クラウドの信頼性向上で注目される“SAP ERP on クラウド”。特に既存Windows環境と親和性が高い「Microsoft Azure」は移行先の有力候補だ。だが、一般的にSAP ERPの移行やアップグレードは高リスク。プロはこの課題をどう解決しているのか。
パブリッククラウドサービスの進歩と浸透によって、さまざまな業務システムの移行が進んでいる。例えば、高いシェアを誇るERP(統合業務システム)の「SAP ERP」は、2014年からクラウドサービス「Microsoft Azure」が正式にサポートし、「SAP on Azure」が実現できるとして注目された。オンプレミスシステムのリプレースのタイミングを見計らって、柔軟で拡張性が高く、資産を持たずに利用できるクラウドのメリットをERPにも適用しようという動きが活発化している。
しかし、既存のERPをクラウドへリプレースしようと検討を始めると、さまざまな課題に直面する。そもそも、自社のERPをクラウドへ持っていけるのだろうか。本当にクラウドのメリットが生かせるのだろうか。どうやって検証し、テストすればよいのか分からず、悩んでいる読者もいるのではないだろうか。
本稿では、特にSAP ERPに焦点を絞り、Microsoft Azureへの移行に当たってどのようなところに注意すべきか、その後の運用まで含めた対策・手法について解説しよう。
既存のSAP ERPについて、アップグレードやハードウェアリプレースを検討するとき、これを従来通りのオンプレミスシステムとして再構築するか、より積極的なメリットの享受を目指してクラウドへ移行するか、判断は非常に難しい。
使い慣れたオンプレミスシステムであれば、それほど不安はないだろうが、運用保守に掛かっていた巨大な費用はそのまま継承されることになる。
クラウドサービスであれば、高い柔軟性と拡張性が確保され、ハードウェアリプレースで悩むことはなくなり、インフラの運用は事業者に任せられる。資産を持つこともなく、使用した分だけの課金で済み、コストの大幅な削減が期待できる。
特に「Microsoft Azure」は堅牢なクラウドサービスとして知られており、国内の東西リージョンにデータをレプリケーションすることでディザスタリカバリー対策も可能というのは大きいメリットだ。構成によっては、BCP(事業継続計画)にも活用できることだろう。
このようなメリットがあっても、クラウドへの移行を懸念するのは、ERPがミッションクリティカル性の高いシステムであるからだ。クラウドへ移行して、アプリケーションやアドオンが従来通りに利用できるのか、適切なパフォーマンスと可用性を得られるのか、不安に感じるのは当然である。
従って移行を検討するに当たっては、既存のSAP ERPの分析とテストが重要である。また移行後の運用についても、できるかぎり不安を解消したい。そこで役に立つのが、電通国際情報サービス(ISID)が提供しているSAP ERPのライフサイクル管理支援サービス「Panaya」である。
Panayaは、世界で標準的に利用されているERP影響分析サービスである。SAP ERPに特化したクラウドベースのアプリケーションで、ワールドワイドでは1600社以上、国内においても既に160社以上で採用されている。ISIDは、国内唯一の販売代理店としてPanayaを提供しており、活用のためのノウハウを蓄積している。
BS事業部 グループ経営コンサルティング4部 プロジェクトマネージャ―の清田憲史氏は、サービスの特長を以下のように述べる。「当社ではPanayaを活用し、既存のSAP ERPを移行する際の“影響分析”と“テスト”を実施します。“影響分析”は移行に合わせたサポートパッケージの適用でどこを改修すればよいのか、不要なアドオンが残されていないか、適切なテスト範囲はどの程度かといった影響範囲を特定します。“テスト”は移行のみならず、運用メンテナンスやアップグレード、ロールアウトなどで必ず発生するテストの効率化を可能にしています。Panayaを通じて検証することで、システムが変化したときの影響範囲の早期特定とテストの効率化を行えるのです」
つまり、事前にさまざまな情報を得ることで、移行作業や運用まで含めた見積もりを正確に行えるというわけだ。Panayaは、そのための分析サービスとしてグローバルスタンダードの地位を獲得している。
