“独立系”技術者に聞く「OracleからSQL Server/Azure SQL Databaseへ」移行が進む理由と成功の条件とは最適かつ着実な移行プランを立案するために

システム基盤の刷新は、コスト削減や新技術を採用できる半面、移行に伴うリスクもある。それ故に移行プロジェクトを確実に実施するには、事前の評価と検証が欠かせない。

2017年05月18日 10時00分 公開

 企業のIT部門にとって、運用負荷軽減や総所有コスト(TCO)削減は常に重要な課題の1つだ。この課題に取り組むことができる貴重な機会が、システム更新のタイミングである。例えば近年であれば、サーバやストレージなどのハードウェアに関してはオンプレミスからクラウドへ移行することで保守料や運用作業を大幅に低減できる。データベースをはじめとするミドルウェアについても、別のものに置き換えることでライセンス費用や保守費用を抑制できる。

 システム基盤の刷新で得られるメリットは、もちろんコストだけにとどまらない。例えばベンダーを統一することでサポート窓口を一元化したり、システムの機能向上や情報活用の拡大につながる新たなテクノロジーを取り入れたりといったことも可能となる。

 一方で、このようなシステム基盤の大きな変化はIT部門の不安材料となる。これまで安定稼働してきたアプリケーションに対して、新たな基盤に合わせるための修正が必要となり、そのための作業工数、ひいてはコストや期間がどれくらいになるのかが見通しを立てにくい。場合によっては、計画段階で見落としていたトラブルに直面し、移行プロジェクトの大幅な遅延やコスト増大を招くことも考えられる。

 システム移行を無事に完了させ、運用負荷軽減やTCO削減を成功させるためには、これらの不安やリスクの要因を洗い出すことが不可欠だ。

高度なツールと専門家の目を組み合わせた2種類のアセスメント

システムコンサルタントの内藤 尚氏

 実施しようとしている基盤移行プランを検証するには、知識と経験が豊富なプロに助けてもらうのが望ましい。コンサルティングから設計、開発、テスト、運用サポートまでを手掛ける独立系IT企業の「システムコンサルタント」では、システム基盤を見直そうとするユーザー企業向けに、システム移行プランの立案を支援するサービス群を提供している。それが、「Oracle Database Migration Assessment」(以下、OMA)と「Application Migration Assessment」(以下、AMA)、「Proof of Conceptサービス」(以下、PoCサービス)だ。

 同社第一営業部で部長代理を務める内藤 尚氏は、その特徴を次のように語る。「OMAやAMAに相当する移行アセスメントサービスは、技術コンサルティング系の会社が手掛けていることが多いのですが、当社は本番の移行作業までを支援できる点が大きく異なります。実際の移行プロジェクト経験を持つエンジニアがアセスメントやPoC(概念実証)にも携わっているため、より現場に近い視点で細かな部分まで見極めることが可能です」

アセスメントと性能機能検証の2段階でゴールを目指す

システムコンサルタントの佐藤 信氏

 同社オープンシステム統括部マネージャーの佐藤 信氏はそれぞれのサービス内容を以下のように説明する。「これらは、実際に運用しているシステムの移行を最適な形で実施するための事前評価サービスです。OMAとAMAは主に机上での移行性評価、PoCサービスは実機を用いた性能や機能についての実現性検証といった2段階のサービスになっています」

 OMAでは、主に「Oracle Database」からの移行アセスメントを実施する。想定する移行先は「Microsoft SQL Server」や「Azure SQL Database」で、Microsoftが提供する「Microsoft SQL Server Migration Assistant」(以下、SSMA)を活用している。SSMAはデータベースの変換やデータ移行を高精度かつ効率的にできるが、全てのオブジェクトをSSMAで自動的に変換できるケースは極めてまれで、ましてや基幹系システムともなれば、大部分で手作業による移行作業が必要になる。

 同社はOracle、SQL Serverをはじめ、長年培ってきたRDBMSでの豊富なノウハウを生かし、SSMAでの評価結果を基に移行における難易度や代替実装のポイントなどを詳細に評価する。また、ユーザーが移行プランをより具体的にイメージして検討できるよう、OracleデータベースとSQL Serverのコスト比較や、最適な構成案の提案などをレポートに盛り込んでいる点もポイントだ。

これら一連のサービスを実施することにより、実現性/妥当性を評価して、システム移行において懸念される課題やリスクを払拭(ふっしょく)できる

独自のノウハウをつぎ込んだ解析ツールで工数やコスト算出も

システムコンサルタントの佐藤篤史氏

 一方、データベースの移行では、アプリケーション側にも修正が必要だ。実際の移行ではデータベースの移行に伴いアプリケーションの移行(変更)も必要となり、場合によってはアプリケーション実行基盤から移行するケースも多く、その場合はさらにアプリケーションの修正範囲が広くなる。このアプリケーション部分を評価するサービスがAMAだ。OMAと同じくツールによる処理と専門家の目によるアセスメントサービスで、レポートには移行後のアプリケーション構成や移行時の変換方法なども記載する。

