「オールフラッシュこそ基幹系に使う!」速さだけでない理由SSDとはここまで違う、オールフラッシュストレージの実力

クラウド&ビッグデータ時代を迎え、コスト削減や効率化に加え、ビジネス価値の創出を目的としたITインフラの見直しが急務だ。増え続けるデータを経済的に保管しつつ、高速なI/O性能を実現する具体策を示す。

2015年05月18日 10時00分 公開
[ITmedia]

 企業が扱うデータ量は増大し続けており、その種類も構造化データ、非構造化データを含めて多様化している。これに合わせてデータベースの機能も向上。「ビッグデータ」とも呼ばれる企業内外に蓄積された大規模データを基に、より高度で多角的な分析でビジネスへの貢献が叫ばれるようになってきた。

 一方で、こうした膨大なデータを活用する上で、多くの企業が頭を悩ませているのが、処理速度とデータ保管の問題だ。従来であれば夜間バッチで翌朝までにデータ処理できていたものが、翌朝になっても終わらず、通常業務にまで影響を及ぼすケースも増えてきているという。急激に肥大化するデータ量に対して、システム側の処理能力が追い付かなくなっているのだ。

 特に、データ処理の大きなI/Oボトルネックとなっているのがストレージシステムである。もちろん、このI/Oボトルネックを解消するために、ハイエンドストレージシステムの導入やHDD容量の追加、サーバのCPU/メモリの増強、データベースの設定やSQL文のチューニングなど、企業は既にさまざまな対策を取っている。だがそれでも根本的な解決には至らず、もはや万策尽きてしまったという状態の企業も少なくない。

 データ処理を高速化するのであれば、半導体フラッシュメモリを搭載したソリッドステートドライブ(SSD)のストレージシステムを活用するという選択肢もある。ただし、業務の中枢を担う基幹系システムにSSDベースのフラッシュストレージを採用するには、信頼性や可用性への懸念が拭えないのが現状だ。さらに、HDDと比べて導入コストが高価である点も、SSDの採用に踏み切れない大きな要因となっている。

 こうしたことから、フラッシュメモリを搭載したストレージは高速性に優れているものの、基幹系システムに使うのは難しいと考えるシステム担当者も多い。だが「実はそうではない」と指摘するのは、日本アイ・ビー・エム IBMシステムズ・ハードウェア事業本部 ストレージセール事業部 ビジネス開発の曽根田 清氏だ。

写真 写真 IBM FlashSystem V9000《クリックで拡大》

 日本IBMは、SSDが抱える課題を解消し、基幹系システムでの採用にも耐えられる信頼性・可用性を備えたオールフラッシュストレージシステムとして「IBM FlashSystem V9000」を提供。基幹系システムのI/O処理性能や高い運用コストに悩む企業に向けて積極的に提案している(写真)。

SSDで抑制されたフラッシュ本来の実力を解放する「IBM FlashSystem V9000」

 IBM FlashSystem V9000では、SSDを上回る信頼性・可用性をどのように実現しているのだろうか。まず、注目すべきなのが、同社の特許技術「Variable Stripe RAID」によるモジュールレベルでの可用性向上だ。

 SSDの場合、モジュール内部にRAIDのようなデータ保護の仕組みがなく、チップが1つでも壊れるとモジュール全体を交換しなければならない。対してIBM FlashSystem V9000では、モジュールを構成するチップ内のプレーン(チップの構成要素。1チップは16プレーンで構成)間でRAIDを構成する「Variable Stripe RAID」というアーキテクチャを採用。「万一チップに障害が発生しても、障害が発生した一部分のみを切り離し、残った空き容量でRAIDを数秒から数分という短時間で再構成できる」と曽根田氏は説明する。

 システムレベルで優れた信頼性・可用性を備えている点も見逃せない。SSDのストレージでは一般的に、SASインタフェースを介してRAIDを構成する。障害発生時にはリビルド完了まで冗長性がなく(RAID 5の場合)、I/O性能も著しく低下することになる。さらに、リビルド中に他のSSDに障害が発生した場合には、データが喪失してしまう恐れもある。

 一方、IBM FlashSystem V9000では、内部接続されたモジュール間で2次元方向にRAID 5を構成する「2D RAID」を採用。「リビルド時間はSSDと比べて、I/O負荷なし(サービス停止)の場合で86%、I/O負荷あり(サービス継続)の場合で90%短縮でき、多重障害によるデータ喪失のリスクを最小化できる」(曽根田氏)という(図1)。

図 図1 RAIDリビルド時間の比較(HDD/SSDのRAIDリビルド時間は、8台の300GバイトドライブによるRAID 5構成時の想定値)《クリックで拡大》

 信頼性や可用性の高さに加えて、高速性についてもSSDを上回る性能を実現している。SSDはHDD互換であることから、一時点での読み込み/書き込みは1回のみに限られる。だがIBM FlashSystem V9000は、専用回路(FPGA)に接続されたフラッシュチップに、同時並列的に読み込み/書き込みができる。並列度は、SSDと比較して67倍にも達する。

