非政府組織(NGO)のCIO、デイビッド・グッドマン氏は、オープンかつ柔軟性があり、オフラインでも使用可能なクラウドを求めている。
グッドマン氏は米International Rescue Committee(国際救援委員会:IRC)の初代CIOで、7年にわたってIT部門を指揮してきた。同氏の基本方針はIT部門の専門性を高め、戦略レベルでも戦術レベルでも価値を提供することだ。
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IRCが年間予算数百万ドルの組織から5億ドルの組織へと成長するにつれて、IT部門も変化する必要があった。「直面している問題は大企業の英Unileverと全く同じだが、IRCにはリソースがない」と同氏は語る。
IT部門の規模は大企業のIT部門に匹敵し、その職務はインフラから業務アプリケーションまで全てに及ぶ。難民支援などの活動にテクノロジーを使用するというIRC本来の戦略にとってもIT部門は不可欠だ。例えば、シリアのように着の身着のまま、携帯電話だけを握りしめて逃げだした都市難民には、SMS(ショートメッセージサービス)などのテクノロジーソリューションが役に立つと同氏は話す。
「都市難民が置かれている状況は一刻一秒を争う。IRCは円滑な支援のためにテクノロジーを使っている」
同氏はクラウドコンピューティングの考え方を認めてはいるが、メリットばかりでないことも認識している。「クラウドはすばらしい。私もインフラを自分で運用したいとは思わない。だが、デメリットもある。クラウドではコストが高くなる状況がたくさんある」という。
IRCはクラウドベースのストレージ「Box」を職員に提供している。業務によっては購入する製品や使用する製品を選択できるが、Boxの代わりにDropboxを選択することはできない。
グッドマン氏は、大手サプライヤーの画一的なアプリケーションはIRCのニーズに合わないと考えている。「先日、米BoxのCEO、アーロン・レビー氏主催の夕食会に参加した際、米Microsoftの新CEO、サトヤ・ナデラ氏についてどう思うか尋ねられたが、あまり関心はない。IRCはこれまでMicrosoft製品をあまり使用していないからだ。だが、SharePointは利用してみた。この製品は12種類の作業を行えるようだが、IRCにはこんなに必要ない」
IRCはSharePointを中心にイントラネットを構築した。「さまざまなコラボレーション機能を導入したが、課題はSharePointがIRCの活動に即した設計になっていないことだ」とグッドマン氏は話す。同氏によると、SharePointは全世界で活動するNGO向きではないという。「SharePointは、長期にわたって利用できるソリューションとは感じなかった。手軽に使えるものを求めていたが、SharePointは非常に複雑だった」
グッドマン氏はアウトソーシングを検討したが、コストが高くなるという。「SharePointの専門知識はコアコンピテンシーではない」ためだそうだ。
「30~40種類のイントラネット製品をテストしたが、オフラインでも機能する製品は1つもなかった」と同氏は話す。接続を確保できない現場が多数あるため、オフライン機能は重要な要件の1つだ。「IRCの職員はインターネットに接続できない地域で活動している」
IRCの要件を満たす製品を見つけられなかったことから、グッドマン氏はイントラネットを構成する要素の解剖を始めた。同氏はイントラネットを、検索範囲が1つでコンテンツ管理機能を備えるものと定義している。
「緊急対応チームには、職員がオフラインでも協力して作業できる文書管理システムを備えた緊急対応手続き用ポータルが必要だった」
IRCのイントラネット導入の概念実証には、Python/Django(Webアプリフレームワーク)ベースのコンテンツ管理システムをフロントエンドに使用した。このフロントエンドには、Boxにアクセスするためカスタムコードを若干実装している。
「IRCのニーズはかなり特殊で、Box(の担当者)は困っていた。IRCが求めているのはiPadアプリではないことを理解してもらえなかったが、APIを提供してサポートしてくれた」とグッドマン氏は語る。
2013年のフィリピン台風の災害で、このイントラネットは真価を発揮した。「Boxは全職員が利用しており、チームの役に立った。この話の教訓は、IRCのニーズが特殊なため、ベンダーはそれに応えていなかったということだ。IRCのサプライチェーンは非常に特殊だ。IRCはソフトウェアの能力を自ら活用する必要がある」
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