銀行法改正で金融のAPI活用は加速必至、他業種も“待ったなし”の理由はどの業種にもメリットがあるAPI公開

法改正で金融におけるAPI活用と新規事業の創出が進みそうだ。この流れは流通業や製造業など全業種に広がるだろう。企業が「APIエコノミー」を構築する上でのポイントとは。

2017年07月12日 10時00分 公開
[ITmedia]

 2年連続の改正となる銀行法の改正案が2017年5月26日、参議院本会議を通過し、成立した。改正銀行法は、2018年春にも施行される見込みである。注目すべきは、銀行に対して、API(アプリケーションプログラミングインタフェース)の公開を勧めている(努力義務)点である。個人資産管理サービスやクラウド会計サービスなどを提供するフィンテック企業が、API経由で銀行のシステムを安全に利用できるようにすることで、より利便性の高い金融サービスの提供を目指すというものである。

日本IBM 早川ゆき氏

 従来の銀行法の改正は、規制によって自由度を抑える代わりに安全性を高めるというものであった。今回の改正銀行法は、規制によって安全性と利便性を両立させるという点が新しい。日本アイ・ビー・エムで金融関連のAPI連携プロジェクトを多く推進しているエグゼクティブ・アーキテクト 早川ゆき氏は、「“イノベーション創出”を目的に、標準的なAPIの整備に加えて、各社独自の拡張的なAPIの公開も推奨している点が興味深い」と話す。

 金融業界がAPI連携の動きを進めるのは、Webサイトのスクレーピングに比べてAPI連携の方が安全に金融サービスを提供できるからだ。API連携が提供する認証機能により、顧客は銀行口座のユーザーIDとパスワードといったセキュリティ情報をフィンテック企業に預けることなく金融サービスを利用できるようになる。銀行にとっては顧客を保護することができ、フィンテック企業にとっては銀行のユーザーIDとパスワードをユーザーの代わりに管理する必要がなくなるというメリットがある。

 さらにAPIの活用によって、エンドユーザーが利用する“デジタルIT”と企業の基幹システムとなる“エンタープライズIT”との間のスピードのギャップを解消することも可能になる。エンドユーザーの環境は、モバイルデバイスやクラウドサービスの発展によって、極めて急速にデジタル化が進んだ。一方で、この進化のスピードにエンタープライズITが追い付けず、適切なサービスが提供できない状況が続いていた。

 APIが安定的なエンタープライズITと動きの激しいデジタルITとの間を取り持つことで、エンドユーザーにとって利便性の高いサービスをスピーディーに提供できるようになる。例えば個人資産管理サービスは、Webサイトのスクレーピングによって半ば強引に情報を収集していたものを、API連携をすれば、安全かつ低負荷で、より正確な情報やサービスを提供できるようになる。

 こうしたニーズは、金融業界にとどまらない。あらゆる業界で外部の協力会社との連携や関連企業へのサービス提供を、より柔軟に行いたいというニーズがある。従来のように一社ずつ対応するのではなく、APIを公開することで素早く負荷なくデータ連携ができ、新たな市場を開拓できる可能性が生じる。物流関連の企業が、社内で利用していたサービスをAPIで外部に公開し、新しい事業を興したという例もある。医療業界ではAPIで安全にコンテンツサービスを提供することによって、従来の関連企業以外の全く新しい業界とのビジネスが拡大する可能性が出てきている。

 以降では、都市銀行、ネット銀行、信用金庫をはじめ、製造業や医療など多様な業種が採用している実績のあるIBMのAPI基盤について紹介する。


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