「達人」が伝授、生産性が上がる社内文書活用のポイント鍵になるのは「検索性」

スピーディーかつ柔軟な検索、リアルタイムの情報共有、タブレットの活用。電子化された文書を生かしてどう業務を効率化するか。エキスパートと共に考える。

2016年08月23日 10時00分 公開
[ITmedia]

 法改正などの話題もあり、社内文書、とりわけ領収書や請求書など帳票類の電子化に関心が集まっているが、実際、現時点で帳票類を100%紙で管理しているという企業は少数派といえる。TechTargetジャパンが2016年5月に実施した電子帳票についてのアンケート調査(調査概要は欄外を参照)では、帳票類を主にPDFなどのデータとして保管している企業は21.2%、紙と電子帳票が混在している企業が57.3%だった。紙と文書が混在している企業が最も多いという状況は、一元的な管理をより難しくしているともいえるだろう。

画像 電子帳票の利用状況。回答者全体の57.3%が「紙書類と電子帳票が混在」した環境で勤務(出典:ウイングアーク1st/アイティメディア「電子帳票についてのアンケート」)

 また、同調査では電子帳票データの管理方法として全体の59%が主に「ファイルサーバの共有フォルダ内で保管・管理している」と回答している。ファイルサーバは専用ツールと比べてコストが安く利用が容易であるが、半面、運用管理が煩雑になり、検索性の低下などの問題が発生するというデメリットもあり、全体的な使い勝手ということになるとベストの選択とは言い難い。

画像 電子帳票データの管理方法。主に「ファイルサーバの共有フォルダ内で保管・管理している」と回答した人は59%に上る(出典:ウイングアーク1st/アイティメディア「電子帳票についてのアンケート」)

 実際、文書管理の現状について「とても満足」または「ある程度満足」とした回答は44%。「あまり満足していない」または「まったく満足していない」という回答は56%で、半数以上が電子化された文書の在り方に不満を抱えている実態が明らかになった。

画像 現在の電子帳票管理方法の満足度。全体の44%が満足で同56%が不満と、やや不満派が多くなっている(出典:ウイングアーク1st/アイティメディア「電子帳票についてのアンケート」)

 電子化した社内文書を上手に活用するためにはどうすればいいのか。文書管理のプロである文書情報管理士と共に考えてみよう。

「電子帳票についてのアンケート」調査概要

  • 調査対象:TechTargetジャパン会員
  • 調査方法:ターゲティングメール告知によるWebアンケート
  • 回答数 :398人
  • 調査期間:2016年5月20日〜5月27日
  • 調査主体:ウイングアーク1st/アイティメディア

社内文書電子化、最も期待されるのは「検索性」

画像 ウイングアーク1st 営業本部 ビジネスデベロップメント統括部 テクニカルセールス部 第3グループ直江 優氏

 「過去に帳票電子化に取り組みながらも浸透していない、あるいは、紙でやっていた作業がただデジタル化されただけにとどまるケースが多いのは、文書の価値を会社として理解していないからです」。こう主張するのは、ウイングアーク1st 営業本部 ビジネスデベロップメント統括部 テクニカルセールス部 第3グループの直江 優氏だ。直江氏は日本文書情報マネジメント協会(JllMA)認定の文書情報管理士の資格を有する、いわば文書管理のプロフェッショナルである。

 「アナログとデジタルではデータ活用の仕方が根本的に違います。文書をデジタル化して、活用可能な“資産”としなければいけない。特に活用ニーズが高いのは、デジタルの特性を生かした検索機能です」(直江氏、以下、かぎかっこ内のコメントは全て同じ)

 直江氏の言葉を裏付けるように、TechTargetジャパンの調査でも現在の電子帳票管理課題として「必要なときに必要な電子帳票を探し出すのが難しい」(62%)という声が最も多く挙がっている。

画像 現在の電子帳票管理の課題として、最多は「必要なときに必要な電子帳票を探し出すのが難しい」(62%)(出典:ウイングアーク1st/アイティメディア「電子帳票についてのアンケート」)