 この作業で活用するのが、システムコンサルタントが独自に開発した解析ツール「Gemini」だ。AMAを担当する同社オープンシステム統括部の佐藤篤史氏は、Geminiについて次のように説明する。「当社の長年にわたる開発経験で培ったノウハウを導入することで、Javaや.Net、Pro*C、COBOLなど各種プログラミング言語のさまざまな処理方式に対応している他、移行作業で必要な工数やコストも算出できます。今後はさらなる改良を加え、自動変換機能も追加し、実際の移行作業やPoCサービスにおける作業工数の削減につなげていく計画です」

PoC環境を構築して実行させる検証サービスも提供

 OMAおよびAMAのアセスメントに必要な期間は、システム規模などにより異なるが、通常1〜2カ月を予定している。ユーザーはこれらの評価結果をもとに、移行プロジェクトを開始できるが、アセスメントの実施によって見えてきた機能や性能に対する課題に対し、代替案の事前評価を行うことでさらなるリスク低減を求める場合にはPoCサービスを利用して性能や機能の検証も可能だ。

 PoCサービスではシステムコンサルタントとユーザーが協議して検証シナリオを作成し、Microsoftをはじめとする同社パートナー企業の協力を得て実環境を模したPoC環境を構築した上で、実際にデータを処理させるなどして評価検証を実施する。PoCの所要期間もシナリオやシステム要件によって異なるが、要件次第で詳細な検証にも対応できるため、移行プロジェクト本番に先立ってリスク要因を徹底的に減らしていける。

 システムコンサルタントのオープンシステム統括部の齋藤克寿氏は以下のように説明する。「PoCサービスを利用すれば、移行後の業務面への影響がどれほどかを確認できます。またユーザーが移行先サーバのスペックを決めかねているような場合や、処理方式の見直しによる性能向上を計画している場合には、実際の業務用データで細かな性能評価も可能です。こうすることで、より詳細かつ現実的な移行プランを策定できます。多くの業務システムを保有する企業の中には、移行を検討している一連のシステム群の中で最も困難が予想されるシステムを対象としてOMA、AMAを実施し、良好な結果を得た上で、それとは別の最も簡単そうなシステムから本番の移行プロジェクトを開始するというケースや、性能が懸念される処理に対しての対応策となる新機能の適合性をPoCサービスにて見極めた上で最適なシステム構成を検討するケースもあります」

「SQL Serverに追い付いた」とSQL Databaseの採用が増加している

システムコンサルタントの麻生亜希氏

 システムコンサルタントでは、これら一連の移行支援サービスや、その後の移行プロジェクトおよび本番運用の支援も含めて、移行プロジェクトに関する豊富な実績を有している。ユーザーの業種や規模も多種多様だ。

 OMAを担当する同社オープンシステム統括部の麻生亜希氏は、最近の移行プロジェクトの傾向について、こう語る。「最近はグループ企業含めた全社の方針として、システム基盤全体をクラウドへ移行されるお客さまが増えています。データベース移行に関しては、機能や信頼性が向上してきたことや競合製品のコスト上昇などを背景に、『Microsoft Azure』のIaaSでSQL Serverを選択されるお客さまやPaaSのSQL Databaseへ移行されるお客さまも非常に増えてきております。今やSQL Databaseは機能面でもSQL Serverと同等で、当社での評価結果もオンプレミスのSQL Serverとほとんど差異はありません。Microsoftからもデータベースについては『クラウドファースト』、すなわちクラウド版を優先して新機能を投入していくとアナウンスされていますし、今後はさらにSQL Databaseを選択されるお客さまが増えると予想しています」

SQL ServerやSQL Databaseを選ぶもう1つの理由は「サポート一本化」

システムコンサルタントの齋藤克寿氏

 SQL ServerやSQL Databaseは、AzureやOffice 365などと一緒にサポート窓口をMicrosoftに一元化できるメリットもある。異なるベンダーの製品やサービスを組み合わせた環境では、問い合わせに対して切り分けが必要となる上、各ベンダーとの個別の保守契約が結果として割高になってしまう。こうした背景から、システム基盤をMicrosoftの製品やサービスでそろえようとする企業も増えている。

 「Microsoft一辺倒になることを懸念するユーザーは、今ではほとんどいません。むしろMicrosoft AzureをはじめとしたMicrosoft環境でそろえれば、包括的なサポートが得やすいというメリットを重視しているように感じます。一方、当社の強みの1つはマルチベンダーであることです。例えばデータベースであればOracle Databaseや『IBM DB2』も熟知しており、これらを移行元とする場合でも問題なく対応できます。また業務範囲が提案から運用まで幅広く対応しているため、移行対象の選定段階からユーザーと一緒になって考えることができますし、PoCにおいて想定ほどの性能が出なかったときの代替提案も可能です」と佐藤 信氏は語る。

 OMAとAMA、PoCサービスには、マルチベンダーで多種多様なユーザーに対応でき、上流から下流までを支援できる、システムコンサルタントだから提供できる付加価値がある。それが、移行作業のパートナーを選ぶ大きな決定理由となるだろう。

移行プロジェクトの支援では、技術力と共にユーザーの要望を的確に聞き出せるコミュニケーション能力も重要だ。システムコンサルタントでも「移行作業のパートナーを選ぶ大きな決定理由になる」と語っている

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