仮想化の弊害、“VMスプロール”との戦い方何が問題なのか?

手軽に仮想マシンを立ちあげられるようになった結果、仮想マシンが際限なく増殖する“VMスプロール”が問題になってきた。VMスプロールの問題と対処方法を紹介する。

2015年03月24日 08時00分 公開
[Chris Evans,Computer Weekly]
Computer Weekly

 サーバの仮想化は目覚ましい成功を継続している。デスクトップから始まった仮想化は、10年足らずの間にデータセンターのコア部分にまで拡大した。今や、仮想化はクラウド(プライベート/パブリック)の基盤となっている。普及度の点では、データセンターのワークロードの約80%は仮想化されているし、最近は新たにサーバを展開する場合のデフォルトのオプションは仮想サーバだ。

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 物理サーバは費用がかさむので、(社内で展開するには)まず予算を確保しなければならないし、その設置や構成には時間も労力も掛かる。仮想マシン(VM)のスピンアップは(既にハードウェアを配備していれば)物理サーバに比べてほんのわずかな費用しか掛からない。従ってオンデマンドでVMを新規展開するのは、物理サーバよりもずっと容易だ。しかも社内で大騒ぎしたり労力を掛けたりする必要もほとんどない。

VMスプロールとは

 新しいOSのテスト、ソフトウェアのアップグレード、ソフトウェアの新機能の開発などの目的で仮想マシンをスピンアップする際の技術的なハードルは、格段に低くなった。だが、そこから(VMの)展開モデルにリスクが生じるようになった。そのリスクは“VMスプロール”と呼ばれている。

 ITの世界で、スプロールは何年も前からみられた現象だ。テクノロジーが安価になり使いやすさの点でもこなれてくると、スプロールのシナリオが発生しがちだ。

 ストレージやファイル共有など、現在広く使われている仕組みが、この数年でどれほど進化したかを考えてほしい。このようなテクノロジーが登場した当初、ストレージは比較的高価だったため、時間と労力を掛けて格納するデータを吟味したものだった。とりわけメインフレームが主流だった時代は、その傾向が顕著だった。データは誤りがなく、記録する価値があると検証されて初めて書き込みが実行されるほどだった。

 現在は、ファイルはどんな場所からでも利用できるようになった。また、Dropboxをはじめとするファイル共有サービスが普及したことで、操作も簡単になった。その結果、誰もが大して必要でもないデータをとにかく保存するようになり、そんなデータが1人当たりGバイト単位で存在する。しかも、どんなデータを保存しているかを把握している人はほとんどいない。データについて発生しているこんなスプロール問題が、同様にVMの世界でも起こっているのがVMスプロールだ。つまり、VMを際限なく作成してしまうのだ。

 では何がVMスプロールの原因となるのか。例えば管理や制御を実行していないことなど、明確な原因もある。しかし(仮想化)技術そのものにも、この事態の誘因が含まれている。

 問題の一例として、VMがホストのインベントリから切り離されることが挙げられる。VMが故意にあるいは偶然に、ハイパーバイザーのインベントリから削除される場合がある。例えばVMwareのvSphere vCenterを使用していると、この事態が発生しやすい。

 VMは、別のホストクラスタへ移動させる際に意図的に(インベントリから)削除することがある。数千台ものVMを稼働させている大規模な環境では、(このような操作を繰り返すうちに)カタログの内容と稼働中のシステムの実態が一致しなくなるリスクはかなり高くなる。

 その上、VMでもフラグメンテーション(複数バージョンを同時に利用していて統一が困難な状態)は起こり得る。ストレージ環境でVMを頻繁にあちこちへ移動させていると、この問題が発生する。何らかの理由でコピー処理が失敗すると、幾つものVMDK(仮想マシンファイル)がコピー中の状態のままHDD上に残される。例え最終的にコピー処理が完了したとしても、不完全な古いファイルはHDDに残る。

 最後に、スナップショットの問題も指摘したい。複数のVMにまたがるスナップショットを多数作成すると、そのために膨大なHDDのキャパシティーが余分に消費される。

 しかしそもそも、なぜVMスプロールに対処する必要があるのか。ストレージは安価で、十分すぎる分量が提供されているのだから、問題視する必要はないのではないか。そんな疑問を持つ向きもあるだろうが、実は問題が多数ある。以下で詳細を説明する。

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