アナリストが分析する、MicrosoftのAzure戦略の勘所Microsoftのクラウドファーストは成功するか?

クラウド市場の覇権を懸けて、MicrosoftとAmazonの競争が激化している。挑戦者のMicrosoftはAzureを強化してAmazonに挑む。注目すべきAzure戦略をアナリストが分析する。

2015年01月29日 08時00分 公開
[Janakiram MSV,Computer Weekly]
Computer Weekly

 米Microsoftと米Amazon Web Services(AWS)はどちらも間違いなく、クラウド業界の覇権を握ろうとして、エンタープライズ向けクラウドのトップシェア獲得に躍起になっている。

Computer Weekly日本語版 1月21日号無料ダウンロード

本記事は、プレミアムコンテンツ「Computer Weekly日本語版 1月21日号」(PDF)掲載記事の抄訳版です。本記事の全文は、同プレミアムコンテンツで読むことができます。

なお、同コンテンツのEPUB版およびKindle(MOBI)版も提供しています。


 2014年の最後の四半期にさしかかろうとするころから、クラウド界の最大手であるこの2社から何か大きな発表があるのではないかという期待が高まっていた。Amazonは11月の第2週に、ラスベガスでカンファレンス「AWS re:Invent」を開催した。Microsoftはそれに先立って、10月下旬にサンフランシスコでクラウド関連のイベントを開催した。同社CEOのサトヤ・ナデラ氏はMicrosoft Azure関連の発表を多数行い、Azureを大いにアピールした。以下で、クラウド市場でのMicrosoftの最新動向を詳しく分析する。

強力なGシリーズに配備可能なVMサイズ

 AzureがIaaS機能の提供を始めた時点では、競合するAmazonのElastic Compute Cloud(EC2)が当時提供していた機能に比べて配備できる仮想マシン(VM)のタイプはかなり限定されていた。ただしここ2年間で、MicrosoftはVMのタイプを続々と追加して企業の要件にも応えられるようにした。これと並行するようにAmazonは、コンピューティング(演算パワー)、メモリ、ストレージを最適化した新しいインスタンスタイプをC3、R3、I2インスタンスファミリーとして提供し始めた。

 エンタープライズのワークロードはクラウドへの移行が進んでいるが、(従来利用していた)オンプレミスのサーバ並みのパフォーマンスを実現するには、強力なインスタンスタイプが必要だ。どのプロバイダーも提供している、安価なローエンドのVM上でも動作するWebスケールアプリケーションとは違い、エンタープライズのワークロードには演算パワーとメモリの大量使用にも耐える、強力でモノリシックのVMが要求されるからだ。想定したスループットを実現するにはまず、高いIOPS(I/O per Second:1秒当たりの入出力処理回数)値を実現しなければならない。

 Amazon EC2のインスタンスタイプでは、例えばr3.8xlargeモデルは32個の仮想CPU(vCPU)、244Gバイトのメモリ(RAM)、SSDストレージを利用できる。このメモリ容量は、EC2のインスタンスタイプがサポートできる最大値だ。これに対して、Microsoftが先日発表したGシリーズ(インスタンス)のVMのサイズは、RAMの容量がAmazon EC2の2倍となっている。(Azure Gシリーズの)Standard_G5モデルのVMのサイズは、32コア(CPU)、244GバイトのRAM、6500GバイトのSSDストレージ。これは現在パブリッククラウドで提供されているVMの仕様としては最高の値だ。

 これは、独SAPのSAP、米OracleのOLTP、OLAP、PeopleSoftなど、負荷が高い基幹業務アプリケーションを利用している大規模組織の顧客にとっては大きなアピールポイントとなる。

 またCPUも、ここで触れておかなければならない重要なファクターだ。Amazon EC2のR3インスタンスは米IntelのXeon E5-2670 v2ファミリのプロセッサをベースとしているが、Azure GシリーズがベースとしているのはXeon E5 v3ファミリのプロセッサだ。MicrosoftはGシリーズを発表したことで、Azureがエンタープライズ向けのサービスで一歩リードしたように見える。ただしAmazonがこれに対抗して、今後新たなインスタンスタイプを追加する可能性は否定できない。

SSDベースのPremium Storage

 Azureはサービス提供開始直後、IOPS値が高くないために、入出力処理が頻繁なワークロードを稼働させるのが困難だという問題に苦しんでいた。

ITmedia マーケティング新着記事

news038.jpg

生活者の生成AI利用動向 10代後半はすでに5割近くが経験――リクルート調査
テキスト型生成AIサービスの利用経験者の割合は若い年代ほど高く、特に10代後半はすでに5...

news108.jpg

今度の「TikTok禁止」はこれまでとどう違う?
米国ではまたしてもTikTok禁止措置が議論されている。これまでは結局実現に至らなかった...