NASでは不得手な大容量データの格納先として注目を集める「オブジェクトストレージ」。企業で利用する場合は何を選択すべきなのだろうか。
ビッグデータの保存先として、またクラウドネイティブなストレージとして、「オブジェクトストレージ」が注目を集めている。既に数々のサービスや製品が展開されているが、2015年にIBMが買収した「Cleversafe」を元にしてIBMクラウドからも提供している「IBM Cloud Object Storage」は、有力な選択肢となるはずだ。日本IBM クラウド事業統括Cleversafe営業部 担当部長 コンサルティング セールス スペシャリスト 田中克哉氏は「独自のデータ分散技術『Secure Slice(セキュア・スライス)』を使った高い信頼性や、パブリック/デディケイテッド(専有)/オンプレミスの3つの提供モデルで利用できる柔軟性といった特長に加え、データ暗号化などのエンタープライズ用途では欠かせない機能を標準で持っている。また、独自にデータ消失への対策が施されており、仮に物理的なデバイス盗難があった場合でも情報を保護できるため、機密性の高いデータの保存場所としても期待されている」と説明する。
加えて、オブジェクトストレージのデファクトスタンダードともいえる「Amazon Simple Storage Service(Amazon S3)」や「OpenStack Swift」のAPIとも高い互換性を持つことから、Amazon S3にも精通している日本IBM クラウド事業統括 担当部長 コンサルティング・アーキテクト 平山 毅氏は、「Amazon S3のAPIを組み込んだクラウドネイティブアプリケーションやサードパーティーツールに対しても、認証情報とエンドポイントを変えるだけでそのまま使えるため、Amazon S3やOpenStack Swiftとマルチクラウドを構成したり、移行したりしやすい。最近では、特定のクラウドベンダーのオブジェクトストレージが障害になる際のリスク対策として複数のクラウドのオブジェクトストレージを組み合わせるアーキテクチャも注目されているため、その場合にもIBM Cloud Object Storageは、最適な選択肢になります。また、デジタル時代のラージオブジェクトにも対応し、プライベートなエンドポイントや1つのバケットに対するマルチリージョン、などが標準で対応されており、ハイブリッドクラウド環境でも同じアーキテクチャで構成できる点などが、Amazon S3に対しての差別化ポイントになります」と説明する。
つまり、セキュリティや運用負荷の課題、アプリケーション開発コストの課題、無停止での運用、ラージオブジェクト、プライベートエンドポイント、専有モデル、API互換、マルチリージョン、ハイブリッドクラウド、といったエンタープライズならではの要件をことごとくクリアしているのが、本稿で紹介するIBM Cloud Object Storageなのだ。以降では、機能詳細やその特長を解説していく。
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