クラウドファーストの今日、“最後の足かせ”となっているのがERP。ミッションクリティカルな基幹系システムだけにオンプレミスから移行させることに不安を抱く企業も多い。どうすればいいのか。
多くの企業にとって、「ERP(Enterprise Resource Planning)」はビジネスの根幹を担う重要なシステムである。ERPによってあらゆる経営資源を統合的に管理し、最適化を図ることで、経営活動を効率的に行うことができるようになる。
しかし組織によっては、このERPの存在が負荷になっているケースもある。昨今、企業内のシステムをクラウド化することによって、より迅速・柔軟で効率的なビジネスを行う動きが強まっているが、ERPだけは基幹系システムという特性上、いまだにオンプレミスで運用することを選択している企業が少なくない。
潤沢な予算や人材を確保できない組織のIT部門にとって、ERPの運用負荷は積年の課題だ。しかし、最近ではようやく「ERPもクラウドで」という動きが活発化してきている。ERPをパブリッククラウドに載せることでどのような使い方ができるのか、導入のポイントはどこにあるのか。
クラウドサービスの浸透と技術の発展によって、基幹系システムを担うことのできるパブリッククラウドサービスが増えてきている。
2014年6月、SAPジャパンと日本マイクロソフトは、「Microsoft Azure」でSAP ERPのアプリケーション群をサポートする「SAP on Azure」の取り組みを発表した。これにより、「SAP Business Suite」や「SAP Business All-In-Oneソリューション」などのアプリケーション群と、Azure対応版の「SAP HANA」開発者向けエディションが、Azureで正式に利用できるようになった。
SAP on Azureによって、ERPの初期導入費用、ハードウェア/ソフトウェアの運用費、電力などのデータセンターファシリティ設備の費用などを大幅に削減できるはずだ。
しかし、ERPの導入に関しては、やはり解決すべき課題やポイントが存在する。自社にとってパフォーマンスが得られるか、可用性が確保できるか、導入後の運用をどうすべきかなど、さまざまな検証と設計、構築作業などが必要となる。
そこで活用したいのが、日本ビジネスシステムズ(JBS)の「『SAP on Azure』ソリューション」である。同社は、事前のアセスメントや要件定義、インテグレーション、導入後のサポートに至るまで、SAP on Azureの導入を総合的に支援するサービスを提供している。
同社 マーケティング本部 ビジネスソリューション開発部長の田中祐司氏は、「私たちは、SAP ERPもAzureも、古くからユーザーかつベンダーとして取り扱っていますので、非常に多くのノウハウと技術を蓄積しています。SAP on Azureは、検証環境やDR環境も迅速に構築でき、個別の要件に合わせた実装にも的確に対応することが可能です。ユーザーとしての知見を生かした運用サービスも特長です」と述べる。
田中氏が述べているように、JBSが提供するSAP on Azureサービスの最大の特長は、JBS自身がユーザーとして活用している点にある。だからこそ、ユーザーの要望を正確に判断し、設計や実装へ反映できる力があるのだ。
JBSでは、15年以上にわたってSAP ERPを活用してきた経験を持つ。そして既存のERP環境のハードウェア更改に合わせて、まずは開発環境としてSAP on Azureを採用することに決めた。
JBSのIT部門を統括する執行役員 業務本部長 祝迫俊志氏によれば、「当社はSAP ERPを15年以上にわたって活用しています。特に問題視していたのは、開発用のハードウェアの運用保守費用でした。最近では開発も落ち着いており、活用の頻度は減っていました。しかしながら、開発作業は定常的に発生するため、システムを停止させるわけにはいかず、大きなコストが掛かっていました」という。
単に活用の頻度が低下しているだけならば、小規模なオンプレミスシステムでも対応できるだろう。しかし、不定期に開発の頻度が高まるケースがあるのが問題だった。例えば、消費税などの法制度が変化したり、新しいビジネスの企画で開発が必要になったりするケースである。
オンプレミスシステムの場合は、予測される最大値に合わせてサイジングしなければならない。突発的な要求に対して、迅速かつ柔軟にリソースを増減できるのは、やはりクラウドだ。
SAP ERPの運用を担当する業務本部 情報システム部 ビジネスアプリケーション課の土坂裕人氏は、「現在、SAP on Azureは午前8時半から午後8時まで稼働させています。Azureは時間課金のため、使った分のコストで済むというわけです。以前からWindowsサーバで運用しているため、違和感なく利用できています。パフォーマンスも従前と変わりません。知らなければ移行にすら気付かないと思います」と、SAP on Azureを高く評価する。
現在のところ、JBSは開発環境としてSAP on Azureを活用し、オンプレミスのSAPとハイブリッド構成を採っている。この使い分けは、ERPに対するニーズによって変化するだろう。祝迫氏は「技術的には本番環境として活用することもできる」と述べて、ERPだけでなく他の情報システムの搭載を含めて、積極的にAzureの活用範囲を広げていきたいとしている。
JBS社内において、SAP on Azureの導入を担当したシステムインテグレーション統括本部 インフラストラクチャーソリューション本部 プラットフォームソリューション部の後藤邦生氏は、SAP on Azureへの移行は極めてスムーズに実行できたと評価している。
「当社では、Microsoft Azureとの高速なプライベート接続を実現する『Azure ExpressRoute』を構築していることもあって、1週間という短期間で移行することができました。特にWindows環境であれば、オンプレミスと比較すれば極めて短期間で導入できると思われます。他のクラウドサービスと比べて習得しなければならないスキルが少ないことも特徴です」(後藤氏)
JBSのように、デモ環境や開発環境として採用する他、既に本番環境として導入している例もある。ぜひ検討してほしいのは、災害対策としての活用だ。前述したように、Microsoft Azureはシステムそのものが堅牢で、かつ東西リージョンを選択的に利用することができる。この仕組を活用して、有事の際のバックアップ先として活用する方法である。もちろん、本格的なDR環境の構築には、ExpressRouteの導入やバックアップソリューションとの組み合わせなどが必要となるが、そこはJBSの得意とする分野だ。
「私たちは、日本マイクロソフトと強力なパートナーシップを築き、同社のエンジニアと直接コンタクトしたり、高度なトレーニングを受けたりして、技術力を磨いています。また、Microsoft Azureのクセなども情報を受けて把握しているため、SAP on Azureで求められる設計や運用体制、他のシステムとの連携などを的確に提案・整備することが可能です。エンタープライズ契約を含めて、総合的なサービスを提供できるのは、当社の強みです」(後藤氏)
SAP on Azureが、自社のERP環境においてどこまで有効か、どのような構成が採れるのか、どんなメリットが得られるのか。ユーザーとしての視点とベンダーとしての視点を兼ね備えたJBSだからこその回答がある。
JBSは、マイクロソフトとの共催セミナーを定期的に開催し、豊富なノウハウを広く提供していきたいとしている。より高度なハンズオンセミナーも企画中とのことだ。ぜひ参加して、SAP on Azureの魅力を知っていただきたい。
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