意外とハードルの低いペーパーレス、経理財務部門が語るメリット社内文書の電子化で会社が変わる

法改正をきっかけに注目される帳票や社内文書の電子化への取り組み。やるかやらないかはそれぞれの企業次第。しかし、取り組んだ企業だけが実感できる効果がある。果たしてそれはどのようなものか?

2016年06月14日 13時00分 公開
[ITmedia]

 電子帳簿保存法など法制度の改定により、経理財務部門においても伝票類などいわゆる「帳票」をはじめとする社内文書の電子化への取り組みに注目が集まっている。これまでスキャナー保存に課せられていた厳格な要件が大幅に緩和され、国税関係帳簿書類などの電子データ化による管理がしやすくなったのだ。

 とはいえ、やみくもにこれらの電子化を進めるわけにもいかない。要件が緩和されたとはいえ、PDF化さえしていれば何でも有効というわけではない。要件を満たしていなければ結局、電子化した帳票を紙に出力して保管することが必要になる場合もある。こうなると本末転倒だ。

 また、目的や用途をあまり明確に考えず電子化してしまったために、必要な書類がかえって探しにくくなってしまったという、笑えない冗談のような話もしばしば聞こえてくるところだ。

 ペーパーレス化というと、用紙やインク代、保管スペースといった目先のコスト削減だけに目を奪われがちだが、文書の電子化によってもたらされる効能は、実はそれだけにとどまらない。業務の効率化による生産性の向上、さらには電子化され、統合化されたデータを経営に活用することができてこそ、この分野に投資する本当の意味がある。

 本稿では、まず帳票を例に、社内文書の電子化を手軽に進めつつ、そのメリットを最大限に引き出すための方法を探っていこう。

帳票電子化が本格化する背景とは

 まず企業の帳票電子化を取り巻く外部環境について軽くおさらいしておこう。

 企業の帳票電子化は古くて新しい課題だ。総勘定元帳をはじめとする国税関係帳簿書類を電子データで保存することを認めた「電子帳簿保存法」は1998年7月に制定された法律だが、要件が厳しく、実際には帳票電子化はなかなか進んでいなかった。

 大きな要因の1つが、領収書などの紙文書をスキャンして電子保存することが認められていなかったことだ。電子帳簿保存法はもともとコンピュータで作成したデータしか対象にしていなかったのだ。これが緩和されたことで、スキャンによる電子保存が認められるようになったものの、その対象は額面3万円未満の領収書や契約書などに限られていたため、依然として状況は変わらなかった。

 しかし、さらなる改正が行われ、金額の制限が撤廃されることになり、「ペーパーレス」は企業の経理業務において、ようやく現実的な選択肢になってきた。

 この波をいち早く捉え、2014年から帳票電子化に向けた取り組みを始めていたのが、帳票ツールやBIツールを提供し国内で高いシェアを誇るウイングアーク1stだ。同社は自社製品である帳票電子活用ソリューション「SVF PDF Archiver」を使って、国税関係帳簿書類の電子化にチャレンジすることになった。

藤本氏 ウイングアーク1st 執行役員 管理本部長 兼 経理財務部長 藤本泰輔氏

 「経理の業務は、紙であふれています。今までは国税の税務上の要件として、国税関係帳簿は紙に打ち出して、とじて備えておかないといけませんでした。経理部門だけでなく、営業管理部門が出す見積書や請求書も控えを取らないといけません。しかし、それらは監査や税務調査のときにしか使わないものです。極端にいうと、置いておくためだけに、労力も保管場所も割いていたようなものです」

 こう語るのは、同社執行役員 管理本部長 兼 経理財務部長の藤本泰輔氏だ。この言葉は、経理や財務に携わったことのある多くの人が抱くであろう本音を代弁しているといえる。実際、従業員数520人(連結ベース、2016年3月1日現在)の同社の経理部門だけでも、控えの用紙を保管するために「120×180センチくらいのキャビネットを2、3個使用していた」という。

「国税」のハードルは意外と低かった

 藤本氏らが動き始めたのは、2014年の夏頃だった。国税関係帳簿の電子化に対応するためには、電子保存を始める日の3カ月前までに所轄税務署に申請を出す必要がある。

 「何から手をつけていいのか全く分からなかったので、まずは直接、国税庁へ聞きに行きました。必要な書類や書き方まで非常に細かく丁寧に教えていただきました」(藤本氏)

 ウイングアーク1stでは、国税関係帳簿の管理はERPシステムの「GRANDIT」を、自社が発行する請求書や見積書のデータ管理には自社製品のBIツール「Dr.Sum EA」を、それぞれ使用している。国税関係帳簿や国税関係書類をPDF化して保管するためにはこれらのツールとSVF PDF Archiverが連係するわけだが、税務署への申請の際に、データ化された請求書や見積書が税務署の要件を満たしているか、システムの審査もしてもらったという。

 こうした国税庁へのヒアリングも含め、申請の準備にかかった期間は約3カ月。11月に税務署へ申請を出して承認され、翌年の2015年3月から運用がスタートした。晴れて経理部門や営業管理部門のペーパーレスが実現し、それまで月初に1日掛かりで行っていたファイリング業務や、蓄積する一方の紙の保管や管理から解放されることになったのである。

