仮想化基盤統合、性能とコストを犠牲にしない選び方既存のITインフラが足かせになっていませんか?

HCIなどの登場で効率化が進む業務システムの運用。しかし、いまだに統合できない環境が残るのが多くの企業が抱える現実だ。だが、これを解消する技術が登場したという。

2018年01月31日 10時00分 公開
[ITmedia]

 システム運用が煩雑になる原因の1つは、統合しきれない環境が散在する点にある。これには2つの問題がある。1つは性能の問題、もう1つはビジネスが求めるスピードにシステムの更新がついていけなくなるリスクだ。

 トランザクションが多く、信頼性が問われるようなシステムは、応答速度や確実性が問われるため、仮想基盤のオーバーヘッドが許容しにくい。また、基幹系業務などのシステムでは、可用性を高めるための手段として外部ストレージを利用せざるを得ない場合が多い。これらのシステムは、仮想化基盤に統合しにくいため、単独で運用し続けることになり、情報システムのコスト増大や工数増加の要因となってきた。

 これらの状況への1つの解が、サーバとストレージを統合したハイパーコンバージドインフラ(HCI)だったが、従来はDBサーバのようなワークロードを動かすには性能面で課題があるとされてきた。ところが、本稿で紹介する環境は「三層構造のシステムと同等のパフォーマンスを維持し、かつイニシャルコストの40%を削減した」という実績を既に持っている。

 なぜ、今まで他では出来なかったことが、いとも簡単に実現するのか。その背景には幾つかの新技術の登場がある。以降、本稿ではその秘密を探る。

Windows Server標準機能でHCI構築を実現するS2D

 いま、ハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)がITインフラ市場で注目を集めている。従来、IAサーバ、SANスイッチ、ストレージの3階層で構成されていた仮想化環境を、IAサーバのみで実装でき、あらゆるコスト削減のカギと目されているためだ。

 HCIを実現する技術の核は、IAサーバで共有ストレージを構築するソフトウェア定義型ストレージ(SDS)にある。HCI市場では、「VMware vSAN」が多く選択され、おのずとVMwareがHCI仮想化基盤の中心となっていた。

 しかし、現在、この状況は変化し始めている。というのもMicrosoftが、最新サーバOS「Windows Server 2016 Datacenterエディション」に、SDS機能「記憶域スペースダイレクト(Storage Spaces Direct、S2D)」を標準実装したからだ。S2Dを使えば、仮想化基盤となるサーバ上に共有ストレージを構築できる。つまり、Windows Server 2016とIAサーバのみで、Hyper-VネイティブのHCIが構築できるようになったのだ。

S2DとS2D Ready Nodes《クリックで拡大》

 一方で課題もある。S2Dを使ったHCIは後発であり、知名度、導入実績は、他のHCIに後れを取っている。日本のユーザーは実績を重視する傾向が強くその点では不利だ。ただし、S2D HCIはMicrosoftが現在強力に取り組んでいるハイブリッドクラウドソリューション「Microsoft Azure Stack」で採用されている技術であり、過度の心配は不要ともいえる。もう1つの課題は、技術情報が少ない点にある。設計や導入にはある程度情報やスキルを持ったエンジニアが必要だが、情報自体が少ない印象は否めない。

なぜHyper-VのHCIを「誰でもすぐに設計、導入してすぐに使える」と断言できるか

 このように見ていくと、WindowsネイティブのHCIは、メリットは大きいものの、Windows ServerやHyper-Vをイメージしてしまうと導入のハードルが高いように見える。しかし、グローバル、国内ともにHCI市場シェアでトップ(*1)に位置するDell EMCはこれを否定、「すぐに設計、導入して使える」と断言する。

 Dell EMC (デル) インフラストラクチャソリューションズ事業統括 ソリューション本部 シニアプリンシパルエンジニア 日比野 正慶氏は「調査会社によるとHCI市場におけるHyper-Vのシェアは2019年に3割近くになる見込みです。HCI市場自体が大きく成長する中、Hyper-V HCIのポテンシャルは高く、当社でも問い合わせが増えています」と、市場への期待を語る。

 HCI市場で現在シェアトップ(*2)のDell EMCが満を持してHyper-Vユーザーのために投入するHCIが「Dell EMC Microsoft Storage Spaces Direct Ready Nodes(S2D Ready Nodes)」である。

Dell EMC 日比野 正慶氏

(*1)(*2)IDC Worldwide Quarterly Converged Systems Tracker 2017Q3 世界&国内Hyperconverged Systems出荷台数(Share by Company)。

 S2D Ready Nodesは発表して間もないながら、海外はもとより国内でも既に多数の販売実績がある。

 「国内では、Hyper-V仮想化基盤のリプレースや、Microsoft SQL Server基盤など、さまざまな案件でご採用いただいています。SANストレージを用いた3階層構成からリプレースいただいたお客さまからは、運用手法を変えることなくコストを大幅に削減できたと高く評価いただきました。またある製造業のお客さまは、400以上のSQL Serverインスタンスを動かすシステム基盤に採用いただきました。パフォーマンスもS2Dの強みです」(日比野氏)