「企業によっては、既存のSAP ERP環境をそっくりそのままMicrosoft Azureへ移行したいと考えたり、将来的にはインメモリデータベース『S/4 HANA』の採用を含めたアップグレードパスの1ステップを踏みたいと考えたりとさまざまです。Panayaは、そうした多様なニーズに対して柔軟に分析できるので、どのような方法が最適かを推し量るのにも活用できます」。BS事業部 グループ経営コンサルティング4部 小枝康二氏はこう述べる。しかも、この事前の分析は無償で提供するというのだ。
一般的にSAP ERPの移行は、予定外の事態が発生することが多い。特に注視したいのは自社開発のアドオンだ。
アドオンはSAP ERPのユーザー企業にとって重要な資産であり、これまで通りの運用を行うためには欠かせない存在となる。システムが変化することによって、この資産が使えなくなる恐れがある。しかし、移行後の実運用で初めてトラブルに気付くケースも少なくない。結局、再開発のためのコストが新たに発生してしまうことも多い。安価に移行を任せられると思ったら、予算オーバーになってしまうかもしれない。
ISIDは、Panayaで分析とテストをして最適な移行方法を決定した上で“確定見積もり”を出す。事前に改修が必要なポイントが明確に分かるので、後から付け足すものがないのだ。
SAP ERPの移行は、ユーザーからヒアリングして計画や設計をまとめるために時間もかかるし、認識の違いが発生する恐れもある。Panayaの分析は、情報の正確さを確保しながら48時間以内で完了する。テスト機能を開発に応用することも可能だ。こうしたPanayaのメリットを生かせば、移行プロジェクトの迅速化を図り、短期間での移行が可能になる。
「特に中堅・中小規模の企業にとって、SAP ERPの移行は重要かつ困難なミッションです」と、BS事業部 ES営業2部 豊崎達也氏は述べる。「安価なクラウドを検討しているのに、作業費が高額になるのはおかしなことです。私たちは、品質の高いサービスを適正に提供することを心掛けています。またPanayaが自動作成するテスト結果のドキュメントは、経営者への報告や監査にも活用することが可能ですし、テスト再実行機能によりテスト工数の大幅な削減を実現できます。そうしたメリットによって、テストコストの6割を削減できると試算しています」(豊崎氏)
さらに重要なポイントとしてISIDが指摘するのは、移行後の運用だ。Microsoft Azureは、既存のWindowsシステムとの親和性が非常に高く、移行後も違和感なく利用できることが高く評価されている。とはいえ、ミッションクリティカルなERP環境をクラウドで運用していくためには、Microsoft Azureの性質や癖を知り、それに合わせた運用を行う必要がある。
そこで合わせて活用したいのが、ISIDのグループ企業であるISIDアドバンストアウトソーシングが提供するSAP on Azure運用サービスだ。
もともとISIDアドバンストアウトソーシングは、オンプレミスシステムの運用アウトソーシングを担う事業者として設立され、Microsoft Azureをはじめとしたクラウド環境の運用も手掛けるようになった。
統合監視・運用管理システム「AOSMS」は、オンプレミスやクラウドを問わず、企業のシステム環境を統合的に監視、運用、保守するITILベースのサービスで、豊富なメニューが特長だ。インフラだけでなく、SAP ERPを含めたアプリケーションに関しても「AMOサービス」として運用支援と保守を提供している。
こうしたサービスを組み合わせることによって、SAP on Azureを安定的に稼働させられるようになる。
「当社は、SAP ERPの移行段階からISIDと共同でプロジェクトに参画し、移行後の運用について検討や提案をします。運用について事前に検討するからこそ、適切な移行が可能となるのです」と、ISIDアドバンストアウトソーシング テクノロジーサービス営業部 柴田 雄一郎氏は述べる。また、Panayaの情報は同社にも共用され、その後の運用サービスに活用される。
SAP ERPの移行は、企業にとって一大プロジェクトになるはずだ。ところが移行の旗振り役の情報システム部門は、ユーザー部門がERPでどのような運用をしているのかを知らず、それが移行後に大きな問題へと発展する恐れもある。移行前の状況を正確に分析して、事後の状況を予測した設計・開発を行い、実際の運用まで提供できるのは、グローバルスタンダードのPanayaを活用し、さまざまな経験・知見を持つISIDの特長である。
どこから手を付けてよいか悩んでいるのであれば、まずはプロフェッショナルへの相談から始めてみてはいかがだろうか。
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