「ムーアの法則は既に限界に達している」。米IBMのマイヤーソン氏に、原子レベル、量子力学の世界に突入しつつあるチップ開発の現状を聞いた。ムーアの法則はなぜ限界なのか? そして未来は?
IT業界の将来は、ハードウェアの画期的な進化(ブレークスルー)と革新的なソフトウェアにゆだねられている。
ハードウェアのブレークスルーをけん引してきたのは、驚異的な洞察力の持ち主で、1965年に米Intelの共同創設者となったゴードン・ムーア氏だ。だが、米IBMのイノベーション担当副社長であるバーニー・マイヤーソン氏は、(ムーア氏が半導体チップについて提唱した)ムーアの法則は既に限界に達しており、将来のチップには当てはまらないと考えている。
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マイヤーソン氏は、10年以上の長きにわたってシリコンゲルマニウムなどの高パフォーマンス技術の開発の最前線に立ち続け、2003年からはIBMのグローバル半導体研究開発部門の責任者を務めている。
同氏は「ゴードンは天才だ。何十年も変わらない真実を人生の中で発見した、数少ない人物のうちの1人だ」とムーア氏をたたえる。しかし、ムーアの法則を裏付けてきたチップ製造テクノロジーは変わり、今やこの法則は限界に達してしまったとマイヤーソン氏は感じている。
ムーアの法則に従って、チップの設計者たちは1年半ごとにチップの密度を2倍にしてきた。以前と同じ量の材料からチップが数的には2倍作れるので、チップの製造能力が倍増することになる。
しかし、チップに搭載するトランジスタの密度を倍増させることを繰り返すと、やがてチップに搭載されるトランジスタの数は昔の100万倍にもなる。そこで消費電力と熱の問題が発生する。これを克服し、当初のチップは消費電力が10ワットだったが、今や10ミリワットのチップが普及しているとマイヤーソン氏は語る。
「かつて、ノートPCを起動したときに突然火花が出るという、ものすごくワクワクする体験が簡単にできる時代があった。だが発火するチップでは、製品のリピーターになってくれるような顧客は獲得できない」(マイヤーソン氏)
半導体業界ももちろん、火を噴くチップを容認したわけではなかった。その後、研究者のボブ・デナード氏がチップのスケーリング理論を確立した。この理論のおかげで、チップの設計者はユーザーにやけどを負わせることなく、シリコンチップに搭載するトランジスタの数を倍増させ続けることができた。こうしてムーアの法則に従って、2倍の数のトランジスタを搭載しながら消費電力は従来品と変わらない新世代のチップが1年半(18カ月)ごとに生み出されたと、マイヤーソン氏は語る。同氏によると、デナード氏の理論はある時期までは有効だったが、もはや限界に達しているという。
チップは際限なく小型化できるものではない。「この問題は、1枚の紙を半分に折りたたむ場合に似ている。例えば50ポンド紙幣を半分に折りたたんでいくとする。8回までは折ることができるが、それ以上は、ちょっとした核爆発装置でも使わない限り無理だ」とマイヤーソン氏は指摘し、続けて次のように語る。
「トランジスタのサイズを半減させていくと、やがて層の厚さが原子1個の直径に等しい部分がトランジスタ内にできる。その層をさらに半分に縮めてトランジスタの密度を2倍にしようとするなら、それは核分裂ということになる。試してみたくなったときにはぜひ教えてほしい。私は避難するから」
マイヤーソン氏によると、2005年のチップには既に、厚さがわずか原子数個分のパーツが存在したという。トランジスタのパーツがそこまで薄くなると、動作が変わってくると同氏は話す。
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