 2017年に販売を開始したばかりのS2D Ready Nodesがなぜ多く採用されているのか。日比野氏はS2D Ready Nodesに「設計、導入、運用でスピードと安心を提供する仕掛けを用意している」と語る。これこそが、Hyper-VベースのHCIを「すぐに設計、導入して使える」と断言する理由である。

仕掛け1.設計時間を大幅に短縮する3つのパッケージモデル

 S2D Ready Nodesは「WSSD(Windows Server Software-Defined)」というMicrosoftのSDDCベストプラクティスに認定されたソリューションだ。加えて、販売する全ての構成をDell EMCが完全検証して提供する。

 構成は利用用途ごとに最適化された3つのパッケージが用意されている。ストレージを多く搭載できる「大容量モデル」、オールフラッシュストレージを搭載した「高性能モデル」、両モデルの中間に位置する「バランスモデル」だ。3つのモデルは、SSD、HDDの組み合わせによって10パターン程度のオプションが用意されていて、そこから要件に合ったモデルを選ぶ。

 「S2D Ready Nodesは構成をシンプルにし、完全検証済みで提供することで、設計と検証にかかる時間を大幅に削減します。もし要件に合わなければ、従来通りカスタムで提供しますが、ほとんどのお客さまの要件を満たす必要十分なラインアップになっています」(日比野氏)

 一見、柔軟性が低いように見えるが、顧客、ベンダー双方のコストと時間を短縮する合理的な仕掛けだ。

要件ごとに用意されたパッケージ《クリックで拡大》

仕掛け2.S2D導入ガイドを無償公開 DIYでも迅速、確実に導入が可能

 S2D Ready Nodesは顧客が自身で導入するDIY型での提供も可能だ。しかし前述の通り、S2D HCIの導入と運用は他のHCI製品と比べて情報が少ない点もある。S2Dのメリットである高速ネットワークを実現するRDMAの設定は、ハードウェアを含むネットワークの知識が必要で、自身での導入はハードルが高い。

 そういった不安を払拭するため、Dell EMCは導入、運用手順を網羅したガイド(「Dell EMC PowerEdge R740xdを活用したハイパーコンバージドインフラストラクチャ向け導入ガイド」)を無償公開している(日本語翻訳版は本記事からのリンクのみで提供)。

 例えば、HCIの導入では、「OSの導入」から「Hyper-Vクラスタの作成」「QoSとRDMA構成」など、ときにはPowerShellコマンドを示しながらガイドする。

 また、運用についても、「仮想ディスクの作成と管理」「システムロックダウン機能の有効化」など、手順を詳細に解説しており、そのボリュームは120ページを超える。

導入ガイドの一部

 「このガイドを使うことで迅速に確実にS2D Ready Nodesを導入いただけます。またお客さまの導入活用以外に、パートナーさまの学習用として、あるいはお客さまの購入前の検討資料としても有用です」(日比野氏)

仕掛け3.WindowsはDell EMCから購入しなくても一元サポート

 S2D Ready NodesはDell EMCのハードウェアとMicrosoftのソフトウェア保守窓口を一本化して提供する。MicrosoftのライセンスをDell EMCから購入しなくても同サービスを提供するというから驚きだ。ソフトウェアとハードウェアのサポート窓口が異なるとその分、原因究明や対応に手間がかかり、また責任所在がはっきりしない場合は問題解決が遅れるリスクも考えられる。S2D Ready Nodesのこのサポートポリシーは運用に入ってからも「スピードと安心」を提供するユーザー視点の仕掛けとして評価されるべきだろう。

 他にも、Dell EMCは野村総合研究所とグローバルで協業、S2D Ready Nodesのオプションとして、運用管理ソリューション「mPLAT Suite」も提供する。mPLAT Suiteは、S2D Ready Nodesの監視やジョブ管理、運用自動化、構成管理などの機能を網羅する。仮想ストレージから仮想ノードまでのITインフラ全体と最適化されたシステム運用環境がオールインワンで低コストかつ短期間に構築できるのもうれしい。

 日比野氏は「S2D Ready Nodesの価値はスピードと安心」と繰り返す。時間をかけずに確実にS2D HCI環境を構築できることがS2D Ready Nodesの大きな価値と説明する。Hyper-VベースのHCIが拡大を見込まれる中、スピードと安心に裏付けられて、すぐに設計、導入して使えるS2D Ready NodesはHCIの新たな選択肢だ。その価値をぜひ実際に試してみてほしい。


提供:Dell EMC
アイティメディア営業企画/制作:TechTargetジャパン編集部