 紙の帳票はファイリングなどによって分類し、整理して保管する。そして後から探す際には、収められたファイルを取り出して1枚ずつめくりながら目的の帳票を見つけ出す作業が必要だ。その点、電子化された帳票はキーワード検索によって瞬時に探すことができるというメリットがある。

 とはいえ、単に電子化さえすればいいというものではない。用いるツールによって検索精度は大きく変わってくる点には注意が必要だと直江氏は語る。実際、電子化したことでかえって探しにくくなる可能性さえあるという。

 「そもそも問題なのは、帳票作成と帳票電子化活用のツールでメーカーが異なるなど、相互に連携が取れていないことです。こうした場合、元の文書からOCRでテキストを抽出し、それを埋め込むという加工が必要になります。いかにOCRの精度が向上したとはいえ、100%正確に読み取ることは難しく、どうしても誤認識を含みますから、検索の精度にも影響を及ぼします」

 これでは紙の文書をスキャンするのと何も変わらない。せっかく電子化したデータを用意したのに活用ツールの側が読み取れないのでは意味がない。

 その点、ウイングアーク1stの帳票電子化活用ツール「SVF PDF Archiver」は、市場シェアの48.6%(※)を占め国内で18000社以上が導入している帳票作成ツール「SVF」との連携を考慮して設計されており、SVFで元のデータからPDFファイルを作成する際に、データに含まれるテキストデータを正確に埋め込む仕様になっている。そのため、検索精度も高い。

※出典:ミック経済研究所「ミドルウェアパッケージソフトの市場展望【運用・DB編】 2015年度版」2014年度帳票運用パッケージ出荷金額(メーカー出荷)。

帳票特有の検索の難しさを帳票作成ツールとの連携で解消

 さらに、帳票の検索に関しては、ただ正確なテキストが埋め込まれていればいいというものではないと直江氏は指摘する。帳票の検索には、特有の難しさがあるのだ。

 具体的には、単純なキーワード検索では目的以外の帳票が多くヒットしてしまうという問題がある。例えば、ある商品について8〜9個注文があった際の帳票を検索したい場合に「商品名」「8〜9」で検索を掛けると、「その商品と同時に別の商品を8個注文した」「その商品を8日に注文した」という帳票までが検索結果に入ってきてしまう。

画像 帳票を文書単位で単純にキーワード検索すると、関係ない検索結果まで拾いがち

 このような帳票検索特有の問題についても、SVFとSVF PDF Archiverの連携が生きると直江氏は解説する。「SVF PDF Archiver は、SVFで設計した帳票の構造を維持したまま、PDFファイルを管理します。元の帳票にあったフィールド名を指定して検索をかけられるので、単純なキーワード検索による検索結果のノイズを排除し、探している帳票を狙い撃ちするように見つけることができます」

画像 文書の項目検索を帳票レイアウト設計時のフィールド名で行うことが可能

 SVF PDF Archiverはその他にも、ファイルの属性であるプロパティに対する検索、帳票の明細部分に対する検索など、さまざまな方法での検索が可能になっている。

 「業務で使う場合、同じ条件で何度も検索することは少なくはありません。そこで検索条件の保存、共有も可能にしています。保存ができれば、後日同じ条件での検索が容易になります。また共有できれば、検索の上手な人のスキルを他の人も活用できます。このように、さまざまな検索機能、検索条件の保存や共有によって、日々の業務の効率を向上させることができます」

画像 フリーワード検索やフィールド名を指定した検索、PDFファイル属性による検索などを組み合わせて実行することにより、ターゲット文書の素早い絞り込みが可能

紙にはまねできないリアルタイムの情報共有

 検索における優位性はもちろんだが、電子帳票を活用すべき理由は他にもある。利用環境に左右されない自由度もその1つだ。従来の電子帳票を扱うツールは、専用のアプリケーションソフトウェアを各クライアントPCにインストールして使うものが多かったが、SVF PDF ArchiverはクライアントからはWebブラウザ経由で使用できるため、OSの種類を問わない。さらに、iOS用のアプリも提供しているため、タブレットでも利用できる。

