低消費電力かつハイパフォーマンスなコンピューティング環境を――早稲田大学笠原研究室が取り組む技術に産業界の注目が集まっている。笠原氏に研究の狙いと、コンピューティング環境の将来像を聞いた。
日本の科学技術計算の中核を担うスーパーコンピュータ「京」が、電力コストの問題から涙ぐましいコスト削減を強いられている。京がフル稼働した際に、消費する電力量は12.65989MW(スーパーコンピュータの性能ランキング「TOP500」のベンチマーク実施時)。これは一般家庭約3万世帯分もの電力になり、年間20億円を超える金額であり、計算機能力をフル稼働させるベンチマーク実施時でなくとも2万5千世帯分の電力消費となっているという。電力コストの変動が、運用コストに与える影響はすさまじいものになることが容易に想像できる。
京が、電力問題で稼働を危ぶまれているという事実は、ビッグデータ時代を迎え、システムが大容量データ処理を求められている今、決してハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)の領域だけにとどまる問題ではなく、今後のコンピューティング環境を考える上で看過できない大きな課題を示したといえる。多くのコンピューティング環境において、消費電力量の抑制は共通の課題なのである。
多くの一般読者は「京ほどの巨大スーパーコンピュータでなければ消費電力は大きな問題ではない」と考えるかもしれない。多少負荷が高まる時間帯に電力を使ってしまうのは致し方がない、と。しかし、ご自身が利用しているコンピュータや、データセンターでは、その構築に際して必ず電力やファシリティのコストが考慮されていること、そして使用料に反映されていることを忘れてはならない。
さらに、システムが処理しなければならないワークロードが増え、サーバ台数も増加し続ける中、それらのサーバを集約すれば、稼働時に熱を発するプロセッサが過密に配置されることになる上、冷気との接触面積も減ることから、発する熱を排出するためには工夫が必要になる。データセンター用のサーバであれば、空気の流れを計算したり、外気との温度差を利用したりといった廃熱の工夫を施し、電力で空調設備や廃熱ファンを駆動する必要がある。これらのコストは利用者に結果的に転嫁される仕組みになっているだろう。電力消費問題は人ごとではないのである。この課題を解決し、かつ高いパフォーマンス性能を両立する方法があるというのだ。
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