フラッシュストレージへの投資効率を高めるソフトウェア機能

 このようにIBM FlashSystem V9000は、従来のSSDとは一線を画す信頼性、可用性、高速性を備え、基幹システムでの利用にも十分耐えるフラッシュストレージシステムだといえる。最後に残る問題はコストだが、この点についてもIBMのSoftware Defined Storage「Spectrum Storageファミリー」との融合によって、フラッシュストレージへの投資効率を高めるさまざまなソフトウェア機能が用意されている。

 例えば「リアルタイム圧縮機能」は、物理フラッシュ容量に対して最大5倍のデータ容量を保存することを可能にする。一般的なストレージが備える重複排除機能の場合、データ量が増えるに従い性能劣化が起きたり、データ保護の観点から課題を抱えているものがある。その点、リアルタイム圧縮機能は、ディスクに書き込む前にデータを専用のアクセラレータで高速圧縮し、ストレージに格納されているデータ量の多少で、性能影響を受けることがない。

 また「ストレージ階層化機能」を実装しており、高速なフラッシュストレージと、SAN接続された低速な外部HDDストレージとの間で、アクセス頻度に応じたデータの自動階層化も可能だ。

 そして、複数ベンダーのストレージ機器(250種類以上)に対応したストレージ仮想化により、最大32Pバイトの外部ストレージを1つのプールとして管理できる。ストレージ環境の柔軟性を提供するだけでなく、仮想化された外部ストレージに対してもリアルタイム圧縮やシンプロビジョニングなどの各種機能を適用できる。

 これらの機能によって、物理ストレージの導入コストはもちろん、既存のストレージ資産も対象に、設置スペースや電力消費量、冷却コストの削減を図ることもできる。「3年の総所有コスト(TCO)を比較した場合、IBM FlashSystem V9000はHDDのストレージシステムの半分以下にコストを抑えられるケースもある」と、曽根田氏はコストメリットの大きさを強調する。

広がる導入事例 オンライン処理を1日当たり延べ554時間削減した例も

 IBM FlashSystemの導入企業も着実に広がりつつある。まだ日本のフラッシュストレージ市場がこれから立ち上がろうとしていた2014年に、基幹ストレージへの採用を決定した事例を公開している(日本IBM 2014年4月30日付プレスリリース:高信頼なストレージ基盤への本格採用が加速する「IBM FlashSystem」)。

 優れた効果を実感できるのが、キヤノンマーケティングジャパンの導入事例だ。キヤノンマーケティングジャパンでは、情報システムの応答時間の改善を図るためにストレージのフラッシュ化を検討。オンラインでの処理速度を10倍に向上することを目指して機器を選定し、事前の性能評価で約16倍の高速化を実現したIBM FlashSystemの採用を決定した。

 導入後は、オンライン処理の速度向上により、全利用者の1日当たりの処理待ち時間を延べ554時間も削減し、全社の大幅な業務効率化につなげることができたという。また、従来のHDDストレージと比較して省スペースで済むため、設置スペースもストレージ全体で76%の削減を実現。これに加えて、発熱量の小ささから省電力化の効果も得ているという。

無償診断プログラムで効果を実感

 日本IBMは現在、IBM FlashSystemをより安心して導入してもらうべく、無償診断プログラムを実施している。このプログラムは、IBM FlashSystemを導入検討する企業の環境で、どれだけの導入効果が期待できるかどうかを事前に無償診断するというものだ。既存システムの性能データや既存ストレージの構成、必要容量を提供するだけで、約1週間後に診断結果を報告する。

 無償診断プログラムでは、米Oracleのデータベースである「Oracle Database」を利用している企業向けには、稼働統計とワークロード情報のスナップショットを自動的に収集・管理する「AWRレポート機能」もしくはパフォーマンスを診断する「Statspack」に対応した分析を実施。その結果を基に、日本IBMが処理のボトルネックなどを確認し、IBM FlashSystemの導入で見込まれる性能向上とコスト削減に関する効果予測を提供する。またWindows系システム向けにはWindowsパフォーマンスモニター、Linux/UNIX系システム向けにはI/O状況を調べるiostatコマンドによるデータなどを基に、効果予測を提供する。

 診断プログラムの結果、大きな導入効果が見込まれる場合には、IBM FlashSystemの実機に触れて導入効果を実感できる「実機検証プログラム」を提供する。さらに、IBMが誇る世界のストレージ開発拠点やサービスチームと連携した「導入支援プログラム」も用意。質問対応から実機を使用した構築技術の教育実施まで、企業が抱える課題への解決策を示し、新しい価値の創造/実現を支援する。

 基幹ストレージシステムのI/Oボトルネック解消が急務となっている企業は、IBM FlashSystemの導入が、課題解決に向けた有力な選択肢になるはずだ。


提供:日本アイ・ビー・エム株式会社
アイティメディア営業企画/制作:TechTargetジャパン編集部