社外から受け取った書類も全て電子化

 ここまではPCで作成された自社発行の書類に限った電子化の話であり、経理部門や営業管理部門といった一部の担当しかメリットは享受できなかった。そこで次に藤本氏らが挑んだのは、取引先や外注先など、社外から受け取った書類の電子化だ。2015年6月頃より検討を進め、藤本氏は再び国税庁へ足を運び、SVF PDF Archiverを使ったスキャナー保存について、システム相関図を見せたり、社内規定の変更をしたりしながら、調整を重ねた。そして、無事に同年11月に税務署から承認を受け、2016年の3月から運用を始めている。

ワークフロー ウイングアーク1stにおける帳票電子化のワークフロー

 社外から受領した書類には、経費精算に必要な全ての領収書も含まれる。このため、全社的に業務フローを変革する必要が生じる。経理の立場からすれば電子化にメリットがあっても、ユーザー部門が同じように感じてくれるとは限らない。「今まで慣れたやり方をわざわざ変えたくない」と考えるのも無理のないことだ。同社ではどのように進めていったのだろうか。

 「申請のワークフロー自体はこれまでより大きく変更する必要がなかったため、ユーザーに比較的負担の少ない形で、かつ電子化のメリットを実感してもらうことができたと思います。例えば経費精算の際、今までは申請者がシステムにデータを入力しても、別途提出する紙の領収書の原本が経理部に届いて申請内容と照合するまでは処理が進まず、必ずタイムラグが発生していました。しかし、今は申請者が複合機でスキャンすると自身のPCへデータが送られ、それを添付して申請すれば上長が承認した時点でSVF PDF Archiverが自動的にタイムスタンプを付与して、データをサーバに保存します。もちろん、経理としても原本の到着を待って伝票ファイルにとじる必要がなくなったので、非常に楽に、またスピーディーになりました」(藤本氏)

領収書 領収書電子化の業務フロー

 帳票の電子化でセキュリティ面を心配する人もいるかもしれないが、SVF PDF Archiverであれば、その点の対策も万全だ。ユーザーを「一般ユーザー」「管理者」「部門単位」など任意に振り分け、アクセス権限をフォルダ単位で設定することができる。2次利用に関しても、操作ログを取得して、いつ、誰が、どこで、何をしたかを把握できる。蓄積、ダウンロードしたPDF帳票へのタイムスタンプの押印、ログインユーザーID情報の埋め込みも可能になっている。のぞき見や情報の改変を防ぐ仕組みも整っており、紙で管理するよりも、よほど確かな管理を実現できるといえるだろう。

 加えて、PDFを大量に保存するとサーバの容量を圧迫しないかと気になるところだが、SVF PDF Archiverでは書類の種類ごとに、規定されている税務要件の保管期間に合わせ、古いものから自動で破棄する機能も備えている。

ペーパーレスは目的ではなく手段

 管理面でメリットが大きい帳票電子化だが、それだけが目的では、まだ投資判断の材料としては弱いと考える向きもあるだろう。電子化した帳票データをきちんと活用できるのかが、企業にとっては重要なポイントになってくる。

 単にPDFになっただけの帳票データは、必ずしも検索性に優れているとは言い切れないものだ。きちんとインデックスが管理できていないため、検索しても欲しい情報がすぐに見つけられないというケースはよくある。また、ファイルの名付けルールが統一されていないと、複数人で利用するときに混乱してしまうといった問題も発生するだろう。極端な話をすれば、いっそ紙のままであった方が、形がある分探しやすいということさえあるかもしれない。

 しかし、SVF PDF Archiverならば、こうした心配はいらない。同製品ではPDF化された膨大な帳票データ群を1つのデータベースのようにして、文字や数字、日付などの検索条件で自在に検索することが可能だ。部分一致や範囲検索など細かい条件検索も実現する。また、日本語だけでなく8カ国語に対応している。保存した帳票からすぐに目的のファイルを見つけ出して再利用できるのだ。

 こうした特長を生かし、ウイングアーク1stでは、単に帳票電子化にとどまらず、「その次」の活用方法を模索しているという。

 「帳票電子化を実際に進めてみて、仕事は大幅に効率化し、業務の生産性が飛躍的に上がりました。省スペースやコスト削減といった目に見えるメリットだけでなく、書類に追われる心理的な負担から解放されることで、得られた成果は大きかったと思います。しかし、ペーパーレスは目的ではなく手段です。次の課題として、BIツールや他のシステムとの連係性を生かしながら、SVF PDF Archiverに保存された帳票データを活用して経営に役立てていくことを考えています」と藤本氏は語る。

 今回は経理・財務業務における活用事例を紹介したが、「帳票電子活用ソリューション」の活用の幅はこの限りではない。製造や建築関係など、いまだに大量の紙とデータの照合に追われている企業であれば、規模の大小を問わず、そのメリットを享受できるはずだ。


提供:ウイングアーク1st株式会社
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