUCLHにとって有益なのかを調べるのが次のITチームの仕事になった。臨床、臨床以外、患者向けの3種類に分けて利用したいアプリを検討した。

 「この結果を基に、機能策定、複数のプラットフォームのサポート、BYODプロジェクト全体が動き始めた。また、今では内部のアプリ開発を検討できるようになり、その成果として、例えばレガシーシステムの制約を解消できている」と、トーマス氏は話す。

 UCLHの中核の患者管理システムがその一例だ。UCLHはWebサービス層を開発してレガシーの患者管理システムの上に展開し、患者の退院などの手続きを行うモバイルアプリを開発できるようになった。

UCLHの今後のモバイル計画

 UCLHは現在もBlackBerryを使用しているが、この18カ月間はBlackBerryの新規購入は発生していない。また、幾つかのiOS端末をサポートしているが、他のモバイルOSについては対応を見送っている。

 「Androidを2回評価したが、2回ともUCLHの環境に必要なセキュリティを確保できなかった」と、トーマス氏は説明する。「次に導入を検討する端末は、Windows系のモバイルになるだろう。Windowsの方がエンタープライズ向け機能が格段に多い。後は、実際に使えるかどうか検証するだけだ。Androidは将来採用する可能性はあるが、セキュリティを甘くするわけにはいかない」

新しいテクノロジーへのさまざまな反応

 トーマス氏自身は新テクノロジー導入の成果をとても喜んでいるが、職員の反応は賛否両論であることを認めている。

 「自由度が上がり、仕事の仕方を選べて、好きな場所で仕事ができるようになったと、非常に肯定的でモバイル活用に積極的な職員もいるが、導入に消極的な機関もある」とトーマス氏は語り、次のように続ける。

続きはComputer Weekly日本語版 2013年11月20日号にて

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