 PCはデスクワークのためのデバイスでしかないが、タブレットは作業現場と親和性が高い。「例えば工場で働く人にとって、PCは決して使いやすいものではありません。品質チェックをする際には紙の帳票を手に持って、ペンでチェックを入れていきますが、それをノートPCでやろうとすると、チェックしたいところまでスクロールして、マウスでクリックして……と、紙以上に使い勝手が劣ってしまいます。しかし、タブレットであれば、紙と同じように入力したい項目にタッチするだけ。紙の使い勝手の良さを失わず、デジタル化のメリットを受けられるのです」

 もちろん、タブレットから帳票にチェックを入れればサーバ側のデータも更新される。つまり工場で更新した内容が、リアルタイムに別部門へと瞬時に共有されることになる。報告すべき部門に紙を持参したり、FAXで送信したりといった手間や時間は必要ない。こうした利点が享受できるのは工場に限らない。建設現場や店舗、イベント会場など、業種によらず、さまざまな現場で恩恵を受けることができるだろう。

画像 確認や訂正、メモ、追記など、その場で帳票に手書きする紙帳票のプロセスをタブレットで再現

写真や動画、音声のファイルを帳票にリンク

 業務によっては、報告書などに証跡として写真などを添えなければいけないことがある。しかし、紙の帳票や写真であれば、紛失の可能性もあるし、帳票と写真がばらばらになってしまえば、再度組み合わせるのが難しい。だが、タブレットに搭載されているカメラを使ってその場で撮影し、帳票に写真をリンクさせることができれば、管理も容易になる。

 SVF PDF Archiverでは、写真はもちろんのこと、動画や音声ファイルもリンク可能だ。さらに、電子化した帳票に対してパスワードを掛けたり、電子透かしやマスク(モザイク)を入れるといった加工もできる。

画像 手書き文字やテキスト、スタンプ、写真などを付加し再保存が可能

原本はそのまま保存し、必要に応じてさまざまな加工を

 もっとも、帳票に対して加工を加えると、証跡として価値が失われかねないという懸念もあるだろう。そこでSVF PDF Archiverは、加工を加える場合にもオリジナルデータには変更を加えない「原本保証型」の仕組みを採用している。

 例えば、マイナンバーが記載された帳票データを第三者に提出しなければならないとき、マスクを掛けてマイナンバー部分が見えないように配慮する必要性が生じる。だがこのとき、マスク入りの新ファイルを作成する必要はない。SVF PDF Archiverでは、マイナンバーを記載した原本データには変更を加えず、マスク情報だけを記録した別ファイルとリンクさせることで、マイナンバーを隠した帳票を印刷可能にする。

 「加工するたびに帳票ファイルを増やしていくとなると、二重管理、三重管理になって、どれが原本なのかを把握することすら大変になります。SVF PDF Archiverは仮想的なファイルを使って、原本に手を加えません。この仕組みによって、不必要にファイルを増やすことなく、自由に加工した帳票を出力できます」

 さらに、PDF文書内の特定ページのみ切出して別文書のようにリンク作成したり、複数のPDF文書から必要なページだけを集めて1つのリンクファイルの作成することも可能だ。

マイナンバー付のPDFをSVF PDF Archiverに投入することにより、原本データを維持したまま帳票の特定箇所のみをマスクする制御が可能

 帳票電子化で大切なのは「文書を、会社の重要な資産として有効に活用するという、強いモチベーションを持つこと」と直江氏は説く。単に紙の帳票をデジタル化するツールを入れるだけでなく、文書を資産として活用するという意識を持つことが重要である。

 せっかく電子化した帳票も上手に管理しなくてはその意義は半減してしまう。電子化はゴールでなくスタート。ツール選びにも、企業の成長への意志が問われるということかもしれない。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.


提供:ウイングアーク1st株式会社
アイティメディア営業企画/制作:TechTargetジャパン編集部